
食欲があるのに犬が下痢をするとき
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二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。
これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。
低ALBと間欠的な軟便を3年前から患っていましたが、精査は行わずに食事療法とステロイドでの治療を行っていたところ、同居犬を同疾患で亡くし、精査と専門診療を希望され、当院を受診されました。今年の健康診断で腎臓の萎縮が指摘されており慢性腎臓病を持病で抱えています。
3年前にALB低下がわかって腸からアルブミンが漏れていると主治医から聞き、低脂肪食を食べさせていました。当時はあまり深刻に考えていませんでしたが、2026年3月に同居犬を同じ疾患で亡くしたのをきっかけに、ちゃんと検査してもらおうという気持ちになりました
元気・食欲に問題ありませんでしたが、体重減少は重度でした。筋肉量の低下もみられ、やや痩せている状態でした。来院時には正常便でした。
これまでに低脂肪療法食や手作り食を与えてALBに気を付けていましたが、1か月前から下痢がでるようになりました。手作り食のおかげかALBは基準範囲まで上昇しましたが、下痢が出始めたので、主治医からステロイドが処方されました。同時に我々の判断で手作り食に低脂肪のドライフードを混ぜ始めました。こちらの病院に受診する3-4日前から下痢は良便になりました。同居犬を同じ病気で亡くしてしまい、もっとやってあげられたのではないかという後悔があり、この子にはせめて精一杯してあげたい気持ちです。

血液検査ではALBは基準範囲でしたが、コバラミン濃度は低値で、回腸の吸収不良が疑われました。エコー検査では小腸が全体的にリンパ管拡張を示唆する所見を重度に認めました。
ご家族はびまん性胃腸疾患(慢性胃腸炎、リンパ管拡張症、消化管リンパ腫)の精査のための内視鏡検査を希望され、後日内視鏡検査を行いました。内視鏡検査ではエコー検査と同様に、小腸では広範囲で重度のリンパ管拡張所見と発赤を認めました(図1:十二指腸、図2:回腸)。
内視鏡生検の病理結果で「軽-中度の慢性胃腸炎、重度のリンパ管拡張症」と診断されました。
内服と食事の調整を行います。リンパ腫は除外され、消化器徴候もなく、ALBも基準範囲のため、ステロイドを漸減していき、必要最低量を探していきます。シンバイオティクスによる腸内環境の是正なども合わせて試みて、ステロイドを減量するサポートを加えていきます。
低コバラミンのためビタミンB12の補充も行います。現時点では血栓形成傾向はありませんでしたが、引き続き定期的に評価していき、必要に応じて抗血栓薬を検討します。食事は胃腸と腎臓の両方考慮した食事内容に調整していきます。
この子がどのような病態で、何をしなければいけないのか、今後の方針や未来像が明確になりました。同居犬はあっという間に亡くなってしまい、対策することもできませんでした。同じ病気であっても、何がベストな治療なのかは患者によって違うことも理解できました。専門の先生に早く診てもらえば良かったと後悔しています。
短結腸蛋白漏出性腸症(PLE)は疾患群の総称であって、「慢性胃腸炎・リンパ管拡張症・リンパ腫」が含まれます。また、このうち複数併発していた場合に病気の比重によって治療内容も調整が必要です。さらに今回の患者さんのように他の病気を併発していた場合には多角的な考慮が治療に必要です。
この病気はALBだけでなく、消化器症状・血栓・栄養など多因子のバランスを加味した複雑な治療を要する病気です。愛犬がどんな病態なのか知らずに治療している方がいれば、ぜひその子にとっての最善を再考してみてください。
今回の患者さんのように胃腸と腎臓の両方をケアした食事内容にしなければいけないケースは珍しくありません。食事内容は消化器治療において大きな要素になります。胃腸疾患だけでも複雑な食事療法ですが、さらに考慮しなければいけない疾患がある場合は混乱しても仕方ありません。
食事療法はご家族のご理解とご協力が必要な治療のため、当院では丁寧な説明を行っていますので、悩んでいる方がいれば一度ご相談ください。
東京都世田谷区 玉川3丁目15-13
EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230
二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。