食欲があるのに犬が下痢をするとき
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犬の癌の治療も、人間と同様にさまざまな方法があり、その治療の成功率も上がってきていると言われています。しかし、もし愛犬が癌と診断された場合、飼い主さまは動揺してしまうかもしれません。
愛犬が癌にならないことがいちばんですが、犬の癌についてどのような種類や症状があり、治療方法があるのかなどの知識を持っていることは非常に大切です。
今回は、犬の癌について、症状や治療方法などについて、ご紹介させていただきます。
癌とは、細胞の異常な増殖によって形成される腫れやしこりなどの腫瘍のことです。皮膚や臓器など体のあらゆる場所で発生し、ゆっくりと成長するものや早い進行速度で成長するものもあり、犬の体の他の組織や臓器に浸潤して広がり、転移する可能性があります。
犬種による遺伝的な要因や、加齢による免疫力の低下、生活環境などによって癌が発生する場合もあるようですが、原因は不明な場合が多いようです。また、生後12ヶ月未満の犬が避妊手術を受けた場合、乳がんのリスクが軽減され、去勢手術を受けた犬は精巣がんのリスクがなくなります。
しかし、逆に、避妊手術や去勢手術を受けた犬は、特定の癌のリスクを高める可能性もあるようですので、避妊手術や去勢手術のメリット、デメリット、リスクやタイミングなど、信頼できる獣医師と十分相談して決める方がよいでしょう。
ここでは、犬に多く見られる3種類の癌とその症状についてご紹介させていただきます。犬が罹る可能性のある癌はこの限りではなく、さまざまな種類がありますが、罹りやすい癌として覚えておくとよいでしょう。
肥満細胞腫は、犬に見られるもっとも一般的な皮膚がんの一つで、犬の体の中にある免疫細胞の一種「肥満細胞」と呼ばれる細胞が腫瘍化したもののことを言います。
肥満細胞腫瘍は、ミドルやシニアの犬に多く見られ、皮膚にしこりや腫瘍が多く発生し、脱毛や炎症などを伴うこともあるようです。また、皮膚上や皮下のしこりに加え、赤みや腫れなどの症状が体のさまざまな場所で現れます。
犬の乳房にできる悪性の腫瘍のことで、乳房にできる腫瘍のうち約半数は良性で残りは悪性である場合が多いようです。触るとわかる乳腺の周りにできる固いしこりが症状として見られ、避妊手術によって乳がん発症のリスクは軽減されます。
リンパ腫は、血液中に流れる「リンパ球」と呼ばれる特定の免疫系の細胞から発生する、血液における癌の一つで、症状は主にリンパ節の痛みのない腫れで、首や胸、脇の下、鼠径部、膝の後ろなどにあるリンパ節で見られます。
食欲不振や嘔吐、下痢などの症状も現れ、無気力や倦怠感など、犬に元気がなくなってしまうなどの症状も見られます。
リンパ腫は、体のある一部の疾患ではなく「血液の癌」と言われているため、全身の疾患と見なされ、全身療法で治療する必要があります。
では、万が一犬に癌の症状が現れた場合、飼い主さまはどのように行動し、どうやって診断されるのでしょうか。
犬の体に腫れやしこりを見つけたり、食欲や元気がない、嘔吐や下痢、無気力や倦怠感などの症状が見られるようであれば、まずはかかりつけの獣医師の診察を受けることが大切です。
これらの症状は他の病気の可能性も考えられますが、診察の際は、犬のお家での様子や、しこりを見つけた時期、大きさの変化など、わかる範囲で獣医師に伝えるようにしましょう。
その後、獣医師の判断によってX線検査、超音波検査などの画像での診断や、血液検査、腫瘍の細胞を針で刺して吸引する細胞診検査、腫瘍、または腫瘍の一部を切除する生検が行われ、最終的に癌であるかどうかが診断されます。
【関連記事】愛犬にしこりを見つけたらどうするべきか。判断の目安と良性腫瘍・悪性腫瘍の特徴を解説
では、犬の癌の治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
皮膚にできた癌や細胞の増殖範囲が明らかな場合は、手術が選択される場合が多いようです。手術で切除した癌は、通常切除しきれたどうか、転移の可能性があるかを病理検査で確認します。
化学療法とは、いわゆる抗がん剤やその他の癌の治療薬を使用して行われる治療のことで、さまざまな癌の治療に適していると言われています。
犬に使用される治療薬の用量は、人間に使用される用量よりもはるかに少ないため、人ほどはでないと言われていますが、食欲減退、嘔吐や下痢などの副作用がみられる場合がありますので、治療中は定期的な獣医師の診察が必要です。
また、手術によって完全に癌を取り除くことができなかった場合や、白血病などの血液の癌、手術では切除が難しい広範囲の癌の治療にも適用されます。
化学療法は、癌の治癒という目的の他、進行を遅らせたり症状を軽減させるための治療方法でもあると捉えておく必要があるかもれません。
放射線治療は、癌のある部位に放射線を照射し、癌細胞の成長を抑制したり縮小させたりする治療方法です。一定期間定期的に受ける必要があり、治療中は犬を絶対に動かさないようにしなければならないので、治療ごとに短時間の全身麻酔を行います。犬の特性や全身麻酔のリスクなどを獣医師と十分相談した上で行うようにしましょう。
以上のような手術、化学療法、放射線療法が、癌の基本的な治療方法とされていますが、この他にも、特定の波長の光に対して感受性を持っている「光感受性物質」と呼ばれる物質と特定の波長の光を組み合わせて癌を縮小させる「光線力学療法」や、生まれながら備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強化して癌の発症や進行を抑える免疫療法などがあるようです。
これらのさまざまな治療方法を組み合わせたり、犬の癌の性質やステージ、進行速度などに合わせて治療が行われます。犬の癌治療も、常に新しい方法や技術が研究され、導入されているようですので、希望を失わず犬にとって最善の治療方法を選択することが非常に大切です。
犬の癌の発症について、食事やライフスタイルとの直接的な関連性については十分に研究されていないようですが、犬が治療に対してよりよい反応を得られるよう、獣医師によって食事の変更を推奨される場合はあるようです。
バランスのよい食事と適切な運動は、犬の健康や免疫力を高めたり維持するために、基本的で非常に重要なことですので、おやつのあげすぎや運動不足などには日頃から注意しておきましょう。
犬が癌による痛みや活動性の低下、更なる体の不調、食欲不振、老化などの苦しみを少しでも忘れ、残された犬との時間「余命」をできるだけ快適に過ごすためには、どのような緩和ケアが必要なのでしょうか。
緩和ケアとは、犬の健康をサポートし、病気によって生活の質を制限している可能性のある症状に寄り添って管理し苦しみを軽減してあげることです。
最後は、癌を患った犬が、生活の質を上げ、調子の悪い日よりも良い日を増やし、飼い主さまとの時間を楽しく健やかに過ごすために必要な痛みのケアや緩和ケアとともに、飼い主さまができる家庭での緩和ケアについてご紹介させていただきます。
緩和ケアの体験記は、こちらの記事でご紹介しています。
【関連記事】犬の癌の緩和ケアとは。飼い主の緩和ケア体験記も掲載
癌を患った犬は、非常に複雑な状態であるとともに、嘔吐や下痢などの胃腸の不調や、炎症や腫れ、不安や恐怖、痛みなどの苦しい症状を伴う場合もあります。その中でも痛みのケアは、緩和ケアのもっとも重要な部分と言われており、薬物療法に加え様々な緩和ケアが行れます。
例えば、治療用レーザーによって神経系を調整して痛みを軽減し、血行を促進したり炎症を抑えることや、カイロプラクティックによって骨格の動きなどの制限を改善すること。体の可動性を維持したり痛みの予防や管理するのに役立つ理学療法などが行われています。
緩和ケアには、犬の運動能力の維持や怪我の予防のために、家庭内の生活環境を変えることも含まれます。犬が、いちばん安心できる環境で快適に過ごせるよう、家庭内の生活環境を見直し、次のような点を工夫してみましょう。
滑りやすい床は、骨折や怪我の原因になり犬にとって更なる不自由を招きかねません。ラグやクッション性のある敷物などを敷いて、家の中を歩きやすい状態にしてあげましょう。犬にとって、障害物となるような家具などは、犬が移動しやすいよう設置場所を工夫することも大切です。
犬が首や背中を無理に動かさなくてもいいように、お水やご飯のお皿の位置を犬の肘くらいの高さに調整してあげましょう。これにより、腰痛も軽減できるようです。また、犬がほとんど動けない場合は、犬が快適に休んでいる場所や、犬が寛いでいる側にお水とご飯のお皿を置いてあげるとよいでしょう。
階段から落ちて怪我をしないよう、階段の入り口にはゲートなどを設置しましょう。
犬がお気に入りのベッドまで移動しやすいよう、スロープなどでサポートしてあげましょう。
家族が集まる場所に、犬の快適な空間を作ってあげましょう。犬にとって家族と一緒にいる時間が何よりも幸せな時間なのです。
他にも、飼い主さまと一緒にカートで外の空気を吸いにお散歩したり、犬の好きな食べ物をあげたり、「犬と一緒にやりたいことリスト」を書いて実行するなど、犬と一緒に楽しいことができるよう計画することも大切です。決して無理をすることなく、常に犬に寄り添い、犬と飼い主さまにとって幸せな時間を過ごしましょう。
犬が癌と診断されることは、とてもショックなことかもしれません。しかし、飼い主さまによる犬への緩和ケアは、犬を痛みや不安から解放し、犬をもっとも安心させてあげられる治療方法と言えるでしょう。
犬が、できるだけ安心して飼い主さまと一緒に幸せな時間を過ごせるよう、犬に寄り添った緩和ケアをすることが非常に大切です。
渡邊動物病院の木村です。
癌(がん)・腫瘍の治療は、愛犬・愛猫にとっても、飼い主様にとっても負担が大きいです。だからこそ、その子に寄り添い、外科手術・化学療法・放射線療法の中から、治療を行います。
また、当院では緩和ケアも積極的に取り入れています。鎮痛剤だけではなく、闘病中の愛犬・愛猫の負担を少しでも減らすために、ご家庭でもできるお手入れの仕方や食べ飲み時の介護などもお伝えいたします。