
食欲があるのに犬が下痢をするとき
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消化器内科では食べ物の消化に関わる全ての臓器、具体的には胃腸に食道、肝臓、胆嚢、そして膵臓の病気に対応します。二次診療施設で消化器科に専従した獣医師が在籍し、検査や治療の選択肢をご家族と相談しながら、それぞれの患者さまに最適な道を探したいと思います。
東京都世田谷区 玉川3丁目15-13 EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230
今回は蛋白漏出性腸症(PLE)の症例をご紹介いたします。
他院で原因が明らかになっておらず、セカンドオピニオンを目的に当院を受診されました。
幼少期から慢性下痢がみられ、食事療法をしたところ下痢は消失し経過は安定していたようです。無症状で受けた健康診断でアルブミン低下が指摘され、ステロイド治療が開始されたところアルブミンは上昇したが、その後減薬するとアルブミンは低下してしまい、次第に下痢をするようになったようです。
身体検査では標準体型ですが、食事量を変えていないのに健常時から12%の体重減少を認めました。これは、60kgの成人が7.2kg痩せるのと同じ割合です。
血液検査ではアルブミンは基準範囲の下限値(2.2 g/dl)でした。エコー検査では小腸の広範囲で腸管の腫れと一部でリンパ管拡張を示すストリエーションサイン(小腸粘膜が縞模様に見える現象)が見られました。可能性のある他の病気を除外し、びまん性胃腸疾患(慢性胃腸炎、リンパ管拡張症、リンパ腫)による蛋白漏出性腸症の疑いが高まります。
ご家族は確定診断のための内視鏡検査を希望されました。内視鏡検査では小腸は全体的にやや浮腫が見られます。

また、回腸ではリンパ管拡張所見と発赤が目立ちました。

偶発的に胃内異物がみつかり内視鏡を用いて摘出しました。内視鏡生検の病理結果で「中程度の慢性胃腸炎と軽度のリンパ管拡張症」と診断されました。

ご家族は今後の治療をかかりつけ医で希望されており、ステロイドの必要量と食事内容の見直し、血栓予防薬の併用、将来の病状の見通しなどについてご家族にご説明し、かかりつけ病院には診療報告書を作成し診療引継ぎを行い、当院の通院を終了としています。
今回は蛋白漏出性腸症(PLE)の一例をご紹介しました。PLEは「慢性胃腸炎、リンパ管拡張症、リンパ腫」3つの疾患群の名称であり、ワンちゃんがどの病気をどのくらいの強さで患っているのかにより治療方法が異なります。
今回の患者さんはこれまでの治療でステロイドが効くのは理解されていたがものの、どのような病気なのか、ステロイドはどのくらい必要なのか、ステロイドはやめられるのか、今後どのような経過をたどるのかなどのモヤモヤを解消するべく当院で精査のために来院された患者さんでした。
PLEはアルブミンが腸から漏れている状態で、命に関わる重篤な病気のため、症状やアルブミンが安定しない場合は、速やかな精査と副作用を最小限にした適切な治療を行う必要があります。
東京都世田谷区 玉川3丁目15-13
EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230
二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。