5才小型犬の犬歯抜髄根管治療|牙が折れて神経が露出してしまった症例

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岡田 純一 先生
KINS WITH 動物病院 院長

今回は、犬歯が折れてしまい、抜髄根管治療をした症例をご紹介します。
当院では、できるだけ歯を残して健康な生活を送れるような治療方針を提案しています。
歯科に特化したトップレベルの院長が診察をおこなっており、本ページでは院長が担当した歯科治療の様子をくわしく解説しています。

1. 治療の概要

  •  大きさ 小型
  •  犬種  レークランド・テリア
  •  年齢  5歳9ヶ月
  •  性別  去勢雄
  •  体重  6kg
  •  症状  右上の牙が折れた
  •  病名  右上顎犬歯破折(露髄を伴う)
  •  処置  抜髄根管治療、歯冠整復、歯石除去
  •  処置時間 4時間
  •  費用  20万円程度

2. 実際の症例

本章では、症状の状態や治療内容についてくわしく解説します。

2-1. ご来院時の状況

右上の牙(犬歯)が折れたため、来院されました。

2-2. 検査結果と治療方針

検査をした結果、右上の犬歯が完全に折れており、歯髄(歯の中の神経や血管)が露出していました。こういった状態を「露髄」といいます。露髄していると歯の中に細菌が入り込み、歯髄炎や歯髄壊死を引き起こします。

露髄しているケースの治療方法としては、抜歯または抜髄根管治療が考えられます。
今回は飼主さまと相談し、抜髄根管治療をおこない、犬歯を温存することになりました。

2-3. 抜髄根管治療の流れ

こちらでは、治療の流れをくわしくご紹介します。

まず歯石を除去し、口腔内をきれいにします。その後、歯にラバーダムとよばれるラテックスなどのシートを被せます。抜髄根管治療は歯の中の細菌を除去することが重要です。

口の中はきれいにしても雑菌がいるため、ラバーダムにより口の中と歯の中を分けることが重要です。また歯の中を洗浄する薬剤は粘膜にダメージを与えてしまうため、それが漏れないようにする目的もあります。

歯の中は、ステンレスやチタンの合金でできた細いドリル(ファイルといいます)で削りながら感染歯髄・細菌を除去します。削ったあとは中を洗浄します。切削と洗浄を繰り返して細菌を除去し、きれいになったら詰め物を入れていきます。

シーラーと呼ばれる最近を封じ込めるための薬剤を根管内に塗布し、ガッタパーチャー(ゴム製の棒)を挿入します。余分なガッタパーチャを除去し、歯科用レジン(光で固まるプラスチック)を入れて歯の中を満たし、歯の形を整えます。

2-4. 治療後の結果

抜髄根管治療前と治療後の状態を写真と共にご紹介します。

治療前の犬の歯が折れた状態

治療前は完全に犬歯が折れています。

治療後の犬の歯の状態

治療で犬歯の表面に透明感のあるレジンをつけて形を整えました。自然な丸みになるように削っています。中に詰め物を入れてあります。

3. 治療後の経過

抜髄根管治療のあとは3ヶ月ごとに歯科専用レントゲンを撮影して、経過も丁寧に観察していきます。
経過は後日更新します。

4. 担当獣医師からの一言

今回は犬歯が折れてしまった愛犬の抜髄根管治療をご紹介しました。
折れてしまった歯は完全に元通りにはできませんが、遠目では自然な仕上がりになっています。短くなっても歯を温存することで愛犬の生活の質を維持する一助になると思います。短頭種や持病がある場合など、麻酔リスクの高い際には抜歯をすることもありますが、なるべく温存してあげられると良いですね。

担当医師のご紹介
二子玉川院 院長 岡田 純一

KINS WITH動物病院、院長の岡田純一です。当院では愛犬さん、愛猫さん、ご家族の抱えるトラブルに対し、症状をなくすことはもちろん、なるべく根本から解決することを目指しています。
高性能な機器を用いた安全で正確な処置はもちろん、常在菌に着目したアプローチや、お家での生活に対するアドバイスまで丁寧に対応致します。
もちろん手技の技術を向上させるための鍛錬も日々欠かさず行なっております。
愛犬さん、愛猫さんとご家族が元気いっぱいで幸せな時間をなるべく長く過ごすお手伝いができるよう、努めて参ります。よろしくお願い致します。