【猫の麻酔】概要や注意点、家での過ごし方について

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ねこちゃんが手術を受ける上で、麻酔に対して不安に感じている飼い主さんは多いのではないでしょうか。こちらの記事では、そんなねこちゃんの麻酔について解説していきます。

猫の麻酔について

ねこちゃんの麻酔とはどのようなものでしょうか。

麻酔は、体の神経機能を抑制する薬を投与することによって施されます。

よく耳にする全身麻酔では短時間意識を失い、筋肉が弛緩し痛みの感覚を失います。

人間でも開腹手術を行う場合や、親知らずを抜くときに全身麻酔で抜くという人もいるかもしれませんね。それと同じように、適切に麻酔が施された状態で手術を受けることにより、ねこちゃんの手術や歯科治療等における痛みや不快感を取り除くことができます。

もちろん、麻酔を受ける前には体重を測ったり、胸部の検査や腹部の触診、歯茎の状態など徹底的に検査をします。そして血液検査や尿検査、血圧、心電図、胸部や腹部のX線検査など追加の検査も行うことがあります。

ほとんどの場合は、「バランス麻酔」と呼ばれる麻酔が使用されるのですが、「バランス麻酔」はねこちゃんの個々のニーズに適した鎮痛剤と麻酔薬の組み合わせで作られます。最も一般的な組み合わせは注射によって投与される麻酔前の鎮静薬と鎮痛薬の組み合わせで、続いて同じく注射によって投与される誘導剤です。

また、麻酔後にねこちゃんが意識を失ったら、気管内チューブと呼ばれる呼吸用のチューブを気管に挿入します。この気管内チューブは麻酔ガスと酸素を肺に送り込むだけでなく、気道を塞いでねこちゃんが無意識で飲み込めないときに誤って液体やその他の異物を肺に吸い込んでしまうことを防ぐものです。肺に異物が入ってしまうと大変危険なため、こちらも大切なものです。

麻酔が必要な時とは?

避妊や去勢手術のようなものや、歯科治療など、麻酔は動物病院では日常的に行われています。ねこちゃんは一生のうちに少なくとも数回は麻酔を必要とする可能性が非常に高いとも言えます。

痛みや不快さを感じることなく処置ができるため、病気の治療などの多くの場面で必要になります。

メリットとデメリット

メリットとしては、適切に麻酔が施されると施術中の痛みや不快感を取り除くことができます。

よくある誤解として麻酔は危険だと思われることが多いですが、麻酔による合併症が起こるリスクは1%未満であり、あらゆる処置の中でのリスクとしては低い方です。

健康的なねこちゃんに、麻酔で問題が生じることはめったにありません。

歯のクリーニングなど麻酔をしなければ出来ない施術は多いですが、一般的に麻酔をしてそういった処置を行う方が健康上のメリットはデメリットを上回ります。

ただし、麻酔を行う上で事前に獣医師が知っておくべき健康上の問題がないことが前提です。

麻酔にも種類があり、お家のねこちゃんがどのタイプの麻酔が合っているのかということも判断しやすくなるため、事前に血液検査を行うことがおすすめです。

デメリットとしては、少量短時間でも数時間の全身麻酔でも麻酔薬を使用するときは常に副作用のリスクがあることです。

0.17%程が麻酔薬に対して副作用が起こると言われています。

副作用は注射部の腫れや、アナフィラキシーショック、死亡にいたるまでエピソードとしては様々あります。ただ、多くの専門家は麻酔の処置を受けるために車で病院に行き来するリスクよりも麻酔による死亡のリスクは少ないと考えています。

ねこちゃんが麻酔の前に絶食をしていないと、潜在的な問題から来るリスクとは別で危険が生じます。麻酔をかけられると通常食べ物を飲み込んで逆流しないようにする力も失われるので、その状態で嘔吐してしまうと嘔吐物が肺に逆流したりすることがあります。この場合生命を脅かす可能性があります。

麻酔によるその他の合併症としては、腎臓や肝臓または心不全などの臓器系の生涯、視覚障害、発作等があります。麻酔が治療に必要な場合は、これらのリスクを最小限に抑えるためにあらゆる予防措置が講じられます。

猫の麻酔は何回受けても問題ないの?危険ではないの?

ねこちゃんの中には口腔内治療が必要だったり、定期的な麻酔をかけて治療を行う必要があるケースもあるかもしれません。その場合、治療のためには年に1度だったり、生涯で何回か麻酔を経験しないといけないことがあります。そうしたケースで飼い主さんとして気になることは、何回も麻酔をかけても問題ないのか、ということではないでしょうか。一般的に麻酔をかけて治療を優先した方が良いのか、何回にも及ぶ麻酔は回避した方が良いのか、とても多い質問です。獣医師の見解は以下の通りです。

猫の麻酔後はどうなる?

昨今の治療で行う麻薬薬では、退院時にはねこちゃんはほぼ完全に正常な状態になっています。ただ多くの場合、麻酔後12時間から24時間程はいつもより多くの睡眠をとったり、疲れていて元気が無いことがあります。

無気力であったり、不機嫌、攻撃的であることもあるでしょう。基本的にはねこちゃんはセンシティブな気分になっています。

また、手術後1日程度はねこちゃんの食欲が低下する場合があります。一方で歯科処置は日帰り手術なので、夜ご飯は少しずつ与えつつ、翌日以降は体調に問題ない様子なら通常通りの食事をとっても大丈夫とお伝えしています。

ねこちゃんが麻酔中に気管にチューブが挿入されていた場合、軽い咳をすることがあります。この咳は通常2週間程度で減少していきます。

麻酔中の手術によって出来た切開部分については、縫合部の周囲の皮膚はわずかに赤やピンクの色をしている場合があります。その他数日でアザが出来ることもあります。手術後1日程度は、切開部位や縫合部分の周辺から血が滲んでいることがありますが、1日程度であれば通常起こりうる事でそこまで心配は要らないでしょう。

ちなみに、ねこちゃんは手術後に縫合糸をなめたり噛んだりしたくなることがあります。この行動に気付いた場合はエリザベスカラーの着用をする必要があります。すでにエリザベスカラーをしている場合は、獣医師が大丈夫というまでは外さないようにしてください。

もし麻酔による重大な副作用が起こる場合、大体は手術後麻酔から目が覚める数時間で起こることが多いです。そのため手術後数時間は病院に留まり獣医師の目が届くようにします。麻酔の処置後、体温を制御する能力が低下し体が冷たくなったり熱くなったりしたり、今何が起こっているかなどが分からなくなり鳴き続ける、上手く歩けないなどが一般的に起こることがあります。ただこれらは麻酔を受けた後比較的速くこれらの症状は治まるので、病院にねこちゃんを迎えに行く頃には正常に見えるはずです。

麻酔後に注意して見ておくこと

ねこちゃんを病院に迎えに行ったときに説明があるとは思いますが、過度に痛みを感じているように見えたり限界を超えた苦痛などを感じているように見える場合はすぐに獣医師に相談する必要があります。

手術後1日程度元気がないのは通常ですが、2日程度たってもまだ非常に無気力であったり、食欲がない場合は獣医師に相談してください。

ねこちゃんが極端な行動をする場合は、痛みを感じていることを示している可能性があります。鎮痛剤を必要とする場合は獣医師に必ず処方をしてもらい、人間の鎮痛剤はねこちゃんにとって有毒な物質が含まれているため、決して与えないでください。

手術後の切開部位については、手術後24時間以上経っても少量の血が滲む、過度の腫れや赤み、不快なにおいや分泌物などがある場合、獣医師や病院に連絡してください。

麻酔後、こんな時はどうしたら良い?

元気がない時は?

手術後1日程度よく眠ったり、疲れて元気がないことは多くあります。ただ動きが異常に鈍く見えたり、眠りから起きなかったり、2日程度経っても元気がないなどおかしいのではと思ったらすぐに病院に連絡して具体的なアドバイスを受けてください。

また手術後の過ごし方としては、家に付いたらねこちゃんが快適な室温(20~24度)の静かで風のない部屋で、柔らかく清潔なベッドを用意して、ねこちゃんが暖かく快適に過ごせるようにしてあげましょう。食べ物と水、トイレが近くにあるようにし、他のねこちゃんやお子さんが目の届かない場所で一緒にいることを避けてあげてください。

大体のケースでは、手術後丸1週間はねこちゃんの活動を制限する必要があります。傷に過度の負担をかける可能性のある走ったりジャンプしたり、その他激しい活動は避ける必要があります。可能であれば、そのようなことが起こらなそうな専用の部屋を作りそこにいてもらうか、ねこちゃんがジャンプしたくなるような家具などは部屋からどかしておくと良いでしょう。

食事について

麻酔後にねこちゃんをお迎えに行き家に着いてから数時間後、ねこちゃんに通常の夕食の約半分を与えることができます。食べ終えてもまだお腹が空いているようであれば、残りの食事を約1時間後にあげます。

一部のねこちゃんは全身麻酔後に吐き気を経験するため、食事を小分けにすることで吐き気や嘔吐のリスクを減らすことができます。特に獣医師からの指示がない限りはお水はいつでも飲めるようにしてあげてください。

嘔吐がある場合

 一部のねこちゃんは全身麻酔後に吐き気を催します。食事を小分けにすることで、吐き気や嘔吐のリスクを減らすことができます。

また、もし嘔吐が起きた際にはよく様子を見ていただく必要があります。誤嚥性肺炎になるリスクがあるので、嘔吐の後に呼吸数が増えていないか(苦しそうじゃないか)をしっかり確認しましょう。

その他_寝ない、呼吸が乱れる、よだれが多くでる、瞳孔が開いたまま、などがある場合

麻酔の後の猫ちゃんは、いつもと少し違う様子を見せるかもしれません。帰宅後は特にねこちゃんの様子に気を配ることが大切です。

前述の通り嘔吐のある場合や呼吸が苦しそうな場合。明らかにぐったりしている様子が見られる。また舌や歯茎の色が薄い時は注意が必要です。すぐに獣医師にご連絡ください。