7才小型犬の上顎第四前臼歯抜髄根管治療|奥歯が折れて神経が露出してしまった症例

7才小型犬の上顎第四前臼歯抜髄根管治療|奥歯が折れて神経が露出してしまった症例のサムネイル画像

監修した先生

岡田 純一 先生(KINS WITH 動物病院 院長)の画像
岡田 純一 先生
KINS WITH 動物病院 院長
KINS WITH 動物病院二子玉川院
記事の内容を担当した病院
二子玉川院

歯科専従の獣医師と専用の設備を備え、一般的な歯科治療に加え難症例や歯を抜かない治療方法にも対応。加えて愛犬愛猫の歯磨きトレーニングの手順や定期メンテナンスについてもご案内しております。
東京都世田谷区 玉川3丁目15-13 EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230

今回は、上の奥歯が折れてしまい、抜髄根管治療をした症例をご紹介します。
歯が折れてしまった場合は、一般的には抜歯するケースもありますが、KINS WITH動物病院ではできるだけ歯を残してあげることでご飯やおやつを噛める生活を送れるような治療を提案しています。

1. 治療の概要 

 ⚫︎大きさ 小型
 ⚫︎犬種  トイプードル
 ⚫︎年齢  7歳
 ⚫︎性別  去勢雄
 ⚫︎体重  5kg
 ⚫︎症状  左上の奥歯が折れた
 ⚫︎病名  左上顎第四前臼歯破折(露髄を伴う)
 ⚫︎処置  抜髄根管治療、歯冠整復、歯石除去
 ⚫︎処置時間 4時間
 ⚫︎費用  25〜30万円程度
費用に関しては、ご加入されている保険が適用できる場合もあります。保険適用されるかどうかは加入されている保険会社にお問い合わせください。

2. 実際の症例

こちらでは、実際の症状や治療の流れについてくわしく説明していきます。

2-1. ご来院時の状況

左上の奥歯(第四前臼歯)が折れたため、来院されました。
以前、当院で歯石除去をしたトイプードルちゃんでした。定期的に歯科検診にもお越しいただいていましたが、同居犬と遊んでいた時に歯が折れてしまったそうです。

2-2. 検査結果と治療方針

検査をした結果、左上の奥歯が完全に折れ、歯髄(歯の中の神経や血管)が露出していました。こういった状態を「露髄」といいます。
露髄していると歯の中に細菌が入り込み、歯髄炎や歯髄壊死を引き起こします。露髄しているケースの治療方法としては、抜歯または抜髄根管治療が考えられます。今回は飼い主さまと相談し、抜髄根管治療をおこない、歯を温存することにしました。

2-3. 抜髄根管治療の流れ

まず歯石を除去し、口腔内をきれいにします。その後、歯にラバーダムとよばれるラテックスなどのシートを被せます。抜髄根管治療は歯の中の細菌を除去することが重要です。口の中はきれいにしても雑菌がいるため、ラバーダムにより口の中と歯の中を分けることが重要です。また歯の中を洗浄する薬剤は粘膜にダメージを与えてしまうため、それが漏れないようにする目的もあります。

歯の中は、ステンレスやチタンの合金でできた細いドリル(ファイル)で削りながら感染歯髄・細菌を除去します。削ったあとは中を洗浄します。切削と洗浄を繰り返して細菌を除去し、きれいになったら詰め物を入れていきます。
シーラーと呼ばれる細菌を封じ込めるための薬剤を根管内に塗布し、ガッタパーチャー(ゴム製の棒)を挿入します。余分なガッタパーチャを除去し、歯科用レジン(光で固まるプラスチック)を入れて歯の中を満たし、歯の形を整えます。

2-4. 術後結果

抜髄根管治療前と治療後の状態を写真と共にご紹介します。

治療前は完全に歯が折れています。左の写真では、歯に赤い点が見られます。これが露出した歯髄です。このままだとここから細菌が侵入し、歯髄炎・歯髄壊死を起こします。

治療で犬歯の表面に透明感のあるレジンをつけて形を整えました。自然な丸みになるように削っています。中に詰め物を入れてあります。

歯科に特化したKINS WITH動物病院 二子玉川本院では、できるだけ歯を残して健康的な生活が送れるような治療をご提案しています。他の症例はこちらからご覧ください。

16才の小型犬の犬歯抜髄根管治療|牙が折れて神経が露出してしまった症例|KINS WITH動物病院

【症例】歯の破折に対し抜歯を行わずに治療したポメラニアンの症例|KINS WITH動物病院

3. 治療後の経過

抜髄根管治療のあとは3ヶ月ごとに歯科専用レントゲンを撮影して、経過も丁寧に観察していきます。
現在、術後半年経過しています。無麻酔でのレントゲン撮影ですが、歯根先端に感染が起きている兆候はなく、詰め物も取れていません。このまま1年程度異常がなければ、治療は終了になります。

4. 担当獣医師からの一言

今回は奥歯が折れてしまった愛犬の抜髄根管治療をご紹介しました。
奥歯は蹄などのおもちゃや硬いおやつで折れてしまうことが多く、当院での破折症例はほとんどが奥歯の破折です。ハサミで切れないものや人の手で曲げることができない程度の硬さのものは、歯が折れてしまうリスクがあります。当院ではなるべく与えないようにお願いしています。

奥歯が折れてしまうと噛む能力が落ちてしまうでしょうし、放っておくと目の下あたりが腫れたりします。短頭種や持病がある場合など、麻酔リスクの高い際には抜歯をすることもありますが、なるべく早めに治療して、温存してあげられると良いですね。

▼KINSWITH動物病院での歯石取りの流れを見てみる

KINS WITH 動物病院二子玉川院 岡田院長
破折の治療を担当する先生
KINS WITH動物病院 二子玉川院
院長 岡田純一

東京都世田谷区 玉川3丁目15-13
EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230

KINS WITH動物病院、院長の岡田純一です。当院では愛犬さん、愛猫さん、ご家族の抱えるトラブルに対し、症状をなくすことはもちろん、なるべく根本から解決することを目指しています。 高性能な機器を用いた安全で正確な処置はもちろん、常在菌に着目したアプローチや、お家での生活に対するアドバイスまで丁寧に対応致します。 もちろん手技の技術を向上させるための鍛錬も日々欠かさず行なっております。 愛犬さん、愛猫さんとご家族が元気いっぱいで幸せな時間をなるべく長く過ごすお手伝いができるよう、努めて参ります。よろしくお願い致します。