
食欲があるのに犬が下痢をするとき
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犬の歯周病とは、歯肉、骨、その他の歯の構造に悪影響を及ぼす口の中の細菌によって引き起こされる進行性の病気です。歯周病の中でも、主に初期段階を「歯肉炎」、症状が悪化すると「歯周炎」と一般的に呼ばれています。歯周病は歯茎の下の部分で起こるため、多くの場合は病気が進行するまで気づかないことが多いです。
*歯肉炎
歯ぐきの炎症のことをいい、歯周病のなかでも初期段階の状態のこと。主に口の中の細菌のかたまりが歯肉につくことによって引き起こされるため、主に歯みがきを怠ることによって発症する。
*歯周炎(歯槽膿漏)
歯肉炎が進行し、歯槽骨(顎の骨)など歯の周囲の組織まで炎症が波及した状態のこと。炎症により歯槽骨が破壊されてしまうため、歯を支えることができなくなり、歯がグラグラしたり、抜けてしまう場合がある。一度破壊された歯槽骨の再生は難しいため、歯周炎まで進行しないよう歯磨きを行い、定期的に口腔ケアを行うことが重要。
歯周病は、わんちゃんの口の中の細菌が歯垢と呼ばれる物質を形成し、それが歯の表面に付着することから始まり、唾液の中のミネラルが歯垢を硬化させて歯石にし、歯にしっかりと付着します。だいたい2~3才になるまでに歯石が現れることが多いです。
全てのわんちゃんは歯周病になりやすいですが、小型犬ほど歯周病になりやすい傾向があります。歯が小さいほど食べかすが溜まりやすくなり、歯垢・歯石が蓄積しやすいためです。また、小型犬はそれぞれの歯を支える骨量が少ないため、歯周炎により歯が抜けてしまう可能性が高くなります。
ではどういった症状が見られるのでしょうか?
わんちゃんの歯周病の症状は軽度なものから重度のものまで大きく異なります。一見、綺麗な歯だと思っていてもレントゲンと歯ぐきの検査を受けた後にはすでに深刻な状態であることもよくあるようです。
歯周病のわんちゃんの症状はステージが4段階(4が一番深刻)あり、冒頭でも触れた通り初期段階で歯肉炎となりステージが上がるにつれて歯周炎(歯槽膿漏)を引き起こします。
歯肉炎または歯茎の炎症がみられるが、多くの場合は明らかな症状がないため歯周病に気づくことはほとんどない。
症状
・歯ぐきが少し赤みがかったりふっくらしてくる
・歯磨き中や咀嚼中にやや出血する
初期の歯周炎で歯をささえる支持構造が少し弱まる。歯磨きをしているときに歯周ポケットと言われる歯と歯肉部分に溝ができ、歯垢が溜まっていく。
症状
・歯茎が赤くなったり腫れたりする
・歯磨き中や咀嚼中に出血する
・口のにおいがきつくなる
・歯ぐきがやせていく
歯の支持構造の25~50%が失われた状態です。。レントゲン写真では骨量の減少が見られ大きな歯周ポケットが見られるようになります。歯肉炎がさらに進み、歯周炎(または歯槽膿漏)を引き起こす状態。
症状
・歯茎が赤くなったり腫れたりする
・歯磨き中や咀嚼中に出血する
・口のにおいがきつくなる
・歯ぐきがやせてくる
・歯がぐらぐらしている
歯の支持構造が50%以上失われた状態です。、レントゲン写真や歯周ポケットの深さを測る歯周プロービングで診断する。
症状
・歯がぐらぐらしている
・歯が抜ける
・歯の周りから膿が出てくる
ここまでを見てみると、初期段階では少しの腫れと小さな歯周ポケットができる程度のため、定期的に検診に行っていないわんちゃんの場合は症状が分かりづらいようです。歯肉炎が進行すると、歯ぐきがやせて歯を支えられなくなり抜けてしまうことがあります。そうすると食事に支障が出てきたり出血した場所から細菌が感染し合併症を引き起こすことがあるようです。
歯周病のステージごとの治療をご紹介します。主にクリーニングや歯石取りが必要な場合は、麻酔下によって治療されます。
ステージ1
わんちゃんの歯みがきを毎日継続する必要があります。もし正しい磨き方がわからない場合はケア用品を含めて丁寧な磨き方を獣医師に指導してもらうことができます。
ステージ2(軽度歯周炎)
ステージ2の場合は、動物病院で歯のクリーニングをします。当院では歯肉縁下の歯石を顕微鏡で確認しながら徹底的に除去し、治療を行います。抗生剤のジェルなどを塗布する場合もあります。
ステージ3(中程度の歯周炎(歯槽膿漏))
歯石と歯垢の除去だけでなく、必要に応じて再生治療や歯肉の縫合処置などを行います。
ステージ4(重度の歯周炎(歯槽膿漏))
治療は残念ながら抜歯になってしまうケースが多いです。一方で、一部の歯に関しては再生治療をはじめとした特殊な治療により維持できるケースも存在します。治療を行わずそのままにしていると大きな痛みと感染の原因となります。そのため、デンタルグッズで対応するのではなく必ず動物病院でわんちゃんの歯周病を治療することが不可欠です。麻酔下での手術が必要となります。
歯周病のわんちゃんの治療は、基本的には動物病院での歯のクリーニングや歯石を削ることによって改善していきますが、症状が悪化すると抜歯以外の治療がなくなってしまいます。治療費もステージによって異なりますが、歯周炎の場合は動物病院でかかる費用以外でも感染の広がりを抑えたり合併症を未然に防ぐためのおくすりを処方する場合があるため、治療費は高くなる傾向があります。
歯周病を治療せずに放置した場合は、わんちゃんに苦痛を与えるだけではなく全身に悪影響を与える可能性があります。
歯周病が進行すると歯を支えている骨が破壊されるため、あごを骨折する可能性があります。特に小型のわんちゃんはあごの骨に対して、歯が大きく、歯の根元があごの骨の端に非常に近いため、骨折のリスクが高いことがあります。
わんちゃんの奥歯は目のすぐ下にあるため、歯周病によって起こる感染症は目の問題につながる可能性あり。早く処置をしないと視力を失ってしまうことがあります。
わんちゃんの歯周病は、歯から離れた臓器にも悪影響を与えることも。これは、口の中の悪玉菌が血液に入ることにより全身に広がり、慢性腎臓病や肝臓病のリスクが高まります。
わんちゃんの歯周病を予防するためにおうちでできる最善の方法は、毎日歯を磨くことですが少なくとも週に3回行うことによって効果があります。子犬の場合は、生後6ヶ月頃に大人の歯が生えてきたら、すぐにブラッシングをする必要があります。歯が成長途中の時期に子犬の歯を磨くことは避けましょう。成長期は歯に触る練習をしておくと歯磨き練習がスムーズに始められます。
わんちゃんの歯垢と歯肉炎を減らすのに役立つものにデンタルジェルがあります。悩まされることが多い歯周病などのお口のトラブルは、悪玉菌が増えすぎた結果引き起こされますが実は善玉菌も存在しています。デンタルジェルによって、歯の汚れを取り除くだけではなく、乳酸菌などの菌を取り入れることによってお口の中の菌のバランスを整えることができます。
おうちで何らかの形で毎日のデンタルケアを受けることに加えて、歯周病の症状が現れる前に専門的なデンタルクリーニングを受け始める必要があります。わんちゃんの歯を残すために治療から予防までの最適な提案を獣医師にしてもらいましょう。KINS WITH動物病院では歯周病や歯石、口内炎などの口腔内トラブルへの治療・予防、歯周外科、歯周組織の再生療法といった、幅広い歯科治療を行っています。なるべく少ない回数で治療を行うために、都内でも導入件数が少ない高性能顕微鏡を導入し口の中の菌を検査することで、現状を正確に把握することが可能です。
わんちゃんの歯周病は、治療によって回復するまでの時間は変わります。わんちゃんがクリーニングやスケーリング(歯石を削ること)を受けた場合、通常は翌日までに戻ります。たとえ抜歯した場合でも翌日には元気になりますが、抜歯した部分が治るまでに約1週間かかります。
ステージ3およびステージ4の歯周病のわんちゃんには鎮痛剤や抗炎症剤、抗生物質を一定期間投与し続ける必要があるため、飼い主さまのご協力が不可欠です。
わんちゃんの歯ぐきの腫れや炎症、歯が抜けたなどの歯周病の症状を示している場合は、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。