食欲があるのに犬が下痢をするとき
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「愛犬がずっと体を掻いている…」
わんちゃんが体を掻く様子は、一緒に暮らす中で日常的に目にする光景だと思います。
しかし、異常にかゆそうにしていたり、わんちゃんの皮膚に異変が生じていたりする場合は、病気の可能性もあるので注意が必要です。
もしかしたら、人にもうつる皮膚病「疥癬(かいせん)」に感染しているかもしれません。
今回は、疥癬の症状や治療、予防法などについて解説します。
疥癬とは、イヌの皮膚に穴を掘って寄生する「ヒゼンダニ」によって引き起こされる皮膚病です。
イヌに付くダニと言えば、真っ先にマダニが思い浮かぶかもしれません。しかし、目に見えるマダニとは違い、ヒゼンダニの大きさは0.2〜0.4ミリと非常に小さく、肉眼で確認することはできません。
成虫のヒゼンダニはイヌの皮膚に約3〜4週間生息すると言われています。メスは皮膚に潜り込み、そこで卵を産み付けます。卵は3〜10日で幼虫に孵化し、皮膚表面に移動して成長します。そしてまた成虫が交尾し、このサイクルを繰り返しながら繁殖していくのです。
このダニやその卵、分泌物などが皮膚にアレルギー反応を引き起こし、わんちゃんに激しいかゆみを引き起こす病気が疥癬です。
主な感染の原因は、キツネやイヌなどの感染した動物と直接接触することです。また、感染した動物から飛び散ったフケなどを介して感染することもあります。
野生動物や野犬が生息する地域での屋外飼育はもちろん、多くのわんちゃんと触れ合うドッグランやペットショップ、トリミングサロン、保護施設などを利用する際にも注意が必要です。
疥癬の主な症状として、激しいかゆみや皮膚の炎症がみられます。ダニは毛のない部分の皮膚を好むので、最初は耳や脇、肘、腹などの部位に症状が表れることが多いです。
加えて、わんちゃんがかゆみで体を引っかいたりかじったりすることで毛が抜け、炎症を起こした皮膚がかさぶたやうろこ状になってしまいます。
症状が重くなると、夜も眠れないほどのかゆみや不快感がわんちゃんにストレスを与え、食欲減退や体重減少、うつ病のような症状がみられることもあります。
疥癬は、人に伝染する可能性がある病気です。
しかし、イヌに寄生するダニは人間の皮膚上では繁殖できません。そのため、人に感染したとしても、症状は一過性で終わるとされています。ただ、ダニが死ぬまでの数日間は激しいかゆみや発疹を引き起こすため、治療が必要になることがあります。
愛犬が疥癬になってしまった時や、疥癬が疑われる動物と接触した時は、手や服などをしっかり消毒し、なるべく感染しないよう対策を取りましょう。
重度のかゆみや脱毛、うろこ状の皮膚などの症状が突然現れた場合は、疥癬の疑いがあります。なるべく早く獣医師の先生に診てもらいましょう。
動物病院では、皮膚の表面を一部削り取り、顕微鏡で検査します。検体内にヒゼンダニが見つかれば診断が確定するのですが、ダニは非常に小さい上、皮膚に潜り込んでいるため発見しづらく、感染していても検出されないことがあります。
そのため、診断が確定できなくても症状などから推定し、まず殺ダニ剤の投与などの治療を進めながら経過を観察する方法が取られることもあります。
疥癬は、診断で難航することはありますが、治療自体はそれほど難しいものではありません。
さまざまな注射薬や内服薬、外用薬などの選択肢があり、多くの薬ではダニの駆除と同時に予防の効果も期待できます。
なお、疥癬の治療に使われる一部の薬剤は、インターネットなどでも購入することができます。しかし、自己判断での薬の投与は重大な副作用につながる危険性があるため、必ず獣医さんの診察を受けるようにしましょう。
ヒゼンダニの駆除には、「アフォキソラネル」「サロラネル」「フルララネル」などのさまざまな殺ダニ剤が用いられます。
これらの薬は、フィラリア症に感染しているわんちゃんに投与すると、急性フィラリア症やショック症状などの重大な副作用を引き起こす危険があります。そのため、投薬前にはフィラリアに感染していないかを確認する血液検査が必要です。
投与方法は経口薬や注射薬、滴下剤などさまざまで、わんちゃんの状態などに合わせて獣医さんが判断します。
首や肩甲骨周辺に、局所的に薬剤を垂らす方法です。治療費用が比較的安く、副作用の危険性も少ないなどのメリットがあります。
液体、錠剤などの形で処方されます。
多くの場合は1度の投薬で効果がみられ、1か月ほどで完治すると言われています。
ただ、疥癬の重症度によっても回復にかかる期間は異なります。重症化していた場合は、かゆみが完全に解消して皮膚が治癒し始めるまでに、数か月かかることもあります。
また、皮膚上のダニが駆除されて症状が一時的に良くなった後も、産み付けられた卵が残っている可能性があります。そのため、完治までには複数回にわたる治療や投薬が必要となりますので、注意してください。
疥癬に有効な薬剤の一つであるイベルメクチンですが、ボーダーコリーやシェットランドシープドッグ、オーストラリアンシェパードなどの一部の犬種に投与してしまうと、重篤な副作用を引き起こす危険性があります。
繰り返しにはなりますが、わんちゃんへの投薬は自己判断では行わず、必ず獣医師さんの判断を仰ぎましょう。
それでは、もし愛犬が疥癬になってしまったら、自宅ではどのように対応すればよいのでしょうか。
感染の拡大と再感染を防ぐために、完治するまで他のペットや人間からなるべく隔離して過ごす必要があります。また、わんちゃんのベッドやおもちゃ、首輪などは、薄めた漂白剤で消毒するか、新しいものに交換しましょう。
ヒゼンダニはイヌの体から離れると長くは生きられません。しかし、飛び散ったフケなどから間接的に感染することもあるので、こまめに部屋を掃除することをおすすめします。
投薬治療と併せて、薬用シャンプーなどでわんちゃんの皮膚を清潔に保ってあげることも、良い効果が期待できます。シャンプーをする際には、皮膚を強く擦ったりはがれかけた皮膚を取ったりはせず、優しく洗ってあげてください。
ただ、わんちゃんの皮膚のダメージが大きかったりシャンプーの洗浄効果が強すぎたりすると、逆効果になってしまうこともあります。 獣医さんに相談し、わんちゃんの状態を見ながら行いましょう。
疥癬は、感染した動物との接触によって伝染します。
ドッグランやペットショップ、トリミングサロン、保護施設など、多くの動物が接触する場は感染のリスクがあります。そのような場所を利用した後は、わんちゃんの様子を注意深く観察しましょう。
疥癬は、衛生状態が悪いからといって感染するものではありません。しかし、免疫力の弱さによって発症リスクが高まる可能性があります。特に子犬や老犬は、健康な成犬とくらべて感染のリスクが高いと言われます。常にわんちゃんの飼育環境を清潔にし、健康状態を保つことが大切です。
また、複数のわんちゃんがいるご家庭では、一匹でも感染が疑われたり診断されたりした場合は、一緒に暮らしているすべてのわんちゃんを治療する必要があります。
疥癬のかゆみはわんちゃんに大きなストレスを与えてしまいます。症状が重くなる前に、少しでも早く治してあげたいですよね。
疥癬は、適切な治療を受ければしっかり治すことができる病気です。わんちゃんの様子がおかしいと感じたら、迷わずに受診しましょう。
少しでも気になることがあれば、放置せずに一度当院にご相談くださいね。
皮膚のお悩みの原因は、複合的なことが多く、特定が難しいことがあります。そこで当院では、皮膚病理検査やアレルギー検査など皮膚の専門的な検査を行うことで、根拠を持って治療方針をご提示いたします。
多数の皮膚科診療経験があるため、適切な診断ができ、皮膚病に悩む愛犬・愛猫に最適な治療法をご提案いたします。