
食欲があるのに犬が下痢をするとき
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2022.11.30
今回ご紹介するのは、重度の歯周病により口の中に穴があいてしまい、口腔と鼻腔が繋がってしまう『口腔鼻腔ろう』になってしまったわんちゃんの症例です。
このわんちゃんは
などの症状で来院されました。
全体的に歯が歯石に覆われ、歯肉の後退も大きく、歯科レントゲンでは歯を支える歯槽骨がとけてしまっていたため、重度の歯周病と診断しました。この症例においては、歯の歯石除去、残すことができない歯の抜歯、そして『口腔鼻腔瘻(ろう)』の治療を行いました。
【歯石取り】治療についてはこちらの記事をご覧ください。
【抜歯】治療についてはこちらの記事をご覧ください。
『口腔鼻腔瘻』とは、主に上顎の犬歯を中心に歯周病が進行し、その歯を支える歯槽骨や顎骨が破壊されることで、口腔と鼻腔が繋がってしまっている状態のことです。
上顎の犬歯と鼻腔の境目は、非常に薄い骨で隔てられています。その犬歯の歯周病が進行し、骨が溶けてしまった結果、口腔と鼻腔を隔てている骨も溶かしてしまい、穴があいて繋がってしまうのです。
骨が溶けて穴があいて繋がってしまうことで、口の中で増殖した歯周病菌がが鼻腔まで届いてしまい、鼻腔の感染・炎症に波及します。黄色い膿の鼻水がでたり、鼻からの出血などの鼻炎の症状がみられます。
口腔鼻腔瘻は犬歯以外の歯でも起こりますが、重度に歯周病が進行してしまっている場合は抜歯をし、炎症を起こしている歯肉や歯周組織を丁寧にすべて取り除き、適切なフラップデザインをもとに歯肉粘膜を縫合することで、あいてしまった穴を塞ぎ口腔と鼻腔を再び隔てます。
※全ての口腔鼻腔瘻を起こしている症例が抜歯が適応になるわけではなく、歯周病の進行の程度によっては特殊な治療によって歯を温存することも可能です
歯周病が重度に進行し、口腔鼻腔ろうが起きると、わんちゃん自身も歯がぐらつくことによって食べ物が食べづらかったり、大きな痛みや口の違和感を感じている場合があります。
また、この口腔鼻腔瘻は、外からは見えにくい犬歯の内側ですすんでいることもあり、一般的な鼻炎の治療(抗生物質や抗炎症薬)を行っても改善がみられない場合、その鼻炎の原因が歯周病が原因という症例にもよく遭遇します。
歯周病はお口に限ったトラブルではなく、重度に進行してしまうと、場合によっては口腔鼻腔ろうによって鼻炎を引き起こしてしまう疾患です。
定期的な歯科検診で早期発見・早期ケア・早期治療が大切なことはもちろんですが、重度の歯周病をかかえている子であっても、当院の歯科治療の経験豊富な獣医師が、一頭一頭その子にあったオーダーメイドの診療プランを一緒に考えてきますので、お気軽にご相談ください。