犬の抜歯が必要な理由と抜歯後のケアについて

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わんちゃんの歯の健康状態によっては、抜歯をしなければならない場合があるかもしれません。例えば、歯周病や歯が折れている場合なども抜歯が必要になることがあります。今回はわんちゃんの抜歯が必要な理由、そして抜歯後のケアについてご紹介します。

抜歯が必要な理由

わんちゃんの抜歯が必要になる場合は、どんな時でしょうか。歯周病、怪我や病気などわんちゃんに抜歯が必要になる理由は様々です。ここでは抜歯が必要な理由を4つ挙げてお話ししていきます。

歯周病の場合

わんちゃんの抜歯が必要になる理由のもっとも多い理由は、歯周病です。歯周病は、口腔内の細菌が集まって出来る歯垢が原因となって発症します。歯を支えている骨や歯肉、歯を固定する役割を持つ歯周靭帯が細菌に感染することで発症します。細菌感染が悪化するとより深い組織にも広がり、痛みを伴った膿瘍(のうよう)と呼ばれる膿が溜まった状態になってしまいます。

歯周病を放置し、感染が進行してしまうと抜歯せざるを得ない状況に陥ります。歯を残し、健康的な生活を長く続けるためには、獣医師による歯の定期的な診察を受けることが大切です。

事故や病気の場合

①歯が折れた

事故や何らかの理由でわんちゃんの歯が折れた際、抜歯が必要になることがあるかもしれません。折れた歯が健康な歯の場合、折れたことで歯の神経がむき出しになり痛みを引き起こすことがありますが、折れた歯の抜歯は必要ない場合もあります。多くの場合、「根管治療」と呼ばれるいわゆる「神経を抜く」という処置により歯を残す治療が行われます。

一方、歯や歯の周囲の組織に異常があり、修復が不可能な場合や歯根が折れている場合などは、抜歯を考慮する必要があるでしょう。

②乳歯が自然に抜けない

乳歯が自然に抜けない場合は、健康な永久歯が生えてくるよう乳歯を抜く必要があります。赤ちゃんのわんちゃんを飼い始めたら、お口の中を見せてくれるようトレーニングしておくことも大切です。早い段階からわんちゃんのお口の中をチェックできれば、お口の中の異常にいち早く気づくことができます。

③口の中に外傷がある

口の中の骨が折れた時、抜歯が必要な場合があります。

④口の中に腫瘍がある

腫瘍の治療には、腫瘍近くの歯の抜歯が必要になることがあります。

⑤虫歯

虫歯がある場合にも抜歯が必要になることがありますが、虫歯になるわんちゃんは全体の10%に過ぎません。人が受ける処置同様に、抜歯後は空いた穴を塞ぐことで治療できます。

抜歯の手術方法

抜歯が必要な主な理由を5つご紹介しました。では、実際にわんちゃんの抜歯はどのように行われるのでしょうか。その手順について見ていきましょう。

①すべての歯と歯茎をクリーニングする

②患部、口全体を写真とレントゲンで撮影し、歯と周辺組織の状態を確認する

③抜歯の必要がある歯と残せる歯を確認する

④健康診断ののち、麻酔を行う

⑤近くの組織に、抜歯後の穴を塞ぐための蓋(フラップ)を作る

⑥歯茎に埋まっている歯根を分離するために削り、付着している靭帯を削る

⑦歯と歯茎の間をクリーニングする

⑧X線撮影を行い、患部を確認する

⑨フラップを縫い合わせる

以上のような手順でわんちゃんの抜歯手術は行われます。しかし、わんちゃんのお口の中や歯の状態はそれぞれに異なりますので、上に挙げた手順とは別の方法で行われることもあり、簡単に抜歯できることもあれば、1時間以上の手術になることもあるでしょう。獣医師はもちろん、飼い主さまもわんちゃんの歯の状態を把握し、ある程度の手順や時間の目安がわかると、安心してわんちゃんを待つことができるかもしれません。手順につきましては丁寧にご案内させていただきます。

愛犬の抜歯手術に不安を感じている飼い主さまもいらっしゃるのではないでしょうか。
東京の二子玉川にあるKINS WITH動物病院では、事前の入念な検査をした上でなるべく歯を残す治療や再生治療にも力を入れています。
愛犬の歯の症状に対して最適な治療法をお探しの方は歯科診療に特化したKINS WITH動物病院までご相談ください。

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抜歯後のわんちゃんへの影響とアフターケア

わんちゃんの抜歯手術を終えた後、痛みや合併症はあるのか。また、食事や普段の生活の中でどのようなケアが必要なのか、飼い主さまにとってはとても気になることだと思います。次は、抜歯後のわんちゃんへの影響と抜歯後のケアについてご紹介していきます。抜歯をしなければならなくなった場合のアフターケアに役立てていただけると幸いです。

痛みについて

抜歯後4〜5日間、わんちゃんは抜歯部位に痛みを感じることがあります。しかしながら、わんちゃんは人間のように「痛い」と言うことができません。したがって、抜歯後は飼い主さまが、わんちゃんの様子を積極的に注意深く観察し、その痛みに気づいてあげる必要があります。ここでは、飼い主さまが気づいてあげられるわんちゃんの痛みを現す症状をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

抜歯後、わんちゃんに現れる痛みの症状

①泣く・激しく泣く

②よだれが出る

③手で口を拭うような行為

④ごはんを食べない

⑤無気力で動きが鈍い、だるそう

以上のような症状が見られます。これらの症状の一部は、鎮痛剤などのお薬の影響である可能性もありますが、獣医師の指示通りにお薬を投与していてこのような症状が現われた場合は、獣医師に相談し対処法を確認するようにしましょう。

当院ではわんちゃんにとっての痛みや不快感を取り除くために通常は経口での鎮痛剤を使用し、加えて当院では抗生物質を投与しています。

上記の症状の他にも、何かおかしいなと感じる行動や様子、症状が見られる場合は獣医師に相談しましょう。

合併症

抜歯後は、合併症を起こす可能性があることを知っておくとよいかもしれません。ある程度の腫れ、痛み、少量の出血は抜歯後に見られる典型的な症状です。しかし、これらの症状には、合併症の可能性のある症状も含まれますので、抜歯後はわんちゃんの様子を注意深く見てあげることをおすすめします。わんちゃんが強い痛みを感じているように見える、腫れが大きい、出血量が多い、よだれが増える、食事や行動に急な変化が見られた場合などは、早急に獣医師に相談しましょう。

食事

抜歯後のわんちゃんは、抜歯後の痛みの他に、胃のむかつきが生じたり過敏な状態になることがあります。そのため、獣医師からのアドバイスをきちんと守り、わんちゃんに適切な食事を与えることが大切です。抜歯後のお口の中の状態はわんちゃんによって様々ですが、それぞれの状態に合わせて、ウェットフードなどの柔らかいごはんを提案するケースが多いです。

抜歯後4〜5日間は痛みがあるので、準備したご飯やお水に近づかないことがあるかもしれません。しかし、通常であれば抜歯後24時間以内にはお腹が空いて食欲も戻ってきますので、獣医師のアドバイスを守り、様子を見ながら適切な食事を準備してあげるとよいでしょう。

行動

抜歯後、わんちゃんが自宅に戻った際まだ麻酔から完全に覚めず眠気でぼんやりしているかもしれません。わんちゃんの活動量は、2〜3日程度で回復しますが、抜歯後の傷口の回復には通常2週間程度必要であるとされています。傷口が完全に治るまでは、飼い主さまは焦らずわんちゃんの様子を見てあげることが大切です。また抜歯後初期の段階では、安全のため運動は軽めに行い、のんびりとした散歩や飼い主さまが監視できる範囲で遊んであげることが望ましいでしょう。

また、噛むおもちゃをわんちゃんの手の届かない場所に保管しておくことをおすすめします。わんちゃんは退屈かもしれませんが硬い噛むおもちゃは避け、傷口がなるべく早く治るよう飼い主さまも一緒に頑張りましょう。

抜歯後のわんちゃんの不快感やストレスをできるだけ軽減し、スムーズにわんちゃんの回復が進むよう飼い主さまがサポートできると、わんちゃんもきっと安心できるはずです。

抜歯の予防について

ここまで、わんちゃんに抜歯が必要な理由、抜歯の手術方法や抜歯後のわんちゃんへの影響、アフターケアについてご紹介してきました。手術には麻酔が必要ですし、わんちゃんにとっては痛みも伴い、その痛みは抜歯後にも少しの期間続きます。できれば抜歯を予防してあげたいと願う飼い主さまも多くいらっしゃるのではないでしょうか。

最後は、わんちゃんの抜歯を予防する方法についてお話しします。

「抜歯」と一言で言っても、理由は歯周病であったり外傷や病気、歯が折れた場合の他、様々にあるとご紹介しました。よって、直接的に抜歯を予防するというよりも、抜歯に至らないための予防が必要です。歯周病であれば歯周病の予防、外傷や病気、歯が折れる、などであればその予防が、最終的に抜歯の予防につながると言えるでしょう。

歯周病の原因は、歯と歯茎の間に歯垢がたまり、歯を支えている骨や歯肉、歯周靭帯、歯肉組織などが細菌によって壊されることで発症します。その歯周病を予防するには、動物病院での定期的な歯石の除去と、毎日の歯磨きでわんちゃんのお口の中を清潔に保つことが非常に大切です。毎日の歯磨きは、わんちゃんの抜歯の予防に繋がるだけでなく、お口の中のチェックや健康を維持することにも繋がりますので、ぜひ取り入れていきましょう。

また、歯垢や歯石の蓄積を減らすのに役立つよう配合されたドッグフードなどもありますので、定期検診の際に獣医師に相談してみるのも良いかもしれません。

外傷や歯が折れたことによる抜歯を予防するには、一度、わんちゃんが遊んでいる普段のおもちゃを見直してみることも大切です。飼い主さまは、わんちゃんの歯を傷つけない安全な噛むおもちゃを選び、骨などの硬いおもちゃは与えないように気を付ける必要があります。

わんちゃんの抜歯を予防するには、普段からのお口のケアと与えるおもちゃにも注意することが大切です。できるだけ、わんちゃんが痛い思いをしなくてもいいように、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

担当医師のご紹介
二子玉川院 院長 岡田 純一

KINS WITH動物病院、院長の岡田純一です。当院では愛犬さん、愛猫さん、ご家族の抱えるトラブルに対し、症状をなくすことはもちろん、なるべく根本から解決することを目指しています。
高性能な機器を用いた安全で正確な処置はもちろん、常在菌に着目したアプローチや、お家での生活に対するアドバイスまで丁寧に対応致します。
もちろん手技の技術を向上させるための鍛錬も日々欠かさず行なっております。
愛犬さん、愛猫さんとご家族が元気いっぱいで幸せな時間をなるべく長く過ごすお手伝いができるよう、努めて参ります。よろしくお願い致します。