カビを原因とした犬の皮膚病。原因と症状、治療について (犬猫の皮膚科医監修)

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雨が降った日、特に梅雨の時期には部屋の中がじめじめすることがありますよね。そんな時に注意したいのが「カビ」です。このカビによって、犬がアレルギー反応を起こし皮膚病を引き起こすことも。

今回は、カビによって引き起こされる皮膚病について紹介していきます。

犬がカビによって皮膚病になる?

カビは通常、少量であれば無害ですが、カビに対して過剰に免疫が反応してしまうと、痒みなどのアレルギー反応を引き起こす場合があります。犬が発症する最も一般的な皮膚疾患の1つにアトピー性皮膚炎があり、環境中の物質に対するアレルギー反応によって引き起こされます。飼い主様は、犬が花粉やダニに対する環境アレルギーを持っていることはご存知かもしれませんが、「カビ」についてはあまり知られていないのではないでしょうか。

カビに対してアレルギーがある場合、6月の梅雨時期から残暑の9月頃まで(地域により異なる)皮膚状態が悪化したり、鼻水などの呼吸器症状が出ることがあります。アレルギーが慢性化すると犬は不快感を示すようになり、痛みを伴うこともあります。治療をしないと症状が深刻な状態になることがあるため、獣医師による継続的な治療が必要です。

カビによる犬の皮膚病ってうつるの?

カビによって引き起こされる皮膚病には、犬猫ちゃんなどの動物やヒトへ感染するものとしないものがあります。

感染する皮膚病に、「皮膚糸状菌症」があります。これは、人や動物の皮膚に寄生する真菌が原因で、犬の場合、左右非対称性の皮膚症状、初期症状では、顔まわりや足先など、被毛が薄く、糸状菌(カビ)と直接接触しやすい末端部分に症状が出ることが多いです。

一方、感染しない皮膚病として、「マラセチア皮膚炎」があります。マラセチアは、ヒトにも犬にも存在する皮膚常在菌の一種で、脂質を栄養源に利用するカビ(酵母様真菌)です。基本的に、肌状態に問題がなければ悪さをすることは少ないですが、過剰な脂質で汚れが溜まってしまったり、生まれつきアトピー(環境アレルギー)素因を持ち肌バリア機能が落ちている場合などは、過剰に増えてしまい、皮膚炎を起こす要因になってしまいます。

皮膚疾患の有無に関わらず、定期的なトリミングやシャンプー・保湿により肌状態を良好に保つことが大切です。

カビは犬にどんな影響を与える?

カビによる皮膚病を起こしやすい時期

カビによる皮膚病の犬は、一般的に1年中皮膚の問題が発生します。もし飼い主様の犬がカビアレルギーの場合は、症状は環境中のカビやカビの胞子によって増減することはありますが、アレルゲンが花粉のように季節的なものではなく常に存在するため、年間を通じてカビによる皮膚病は発生します。このような皮膚病は生後6ヶ月から3歳までに発症しやすいとされていますが、生涯を通じてアレルギーを発症する可能性があります。

具体的にどんな症状が出るのか

カビアレルギーは、犬の免疫系がカビの胞子に反応して引き起こされてアレルギー反応が出るため、症状は人間の場合と似ています。

かゆみや掻痒感
犬が体をかいたり、舐めたりすることが多くなる場合があります。皮膚炎:皮膚が赤く腫れたり、湿疹や発疹ができたりすることがあります。

脱毛
カビアレルギーが重度になると、痒みが起きている部位を積極的に掻いてしまうことから、毛が抜け落ちたり、薄くなったりすることがあります。

呼吸器症状
アレルギーによってくしゃみや咳がでたり、重度の場合は呼吸が困難になることがあります。

カビによる皮膚病はどのように検査される?

カビによる皮膚病の症状には、似たような皮膚疾患が多く、病態に基づいた客観的診断法が確立されていないため、カビによる皮膚病以外の痒みを伴う皮膚疾患を除外することで診断していきます。このことを除外診断と言います。

皮膚疾患には細菌による感染症や外部寄生虫、ホルモン疾患(内分泌疾患)、食物アレルギーなどがあり、皮膚の検査だけでなく、血液検査や画像検査を行うこともあります。
補助的な検査として血液を利用する特殊なアレルギー検査(リンパ球反応検査やアレルゲン特異的IgE検査)があり、原因となるアレルゲンの推測に利用します。また、かゆみの上昇が季節的なものであるか否かも重要な判断指標です。

生まれつきアレルギーを起こしやすい犬が、アレルギー物質と接触することで引き起こされる、皮膚の強い痒みや炎症を伴う皮膚炎を犬アトピー性皮膚炎と呼び、カビアレルギーもこのアトピーに含まれます。

アトピーの診断は、簡単にできるものではなく、時間がかかります。様々な皮膚疾患の可能性を、問診による情報整理や皮膚検査(場合によっては血液検査やホルモン検査、画像検査なども)により、一つずつ消去していく、除外診断が必要になります。

カビによる皮膚病の治療は?

カビによって引き起こされる皮膚病の治療は、一度お薬を飲めば治療が完了する訳ではなく、多くの場合体調や環境のコントロールを維持し続ける必要があります。

環境療法

犬の生活環境内のカビを減らすことで、アレルギー症状を軽減できる可能性があります。しかし、カビはありとあらゆる場所に存在するため、完全に接触を避けることはできません。対策としては、以下が挙げられます。

  • 除湿や換気を行う
  • 定期的なシャンプーと保湿を行う
  • 体についたカビを落とす程度にお風呂(入浴剤入りのぬるま湯)にいれる
  • 布製のおもちゃや寝具を清潔にする

犬のカビによる皮膚病のその後は?

犬のカビアレルギーのその後は、基礎疾患の有無や免疫力、治療反応によって異なります。

治療が早期に開始されて適切な治療が行われた場合の多くは、症状が改善されます。ただし、治療が遅れ慢性化した場合、症状は長期間続く可能性があります。また、犬の免疫力が低下している場合、再発する可能性があります。

治療により皮膚状態が改善した後も、何もしないと炎症や痒みが再燃してしまうので、定期的なお薬やスキンケア、食事管理などにより、良好な皮膚状態を維持していく必要があります。

犬のアトピーは、治療反応や皮膚管理はみな同じとはいきません。季節やおうち環境、イベント事により、皮膚状態もよくなったり悪くなったりします。どうすればいいか悩む場合は、KINS WITH動物病院にご相談ください。皮膚を専門にしている先生と一緒に、「これならできるかも!」と思える治療法を一緒に見つけてみませんか?

担当医師のご紹介
立川院 日本獣医皮膚科学会認定医 木村友紀

2023年10月にKINS WITH動物病院グループの一員になりました、渡邊動物病院の皮膚科認定医の木村です。
皮膚のお悩みは、原因が複合的なことが多く、特定が難しいと言われています。足先に皮膚炎の症状が出ていても、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの可能性もあれば、足の関節が痛くて足を舐めて皮膚炎になっている可能性もあります。
私は皮膚科認定医でありながら、腫瘍認定医でもあります。日本獣医循環器学会や日本獣医歯科研究会に所属し、幅広い知見があります。皮膚に限らず、幅広い分野に精通しているからこそ、皮膚病の要因をあらゆる観点から分析し、根拠をもって適切な治療方針をご提案します。