
食欲があるのに犬が下痢をするとき
- 犬
- お腹
- 読み物コンテンツ
今回は非定型アジソン病(副腎皮質機能低下症)の症例をご紹介いたします。他院で原因が明らかになっておらず、セカンドオピニオンを目的に当院を受診されました。
・大きさ 小型
・犬種 トイプードル
・年齢 2歳4か月
・性別 避妊雌
・体重 2.85 kg
・症状 慢性嘔吐、吐血、間欠的な軟便~下痢
・病名 非定型アジソン病(副腎皮質機能低下症)
・検査 身体検査、血液検査、エコー検査
・処置 プレドニゾロン(ステロイド)
・費用 60,247円(初診+院内検査+外注検査)

幼少期から食欲低下・間欠的な嘔吐・吐血・軟便~下痢がみられていたようです。かかりつけ医で食事療法などを試されたが改善せず、セカンドオピニオンを目的に来院されました。
異物・アジソン病・びまん性胃腸疾患(慢性胃腸炎、リンパ管拡張症、リンパ腫)・ガストリノーマなどを鑑別疾患として念頭に入れ検査を行いました。身体検査と一般血液検査では何も異常がありません。エコー検査では胃の運動性低下、小腸の粘膜面は軽度に不整でやや腸管の腫れもみられます。特に気になったのは副腎が小さいことです。(図1・2)異物を疑う所見がないため、次にホルモン検査を行うと低値を示し、ホルモン分泌不足が認められ、「非定型アジソン病」と診断しました。

ホルモン補充療法として低用量のステロイド治療を開始しました。2年間ずっと悩まれていた症状は劇的に改善し、治療開始した直後から食欲は改善し、消化器症状は消失しました。
今回ご紹介したアジソン病は、「副腎」というお腹の中のホルモンを分泌する臓器からホルモンが正常に分泌できなくなってしまう稀な内分泌疾患です。非特異的な症状であることが多く、慢性~間欠的(たまに)に症状が出現し、元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・吐血・メレナ(黒色便)・体重減少などが挙げられます。アジソン病には「定型」と「非定型」と2種類あり、「定型」は血液検査で電解質異常を伴いますが、「非定型」はそのような異常がなく、特に「非定型」は疑ってかからないと気付くことのできない病気の一つです。
この病気は内分泌疾患であり消化器疾患ではありませんが、慢性的な消化器症状を起こすため、消化器内科の悩みで来院されることが時々あります。このようにたとえ消化器症状があっても、胃腸疾患や消化器疾患と決めつけず、様々な可能性を想定して鑑別疾患から病気を特定していかなければいけません。見落としを最小限にするために徹底的な問診と系統立てた診断アプローチが不可欠なのです。