急性肝障害を疑う症例

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担当医師のご紹介
二子玉川院 消化器内科獣医師 杉本 太一

二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。
これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。

今回は急性肝障害を疑った症例をご紹介いたします。

急性の食欲低下・活動性低下・嘔吐を呈し、消化器科を受診されました。

 1.治療の概要

・大きさ 小型

・犬種 マルチーズ×トイプードル

・年齢 4歳

・性別 避妊雌

・体重 3.7 kg

・症状 食欲低下、活動性低下、嘔吐

・病名 急性肝障害を伴う急性胃腸炎(疑い)

・検査 身体検査、血液検査、エコー検査

・処置 点滴、利胆剤、整腸剤

・費用 68,192円

2.実際の症例

2-1.来院時の状況

受診4日前に急性に発症した消化器徴候(食欲低下、活動性低下、嘔吐)。特に生活に変わったことはなく、ご家族に心当たりはありませんでした。全身状態が良くないため、早めの検査をご提案しました。

2-2.検査結果と治療方針

身体検査では特筆すべき異常はありませんでした。血液検査ではALT(肝臓の数値)の著しい上昇とCRP(炎症マーカー)の上昇を認めました。エコー検査では胃の運動性がやや低下していました。急性肝障害を伴う急性胃腸炎を疑い、ご家族に肝毒性のあるものが生活の中にないかと聞き進めていくと、室内でアロマを日常的に焚いており、観葉植物も生活空間にあることがわかりました。アロマを試験的に中止、観葉植物は別室に移動していただき、点滴を1日、内服(利胆剤・整腸剤)を1週間ほど行いました。

3.経過

翌日(発症して5日目)には消化器徴候は全て消失し、元の日常に戻れたようです。再診時には肝臓の数値と肝機能を再評価しました。ALTは804→151U/Lに下がり、CRPは基準範囲に改善していることが確認できました。肝機能に異常はありませんでした。引き続きアロマと観葉植物はワンちゃんの生活空間では控えていただき、治療を終了しました。

4.アロマ(精油)の犬猫に対する悪影響

アロマに使用されている「精油(植物から抽出されたオイル)」の中には、犬猫に対して非常に有毒なものがあります。今回のケースのように、特に肝臓に強い負担がかかり症状を起こしてしまうのです。

またこれらの精油成分の怖いところとして、誤飲のリスクだけでなく空気(例えば臭いを嗅ぐなど)や触れただけで皮膚から吸収してしまうなど、様々なケースでのリスクが考えられます。 さらに、これらの成分の中には犬猫たちがうまく分解できず、毒性の成分が肝臓に蓄積するケースも考えられます。よって日常的に使用を繰り返すことで、ある日突然症状が現れることもあります。

精油は私たちの生活にごく普通に使用される成分です。アロマディフューザーはもちろん、芳香剤やシャンプーなどの洗浄剤、化粧品など様々なものに含まれます。日常生活からなかなか切り離せない成分だからこそ、より一層の注意が必要です。

5.担当獣医師からの一言

今回は急性肝障害を疑う一例をご紹介しました。今回関連性があったかもしれない「アロマ」や「観葉植物」は犬猫にとって肝毒性のあるものがあり、知らずと体内に摂取蓄積し、体の不調を起こしていることは珍しくありません。我々の生活には見知らぬうちに動物たちに悪影響のあるものが潜んでいる可能性があります。生活環境を時々見直してみると良いでしょう。

KINS WITH 動物病院二子玉川院 杉本先生
消化器内科の治療を担当する先生
KINS WITH動物病院 二子玉川院
獣医師 杉本太一

東京都世田谷区 玉川3丁目15-13
EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230

二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。

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