犬の下痢が続くのはなぜ?薬が効かない・やめると繰り返すときの治療と検査

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担当医師のご紹介
二子玉川院 消化器内科獣医師 杉本 太一

二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。
これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。

病院で処方された薬を飲んでいるのに、便の状態がなかなか戻らない。いったん良くなっても、薬を飲み終えるとまた下痢になってしまう。

何度も通院が続くと、「このまま同じことを繰り返すのだろうか」と不安になるかもしれません。

治療後も犬の下痢が続く場合は、服薬による便の変化や、これまでの検査で何が分かったかを整理することで、次に確認する点が見えてきます。下痢が改善した日も再発した日も、これからの診療の大切な手がかりです。

この記事では、すでに受診や投薬を行っている犬の下痢について、次の診察で相談したい治療や検査を解説します。なお、下痢が始まったばかりの初期対応については「犬の下痢・主な原因と対処法は?」をご覧ください。まずは、急いで再診を受けるべき症状から確認していきましょう。

下痢が続くとき、すぐに再診した方がよいケースは?

犬を見守りながら動物病院に電話で相談する飼い主。

ぐったりしている、水を飲んでも吐く、強くお腹を痛がる、黒くタール状の便や多量の血便が出る場合は、次の予約を待たずに動物病院へ連絡してください。倒れる、反応が鈍いなどの様子があれば、救急受診が必要です。

体重が減っている、食べる量が落ちている、嘔吐が続くといった場合も、早めに再診の時期を相談しましょう。便が良い日があっても、体全体の状態が悪化していれば、治療や検査を見直す必要があります。

子犬は体調が変化しやすいため、下痢があるときは受診先へ早めに相談してください。年齢に応じた注意点は「迷わず受診【子犬の下痢】」でも説明しています。

こうした急を要する症状が見られない場合でも、処方時に説明された改善の目安を過ぎて下痢が続くときや、薬をやめたあとに再発した場合は、次の予約まで待ってよいか病院にご相談ください。

薬が効かない、やめると再発する。その違いから何が分かる?

薬と便の記録を見ながら獣医師と相談する飼い主。

薬を飲み始めても様子が変わらない場合は、現在の治療が原因に合っているかを見直します。一方、服用中は改善するものの中止後に再発する場合は、薬をやめても症状を抑えられるよう、治療方針を再検討する必要があります。まずは、この2つの経過を分けて獣医師に伝えましょう。

整腸剤や下痢止めで変わらないときは?

下痢の原因に合った治療ができているかを確認します。食事への反応、寄生虫、腸の炎症、膵臓やホルモンの病気など、原因によっては整腸剤や下痢止め以外の治療が必要になるためです。

市販の整腸剤やサプリメントを自己判断で次々に追加する前に、処方された薬の名前や飲めた量、便の変化を振り返ってみましょう。診察で「この薬の目的は何で、改善が見られない場合は何を調べますか」と確認すると、今後の治療の見通しを共有しやすくなります。

抗生剤をやめると再発するのは、感染が残っているから?

抗生剤で下痢が改善したからといって、必ずしも細菌感染が原因だったとは言い切れません。抗生剤は腸内の細菌にも影響を与え、服用中の改善が中止後も続くとは限らないためです。

タイロシンという抗生剤で下痢が改善した犬17頭を追跡した小規模な研究では、中止後2か月の観察期間中に15頭(88%)で下痢が再発しました。再発までの期間の中央値は9日でした。

このように、薬を飲んでいる間に下痢が治まっても、やめると再発することがあります。そのため、再発した際には同じ抗生剤を繰り返す前に、引き続き使用する必要があるかを見直すことが大切です。現在の診療指針でも、慢性の腸の炎症が疑われる犬に対して、原因を確かめず抗生剤を試す治療は推奨されていません。ただし、特定の感染症などで必要な場合もあるため、使い続けるかどうかは獣医師が判断します。

もし再発した場合は、残っている薬を自己判断で飲ませたり、処方中の薬を急にやめたりせず、服用中と中止後の便の変化を伝えてください。そのうえで「この薬を続ける目的」や「食事療法・追加検査を検討するタイミング」を相談しましょう。

ステロイドを減らすと下痢が再発する場合は?

薬を減らした時期と下痢が再発した時期を詳しく伝え、減らし方や治療内容を獣医師と見直します。ステロイドで症状が抑えられていても、減量後に再発する場合は、病気の状態と、食事療法を含めた治療内容を改めて確認する必要があるためです。

治療を見直すために追加検査を受ける際は、ステロイドの使用歴を正しく伝えることが重要です。ステロイドの使用が、ホルモン検査の結果の解釈に影響を与える場合があるためです。ご自身の判断で投薬を止めず、薬の名前と使用期間を共有しながら、検査の適切な時期を相談してください。

血液検査・便検査が「異常なし」でも、原因が見つかっていないことはある?

犬の検査結果について獣医師の説明を聞く飼い主。

あります。「異常なし」という結果は、実施した項目や検査方法の範囲では異常が確認されなかったという意味で、下痢を引き起こす病気の可能性をすべて否定できたわけではありません。これまでに何を調べたかを確認することで、次に追加する検査を絞り込みやすくなります。

血液検査が正常なら、重い病気は否定できる?

一般的な血液検査が正常であっても、腸の粘膜の病気や一部のホルモンの病気まで否定できるわけではありません。一般的な検査項目に加え、症状に応じて膵臓の働きや栄養の吸収状態、副腎ホルモンなどを調べることがあります。

KINS WITH動物病院で紹介している非定型アジソン病の症例では、若い頃から食欲不振や嘔吐、軟便・下痢を繰り返し、食事療法でも改善が得られていませんでした。一般的な血液検査に異常はありませんでしたが、超音波検査の所見などを踏まえてホルモン検査へ進んだ結果、診断に至り、治療によって消化器症状が改善しました。

この症例は「血液検査が正常な犬の下痢はアジソン病が多い」ということを示すものではありません。これまでの経過とほかの検査結果を合わせて考えることで、一般的な検査だけでは分からなかった原因にたどり着く場合があるという実例です。

詳しい経過については、非定型アジソン病の症例をご覧ください。

便検査が陰性なら、もう調べる意味はない?

検査方法や採便のタイミングによっては、再検査や別の検査方法が役立ちます。例えばジアルジアという寄生虫は、便中に排出されるタイミングが一定ではないため、1回の便検査では検出できないことがあります。

便検査を再度行うか、寄生虫に特有の成分を検出する検査を追加するかは、これまでの検査・治療歴や生活環境を踏まえて判断します。治療前の診断と治療後の経過確認では適した検査が異なる場合もあるため、受診時には「前回はどの方法で何を調べたか」を共有しましょう。

エコーに異常がなければ、腸の病気はない?

超音波(エコー)検査で目立つ異常が見られなくても、顕微鏡で調べる必要のある変化が腸に起きている可能性があります。超音波検査は腸の厚みや構造、周囲の臓器の状態を調べるものであり、粘膜の細胞を直接確認する検査とは役割が異なるためです。

ただし、超音波検査が正常なすべての犬に内視鏡検査が必要になるわけではありません。食事療法を十分に試せているか、体重や食欲が維持できているかなどを合わせて考え、検査の優先順位を決めていきます。

薬で下痢が治らないとき、食事を変えると改善することはある?

犬のフードを量って用意する飼い主。

薬で十分に改善しなかった下痢でも、食事を変更することで症状が和らぐ場合があります。慢性腸症が疑われ、全身状態が安定していて必要な量を食べられる犬では、獣医師と相談しながら食事療法を行い、症状の変化を確認します。

慢性腸症とは、ほかの病気の可能性を調べたうえで考える、長期間続く腸の病気の総称です。その中には、食事を変えることで症状が改善するタイプもあります。これまで食べてきたものや検査結果に合わせて適切な食事を選び、どのようなフードをどれくらいの期間与えるか、何を基準に改善と判断するかを獣医師と決めていきます。

なお、食事をとってよいと指示された際の基本的な与え方については、「ごはん、どうする?犬に下痢があるときの食事」で紹介しています。ここからは、原因や治療方針を検討するために食事を限定し、その反応を見極める方法を説明します。療法食を試している期間は、主治医と決めた方針を優先してください。

療法食を試してだめだった犬にも、別の選択肢はある?

別の種類の食事に変更することで改善する犬もいます。療法食と一言で言っても原材料や設計はさまざまなため、商品名だけでなく「何を目的に、どのように試したか」を確認することが大切です。

慢性腸症のうち、腸からたんぱく質が漏出するタイプではない犬23頭を対象にした比較試験では、19頭(83%)で最初に割り当てられた食事による改善が12週時点まで続きました。また、途中で再発した4頭についても、別の試験食へ切り替えたあとに改善が得られています。

この試験に参加した犬には、過去の食事療法で改善しなかったケースも含まれていました。「一度療法食を試してダメだったから、食事によるアプローチは終わった」と決めつけず、これまでの食事内容と試し方を振り返る価値があります。

どのくらい続ければ、食事の効果を判断できる?

慢性の腸の炎症が疑われる犬では、選んだ療法食のみを少なくとも2週間継続することが診療指針で推奨されています。症状が断続的に現れる場合は、効果を判断するまでに、さらに時間がかかることもあります。開始する際には、途中経過を報告する日と効果を評価する日をあらかじめ決めておきましょう。

食事を限定する期間中は、フードだけでなくおやつ、歯磨きガム、トッピング、薬を包む食べ物などもすべて確認が必要です。予防薬や味付きの薬剤についても自己判断でやめず、投与方法を獣医師にご相談ください。家族がそれぞれ少しずつ異なる食べ物を与えてしまうと、食事への反応を評価しにくくなります。

また、状態が許せば異なる食事を少なくとも3種類検討することも指針に含まれています。ただし、体重が減り続けている場合や十分な量を食べられない場合、血液中のたんぱく質(アルブミン)が低い場合などに、食事療法だけを繰り返し、試す期間を延ばし続けることは望ましくありません。食べられない場合や症状が悪化している場合は、予定期間を待たずに連絡してください。

改善しないとき、内視鏡などの追加検査はいつ考える?

内視鏡などの追加検査について獣医師から説明を受ける飼い主。

適切に行った食事療法で十分な改善が見られない場合や、体重減少、食欲低下、低アルブミンなどがある場合に追加検査を検討します。全体の状態によっては、食事療法を重ねる前に検査を進めることもあります。

内視鏡検査では消化管の内側を直接観察し、粘膜組織の一部を採取して顕微鏡で調べる「生検」を行うことができます。これにより、腸の炎症の性質やリンパ腫をはじめとする病気の可能性を調べ、今後の治療方針を立てることができます。必要に応じて、採取した組織の追加検査を組み合わせる場合もあります。

ただし、生検を行うだけで「どの薬や食事が効くか」まで直接決まるわけではありません。これまでの経過、血液検査や画像検査の結果、治療への反応などを総合して判断します。

なお、内視鏡検査には全身麻酔が必要となるため、獣医師は体調を整える必要があるかも含めて検査を行う時期を決めます。検査を勧められた際は、「何を確かめるための検査か」「結果によって治療がどう変わるか」「なぜ今行う必要があるのか」を確認すると、検査の必要性をより深く理解できます。

当院では、下痢や血便が続き、ステロイド治療でも改善が見られなかった犬に対して超音波検査で大腸壁の肥厚を認め、内視鏡検査を実施し、生検によって結腸リンパ腫などの診断に至った症例があります。

その後、抗がん剤治療で下痢や血便が改善しました。結腸リンパ腫が併発した蛋白漏出性腸症(PLE)の症例では、検査結果がどのように治療選択へ結びついたかを紹介しています。

次の診察で、何を持っていけば相談しやすい?

次の診察に持参する便の写真、食事や薬の記録、検査資料。

便の写真、薬や食事を変更した日付が分かるメモ、これまでの検査結果を持参すると、下痢の経過を伝えやすくなります。完璧に記録しようとせず、分かる範囲の情報で構いません。

  • 便の状態と回数(血や粘液の有無、夜間の排便状況、写真もあれば提示)
  • 服用した薬の名前、開始日と終了日、便の変化が見られた日(薬の袋や説明書も有効)
  • 食べたフードの商品名と与えた期間(おやつ、ガム、サプリメントも含める)
  • 食事量、嘔吐の有無、元気の変化、体重の推移
  • 血液検査・便検査の結果や画像検査の報告書(実施日も含む)

血便の種類や原因については、「犬の血便の原因・種類と対処法」で詳しく解説しています。便の見た目だけで判断せず、写真とともに元気や食欲の変化もあわせて伝えましょう。

診察の際には、「現在どのような原因が疑われるか」「この治療でどのような状態を目指すか」「改善しない場合はいつ・何を見直すか」を質問してみてください。良い便が出ているかだけでなく、しっかり食べられているか、体重が維持できているかも大切な評価基準です。

当院では、紹介状がなくてもセカンドオピニオンのご相談を受け付けています。お手元に検査結果や薬の情報があれば、ご持参ください。

当院で精密検査を行った後、飼い主様のご希望に合わせて治療方針と検査結果をかかりつけ医へ共有した事例もあります。精査後にかかりつけ医へ診療を引き継いだ、蛋白漏出性腸症(PLE)の犬の症例では、今後の薬や食事の調整方針を整理したうえで治療をかかりつけ医に引き継いでいます。精密検査を相談する際には、最終的にどこで継続して治療を受けたいかも伝えておくと安心です。

当院(KINS WITH動物病院)の診療方針については、消化器内科のご案内をご覧ください。

薬で効果が出なかったことや、投薬をやめた後に再発したという経過は、次の診断・治療につながる貴重な情報です。「また下痢になってしまった」で終わらせず、どのような条件で改善し、どのタイミングで再発したのかを獣医師と一緒に整理することから、次の一歩を踏み出していきましょう。

KINS WITH 動物病院二子玉川院 杉本先生
消化器内科の治療を担当する先生
KINS WITH動物病院 二子玉川院
獣医師 杉本太一

東京都世田谷区 玉川3丁目15-13
EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230

二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。

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