【猫の麻酔】概要や注意点、家での過ごし方について
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「外耳炎」は私たち人間も発症することがよくありますが、犬や猫も日常的に罹ってしまう耳の炎症です。
最近うちの子、耳をよく掻いてる気がする、耳が臭う気がする。
でも、猫によっては、なかなか見せてくれないお耳。
耳の一番奥にある鼓膜に、空気の振動(音)を伝える大切な役割のある外耳道(耳の入り口から鼓膜まで)での炎症のことを「外耳炎」と呼びます。今回はこの「外耳炎」とはどんなものなのか、原因や治療についてお話ししていきます。犬ほど耳が問題になることは多くはないですが、外耳炎の原因によってはヒトや同居動物にも感染してしまうことがあるので、注意が必要です。
外耳炎になると、痒みや違和感などに伴う耳を気にする初期症状から始まり、耳の状態が酷くなると、痛みを伴うようになります。
耳を見せてくれない子は、リラックスしている時やグルーミングをしている時などに、耳を掻く仕草が多くないか確認してあげると良いでしょう。
猫の外耳炎も犬同様に、様々な要因が絡むことで起こります。
耳だけの問題でも、実は背景にアレルギー疾患が隠れていることもあれば、全身的なホルモントラブル(内分泌疾患)、呼吸器との関連疾患を抱えていることもあります。
今回は、猫の外耳炎の原因になりやすいものをピックアップしてお伝えします。
猫の耳の寄生虫感染症で多いのは、耳の穴の中を好んで寄生するミミヒゼンダニによる感染です。
耳疥癬やミミヒゼンダニ症と呼ばれます。とても強い痒みをもたらし、耳垢もすぐに溜まりやすくなります。基本的に感染動物との直接接触により感染します。そのため、外を出入りする猫や、免疫に未熟な仔猫で特に注意が必要です。
主に植物の種や芒(コメ、ムギなどイネ科の植物の小穂を構成する鱗片の先端にある棘状の突起のこと)などが耳の中に入り込むことで、持続的な炎症が起こります。基本的に、外を出入りする猫で草むらなどを好む子は注意が必要です。
食べ物や環境要因に対するアレルギーがある場合も、猫の耳トラブルに繋がることがあります。痒みにより、耳を掻き壊し、そこに細菌などが感染することで、二次的に外耳炎を引き起こすパターンが多いです。
折れ耳により、耳垢が排出されにくかったり、耳の環境が高温多湿になりやすいスコティッシュなどの一部の品種や、生まれつき耳の構造に問題を持っていたり、ポリープなど耳の中を閉塞するような病変がある場合は、それだけで外耳炎になるリスクを高めてしまいます。
外耳炎には、根本解決できるものもあれば、基礎疾患の管理をしないと再発してしまうものもあります。原因が一つだけなのか、複数絡んでいるのか、時間をかけてその要因を見つけ出す必要があります。
上記の通り、外耳炎の原因は多岐にわたることがありますので、適切な治療を行うために複数の検査を行い診断する場合があります。
耳垢があった場合は、採取したのち、顕微鏡にて下記を確認します。
全身の皮膚状態やかゆみを確認します。
これらを総合的に判断し、耳だけの問題なのか、基礎疾患との関連性があるのか、鑑別していきます。
外耳炎の治療は、犬と同じく、3つ。耳洗浄、点耳薬、基礎疾患の治療です。まず、耳の洗浄と点耳薬により、汚れていたり、炎症がある耳の状態を元に戻していきます。この二つを行いながら、外耳炎の背景疾患の探索とその管理を並行して行っていくことが重要です。
例えば、寄生虫感染による外耳炎では駆虫を行います。
また、食物アレルギーが疑われる場合にはアレルギー食への変更を検討していく必要があります。
これらの対応で症状の管理が困難な場合は、耳用内視鏡(ビデオオトスコープ)による細かな精査・処置(たとえば異物の除去)や全身療法が必要になることもあります。
昨今はネットでお薬が簡単に手に入る時代。「この市販薬を試して、効果がなければ病院へ行こう」と考える飼い主さまもいらっしゃると思います。しかし、獣医師は、耳の中の状態を確認し、炎症の程度や感染の有無などを考慮し、診断をつけた上で治療していきます。
また、猫への点耳方法や点耳ができない場合の治療法なども相談しながら決めていきます。
お薬の一回量や回数、どれくらいの期間使用するのかを守らないと、耳の状態を悪化させてしまうだけでなく、抗生剤が効かなくなる耐性菌を生んでしまうリスクもあります。猫は私たち人間のように症状や辛い思いを口にすることはできません。判断に迷う場合は、お電話でも良いのでご相談くださいね。
猫の外耳炎は、その原因により、同居の愛猫や、犬、ヒトにも感染する可能性があります。
寄生虫疾患であるヒゼンダニだけでなく、糸状菌というカビが感染して起きる皮膚糸状菌症は、二次的に外耳炎を起こすことがあります。ヒゼンダニは、ヒトでは3週間ほどで自然治癒することが多いですが、強い痒みを伴います。また、犬や猫にも感染し、強い痒みによる掻き壊しや舐め壊しにより、二次的な皮膚炎を起こすことが多いです。
皮膚糸状菌症は、ヒトでは痒みを伴うことが多く、毛の薄い腕や首筋などに感染し、リング状の皮疹がみられます。犬や猫では、感染すると脱毛や痒みを起こします。また、抜けた毛や落ちたフケも感染源になるので、しっかりと環境治療を行わないと、治療後の再感染を起こすこともあります。
このように、たかが耳のトラブルでも、その原因により、同居している犬猫全てに対して駆虫したり、治療する必要があることも。
暖かく、ジメジメするこの季節。活発になる虫やカビから家族を守るためにも、家族の一員の愛猫、愛犬の健康管理に気を使っていきましょう。
基本的に、室内飼いの猫の耳は、そこまで汚れることは少なく、目でみえる耳の表面に耳垢が適度につく程度です。
外耳炎がある場合は、外耳炎になりやすいリスク要因が隠れていることが多いです。
そのため、背景にあるリスク要因を少なくすることが、外耳炎の予防に繋がります。
日本では、春先から始まる高温多湿な時期に外耳炎になりやすい傾向にあります。
2−3月のやや涼しい時期に耳の中の状態を確認しておき、外耳炎を引き起こしやすい要因があれば、取り除いておきましょう。
耳には、耳垢を鼓膜近くから外側に排泄する自浄作用という機能があります。
スコティッシュフォールドなどの一部の品種は、この機能がうまく働かず、耳垢の排泄がうまくできないことがあるので、1−2ヶ月おきの定期的な耳の中の検診をしましょう。
耳にトラブルを起こす寄生虫などの感染が起こりやすいのも、免疫が未発達な子猫の時期です。
子猫を迎え入れたら、三ヶ月間は毎月一回は検診を受けて、全身状態に問題がないか確認しておくことをお勧めします。
おうちの外を自由に出てしまう猫は、寄生虫だけでなく、糸状菌などヒトにも感染する感染源に触れる機会が多くなります。
また猫同士のケンカがもとで、二次感染を起こすこともあります。
一月に一度は検診を受けるとともに、定期的な駆虫薬の投与も続けましょう。
耳のケアは、実はリスクが伴います。
綿棒の誤った使用よって、耳の通り道に傷がついて、それが元で外耳炎を引き起こしてしまうこともあります。
自宅で愛猫の耳掃除を行いたい場合は、事前に動物病院で確認しておくことをお勧めします。
耳は皮膚とは異なり、目で見て症状を確認することが難しい部位です。
また、折れ耳を持つ猫は、耳の外側が問題なさそうでも、耳の奥ではトラブルが起きているかもしれません。
耳のケアで悩んでいたり、耳をちゃんと診てもらった記憶がない場合は、一度病院での診察を受けてみませんか? 大切な家族の一員である愛猫のために。
2023年10月にKINS WITH動物病院グループの一員になりました、渡邊動物病院の皮膚科認定医の木村です。
皮膚のお悩みは、原因が複合的なことが多く、特定が難しいと言われています。足先に皮膚炎の症状が出ていても、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの可能性もあれば、足の関節が痛くて足を舐めて皮膚炎になっている可能性もあります。
私は皮膚科認定医でありながら、腫瘍認定医でもあります。日本獣医循環器学会や日本獣医歯科研究会に所属し、幅広い知見があります。皮膚に限らず、幅広い分野に精通しているからこそ、皮膚病の要因をあらゆる観点から分析し、根拠をもって適切な治療方針をご提案します。