愛犬にしこりを見つけたらどうするべきか。判断の目安と良性腫瘍・悪性腫瘍の特徴を解説

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「愛犬を触っているときに、痛がってはいないけど、コリコリするしこりに気づきました」

「担当のトリマーさんから、皮下に動く柔らかいしこりがあると言われました」

ふとした瞬間に、愛犬にしこりがあることを知り、急いで検索してこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

当記事では、「しこり=癌なのか?」「いつ病院にかかるべきなのか」などを解説しています。愛犬のしこりについてご心配の方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

犬にしこりがある=癌なの?

しこりがある=癌というのは、必ずしもそうとは限りません。しこりがある場合、皮膚の病気と腫瘍の病気の可能性が考えられます。また、皮膚・腫瘍それぞれに対して、良性なのか、悪性なのかによっても、深刻度が異なります。

皮膚の病気の場合、多くは良性です。皮膚の病気は「皮膚炎」であることがほとんどなので、かゆみ、赤みといった症状を伴うことが多いです。また1つだけということはなく、同じような病変が多数みられます。

1~2個程度で1週間程度で治っていくようならいいですが、数が増えたり大きくなったり、また元気や食欲がなくなる、下痢や嘔吐がでるなどの全身的な症状を伴う場合は早めに病院へ受診しましょう。

腫瘍の病気の場合、良性と悪性、両方の可能性があります。腫瘍は通常炎症は伴わないので、癌であっても痛みなどの症状を伴うことはほとんどありません。「愛犬が気にしてないから大丈夫」と思われることもあると思いますが、そのことは良性であることの判断材料にはならないことを覚えていてください。

良性の場合、命にかかわることは少なく経過観察になることが多いですが、将来的にしこりが問題になる場合は、飼い主様と相談して外科手術で早期に取り除くこともあります。悪性の場合、早期に治療をおこなう必要があります。

しこりが悪性か良性かの予測、そして診断方法は?

「腫瘍が悪性だったらすぐ動物病院に行くし、良性だったら少し様子を見たい。だから、自宅で良性か悪性かを判断できるやり方はないの?」とお思いの方も多いのではないでしょうか。

一般的に腫瘍が良性の場合、皮膚を壊すことなくしこりが大きくなる傾向があり、脱毛や皮膚が赤くなることは少ないです。また、犬のしこりが急に大きくならないのも特徴です。

腫瘍が悪性の場合、良性とは反対で、皮膚を壊してしこりが大きくなります。そのため、毛が抜け、皮膚が赤くなります。また、犬のしこりが急に大きくなります。

しこりが大きくなるスピードは、細胞分裂にかかる時間によって異なります。良性の場合は細胞分裂は数か月に1回から1年に1回程度といわれていますが、悪性の場合は細胞分裂が24時間に1回程度に上がるといわれています。そのため悪性腫瘍は1週間単位でしこりの大きさに変化が現れます。

そのため、自宅で良性か悪性かを予測したい場合、今のしこりの大きさを測っておいて、1〜2週間後にしこりの大きさを再度測ってください。もし大きさが変わらなければ、良性の可能性が高く、大きさが変われば、悪性の可能性が高いです。

また、1日でしこりの大きさが急激に変わる場合、感染を起こして腫れてる可能性があります。とはいえ、基本的には見た目では判断できないので、しこりに気づいたら、病院での診察と細胞診検査をしておくことをおすすめします。

悪性の場合、犬のしこりが急に大きくなると同時に、全身に下記のような症状が出る場合もあります。

  • 痩せてきた
  • 遊ばなくなった
  • 食欲が落ちてきた
  • 血が止まらない
  • あざができる
  • 呼吸が苦しそう
  • 手がむくんでいる
  • 骨が折れやすい

そのため、上記の症状に心当たりがある場合は、すぐに動物病院で診てもらうことを推奨します。

私は、腫瘍科認定医の資格を持っており、また皮膚科認定医の資格も持っているので、腫瘍と皮膚病、どちらも診療可能です。東京都立川市にある渡邊動物病院で診療をおこなっていますので、お気軽にこちらからご相談ください。

犬のしこりを体の部位別にご紹介

犬のしこりは、体のどこにあるかで、病気の予測が可能です。ご確認ください。

お腹(皮膚皮下)のしこり

お腹は、乳腺組織と皮膚があります。そのため、お腹は皮下脂肪が溜まりやすい部位です。皮下脂肪が溜まりやすい部位に関しては、「乳腺腫瘍」「脂肪腫」「肥満細胞腫」になりやすいです。

背中のしこり

背中は、毛が多い部位です。そのため、脂の腺に腫瘍ができ、「皮脂腺腫瘍」になりやすいです。

また、注射を刺す部位でもあるため、それらの刺激によって肉腫が生まれやすいです。そのため、「軟部組織肉腫」にもなりやすい傾向があります。免疫に絡む「肥満細胞腫」になる可能性もあります。

首のしこり

首は、甲状腺の組織やリンパ腺がある部位です。そのため、「甲状腺腫瘍」「リンパ腫」になりやすいです。また、首は脂っぽい部位なので、「皮脂腺腫」にもなりやすいです。

腰のしこり

腰も、背中と同様に注射をすることが多いので、「軟部組織肉腫」になりやすいです。また、腰は脂肪がつきやすい部位でもあるので、「脂肪腫」「皮脂腺腫瘍」にもなりやすいです。

尻尾の付け根のしこり

肛門には、肛門周囲線とアポクリン腺があります。そのため、「肛門周囲腺腫」「アポクリン腺腫瘍」になりやすいです。また、肛門は脂っぽい部位でもあるので、「皮脂腺腫」にもなりやすいです。

耳のしこり

耳も、脂がつきやすい部位なので、「皮脂腺腫瘍」になりやすいです。また、耳は物に当たることで刺激が多い部位なので、「皮膚組織球腫」にもなりやすいです。治らない外耳炎の原因である「耳垢腺癌」の可能性もあります。

肋骨のしこり

肋骨は、脂が多い部位なので「脂肪腫」になりやすいです。また、毛の腫瘍である「毛芽腫」と皮膚の腫瘍である「肥満細胞腫」にもなりやすいです。

犬にしこりが見つかったときの対応の流れ

愛犬にしこりが見つかったとき、まずは自宅でしこりの大きさを確認し、見た目も記録しておきましょう。

しこりの大きさを測って、1〜2週間後に再度しこりの大きさを測り、大きさが変わっていなければ良性と仮判断。もし変わっていれば悪性と仮判断できます。

仮判断が良性の場合でも、可能な限り動物病院に行くことを推奨します。あくまでも仮診断なので、獣医師に触診や検査をしてもらい、本当に良性かどうか確認しましょう。また、良性の腫瘍でも、将来的なことを考えて、今のうちに外科手術で取り除いたほうがいいケースもあります。

仮判断が悪性の場合は、すぐに動物病院に行き、精密な検査をおこないましょう。早期発見・早期治療をすることで、愛犬の死のリスクや負担を減らすことができます。また、治療期間にも影響するので、飼い主様の金銭的時間的負担を減らすことにも繋がります。

検査が終わると、その子の年齢や健康状態を見て、今後どのように治療を進めていくかを、獣医師に相談しながら決めます。獣医師からは、複数の選択肢を提示されるケースが多く、その中から飼い主様に選んでいただきます。

治療方法としては、外科手術・化学療法・放射線療法、そして緩和ケアがあります。治療方法の詳細については、別の記事でご紹介させていただきます。

愛犬にしこりが見つかった際の、判断のまとめ

しこりがあるからといって、必ずしも癌とは限りません。まずは自宅で大きさの進行、見た目、症状から重症度を判断し、早急に受診すべきかを考えてください。

大事な家族である愛犬が苦しむ姿は見たくない、できるだけ長生きして一緒に人生を歩みたい。そう思っている方は、早めに動物病院を受診してください。しっかりとした検査をさせていただき、もし悪性の場合は、寄り添いながら治療方法をご提案させていただきます。

立川院 日本獣医がん学会認定医 木村友紀

渡邊動物病院の獣医腫瘍科認定医の木村です。
癌(がん)・腫瘍の治療は、愛犬・愛猫にとっても、飼い主様にとっても負担が大きいです。だからこそ、その子に寄り添い、外科手術・化学療法・放射線療法の中から、治療を行います。
また、当院では緩和ケアも積極的に取り入れています。鎮痛剤だけではなく、闘病中の愛犬・愛猫の負担を少しでも減らすために、ご家庭でもできるお手入れの仕方や食べ飲み時の介護などもお伝えいたします。

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