
食欲があるのに犬が下痢をするとき
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二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。
これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。
スコティッシュフォールドの花子ちゃん(仮名・7歳・避妊メス)。主訴は「幼少期からの慢性下痢」。ここ数年は固まった便をみておらず、これまでに何度も近医に相談されてきたようです。検査をしても原因はわからず、治療はいずれも奏功しなかったためご家族は治療を一度あきらめたそうですが、ここ1週間は便が肛門から垂れ流し状態のため、専門診療を受けてみようと決心されたようです。
症状に気づいたのは2歳頃からです。同腹の姉妹猫が家にいるのですが、明らかにこの子の方が便は緩く、当時病院に行き、便検査でコクシジウムがいるとわかり駆虫をしましたが、下痢は改善せず原因のわからないまま下痢止めや整腸剤や複数の食事治療を試しましたが改善しませんでした。原因もわからないし、治療をしても良くならないので治療をあきらめていました。
猫ちゃんはかなり痩せていました。自宅では下痢の管理が大変なためサークルから出してあげられず、体毛に下痢便が付着したときの洗体がご家族にとっても猫ちゃんにとっても大変なため、体毛はバリカンで虎刈り状態でした。尻尾の毛は常に全刈り状態で、お尻周りは赤く腫れていました。
近医では駆虫剤・下痢止め・整腸剤・複数のフード変更を試してきました。病院で提案された治療は全部効かなかったので、自分で探したフードを今与えていますが下痢の改善がみられません。下痢はここ数年間ずっと続いており、正直諦めています。サークルから出してあげられないのはつらいですね。ここ1-2週間は下痢が肛門から垂れ流し状態で、さすがに見ていて辛くなりもう一回専門の先生に診てもらおうと思うようになりました。これまでの病院で検査を何度も行いましたが原因がわからないとのことですし、治療が効いた試しがないので半信半疑で受診しました。

問診を進めていくと、2歳の時にはなかった排便困難な様子(しぶり、努責)が1-2年前からみられるようになっているようです。食欲旺盛ですがかなり痩せているのも気になりました。エコー検査では大腸は重度に短く、大腸壁の肥厚(特に粘膜下織の肥厚)と狭窄を認めました(図1:短軸、図2:長軸)。狭窄部の近位は大腸が拡張し、狭窄部を通過できなかった便が糞塊となり排便できずに残存している様子がみられました。また、膵管拡張や胆管壁肥厚をみとめ、短結腸症候群と三臓器炎(慢性腸炎やリンパ腫などの慢性胃腸疾患、慢性膵炎、慢性胆管炎)の併発が疑われました。確定診断には全身麻酔下での内視鏡検査が必要ですが、削痩があまりにも重度であり、麻酔リスクを考えて内視鏡検査は希望されず、試験的治療を行うことにしました。
本症例は繊維増強食が効かなかった過去があります。大腸狭窄もありステロイド剤の併用を行いました。ただし三臓炎の併発が疑われるため、ステロイドによる高血糖や糖尿病の発症、細菌性胆嚢炎の発症に注意が必要です。そのため低用量からステロイドを開始しました。短結腸症候群は治療法が確立しておらず、症例によっては下痢を完全に良くしてあげることができず、現在の獣医学では治療の限界があることもあります。
初めて聞く病名(短結腸症候群)で、全然想定していない病気でした。下痢以外に症状がなかったので、リンパ腫の一歩手前あるいは初期まで病気が進んでいるとは想像もしていませんでした。お陰様で治療を開始して正常便ではありませんが、排便回数が激減し、体重も増え始めました。何よりも原因(確定診断ではないが)がわかったのは良かったです。治療の限界がある病気であることもわかり、今後の見通しがわかってよかったです。
短結腸症候群は獣医師も含めてあまり知られていない病気ですが、鑑別疾患の中に入れて意識して検査をしないと見落とす可能性のある病気です。また、小腸にも慢性疾患(慢性腸炎やリンパ腫)を併発することが多いという報告があります。実際にこれまで診てきた短結腸症候群の猫の小腸にも慢性疾患を併発したということをよく経験します。今回の猫ちゃんは下痢がメインの症状でしたが、問診と身体検査の結果、体重減少も問題点であることがわかりました。主訴が下痢だからといって下痢だけに囚われず、意識して問診で聞き出すことで主訴以外に問題点が浮き彫りになることは珍しくありません。症状は病気を示すサインの一つですが、ご家族が気づいている症状以外にも病気のサインがあることがあります。検査に入る前の問診と身体検査の大事さがよくわかる症例でした。
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二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。