犬の重度な歯周病の治療。口臭に悩むわんちゃんを、犬歯を残しながら抜歯

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重度の歯周病により強い口臭に悩む、口の中に穴があいてしまったわんちゃん

今回ご紹介するのは、重度の歯周病により口の中に穴があいてしまい、口腔と鼻腔が繋がってしまう『口腔鼻腔ろう』になってしまったわんちゃんの症例です。

このわんちゃんは

  • ・鼻から膿の鼻水がでる
  • ・強い口臭がある
  • ・カリカリのフードを食べない
  • ・口が痛そう

などの症状で来院されました。

全体的に歯が歯石に覆われ、歯肉の後退も大きく、歯科レントゲンでは歯を支える歯槽骨がとけてしまっていたため、重度の歯周病と診断しました。また、この症例においては口の中に穴があいてしまい、口腔と鼻腔が繋がってしまう『口腔鼻腔ろう』の症状が見られました。そこで歯の歯石除去、残すことができない歯の抜歯、そして『口腔鼻腔瘻(ろう)』の治療を実施しています。

【歯石取り】治療についてはこちらの記事をご覧ください。

【抜歯】治療についてはこちらの記事をご覧ください。

犬の重度な歯周病の治療について

一般的に「重度」と呼ばれる歯周病の場合、治療は残念ながら抜歯になってしまうケースが多いです。一方で、歯周病の進行は口腔内の各歯によって異なりますので、一部の歯に関しては再生治療をはじめとした特殊な治療により維持できるケースも存在します。

歯周病は自然治癒が難しい病気です。治療を行わずそのままにしていると、症状が進行していくだけでなく、わんちゃんにとっても大きな痛みと感染の原因となります。そのため、デンタルグッズで対応するのではなく必ず動物病院でわんちゃんの歯周病を治療することが不可欠です。

歯周病のわんちゃんの治療は、基本的には動物病院での歯のクリーニングや歯石を削ることによって改善していきますが、症状が悪化すると抜歯以外の治療がなくなってしまいます。

重度な歯周病の治療_歯石取り(スケーリングとポリッシング)

歯周病の原因は細菌の感染です。特に、わんちゃんの歯に歯石が付着している状態では歯周病の原因となる細菌もより付着しやすくなります。

そこで、まずは基本的な治療として細菌感染の原因となる歯石の除去を行います。専門の器具を使った歯石除去の処置を「スケーリング」といいます。

通常、スケーリングの処置には全身麻酔が必要です。麻酔後、まずは歯科レントゲンで歯根の状態を確認し、炎症の進行や組織の損傷の程度、必要な処置を判断します。専用の器具で歯の表面や歯周ポケットの歯石をきれいに取り除いたあと、最後に歯の表面をなめらかに磨いて仕上げます(この作業を「ポリッシング」と言います)。歯の表面の細かい傷をなめらかにすることで、歯石が付きやすくなるのを防ぐための処置です。

歯石を落とすことで歯に歯垢(細菌の塊)が付着しづらくなり、軽度な歯周病であればこれだけの処置で治る場合もあります。

今回の症例では歯を支える歯槽骨が溶けてしまっている箇所が多く、やむを得ず抜歯に至る歯が多い状態でした。しかし、一本一本の歯と骨の状態を歯科レントゲンで確認することにより、右下顎犬歯と切歯の部分はスケーリングのみの処置で止めることとなりました。

重度な歯周病の治療_抜歯

重度な歯周病の場合、まず治療法として挙げられるのが抜歯です。

歯石取り(スケーリング)だけの処置で済めば良いのですが、重度の歯周病になると歯の周辺組織に膿が溜まっていたり、骨が溶け始めているなど、患部が歯を支えることができない状態になっていることがあります。

この場合は残念ながら抜歯を選択せざるを得ない状態でした。

抜歯後4〜5日間、わんちゃんは抜歯部位に痛みを感じることがあります。しかしながら、わんちゃんは人間のように「痛い」と言うことができません。したがって、抜歯後は飼い主さまが、わんちゃんの様子を積極的に注意深く観察し、その痛みに気づいてあげる必要があります。

『口腔鼻腔瘻(ろう)』とは

『口腔鼻腔瘻』とは、主に上顎の犬歯を中心に歯周病が進行し、その歯を支える歯槽骨や顎骨が破壊されることで、口腔と鼻腔が繋がってしまっている状態のことです。

上顎の犬歯と鼻腔の境目は、非常に薄い骨で隔てられています。その犬歯の歯周病が進行し、骨が溶けてしまった結果、口腔と鼻腔を隔てている骨も溶かしてしまい、穴があいて繋がってしまうのです。

骨が溶けて穴があいて繋がってしまうことで、口の中で増殖した歯周病菌がが鼻腔まで届いてしまい、鼻腔の感染・炎症に波及します。黄色い膿の鼻水がでたり、鼻からの出血などの鼻炎の症状がみられます。

『口腔鼻腔瘻(ろう)』の治療について

口腔鼻腔瘻は犬歯以外の歯でも起こりますが、重度に歯周病が進行してしまっている場合は抜歯をし、炎症を起こしている歯肉や歯周組織を丁寧にすべて取り除き、適切なフラップデザインをもとに歯肉粘膜を縫合することで、あいてしまった穴を塞ぎ口腔と鼻腔を再び隔てます。

※全ての口腔鼻腔瘻を起こしている症例が抜歯が適応になるわけではなく、歯周病の進行の程度によっては特殊な治療によって歯を温存することも可能です

わんちゃんも痛みを感じている場合も

歯周病が重度に進行し、口腔鼻腔ろうが起きると、わんちゃん自身も歯がぐらつくことによって食べ物が食べづらかったり、大きな痛みや口の違和感を感じている場合があります。

また、この口腔鼻腔瘻は、外からは見えにくい犬歯の内側ですすんでいることもあり、一般的な鼻炎の治療(抗生物質や抗炎症薬)を行っても改善がみられない場合、その鼻炎の原因が歯周病が原因という症例にもよく遭遇します。

歯周病はお口に限ったトラブルではなく、重度に進行してしまうと、場合によっては口腔鼻腔ろうによって鼻炎を引き起こしてしまう疾患です。

定期的な歯科検診で早期発見・早期ケア・早期治療が大切なことはもちろんですが、重度の歯周病をかかえている子であっても、当院の歯科治療の経験豊富な獣医師が、一頭一頭その子にあったオーダーメイドの診療プランを一緒に考えてきますので、お気軽にご相談ください。

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