【犬の子宮蓄膿症】原因と治療について

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「トイレの回数が増えてきた…?」

「おなかが張っているようにみえる…」

もしかすると子宮蓄膿症の可能性があります。そして、すぐに獣医師の元へ連れて行かないと命の危険につながる可能性も否定できません。この記事では、子宮蓄膿症についての症状や治療についてご紹介します。

犬の子宮蓄膿症の概要と原因

子宮蓄膿症の概要と症状

子宮蓄膿症とは、ホルモンの変化によって起こるわんちゃんの子宮の感染症です。主に高齢のわんちゃんや避妊手術をしていないメスのわんちゃんが発症しやすいといわれています。子宮蓄膿症は一般的に大腸菌が原因で発症し、ほとんどの場合は発情出血(発情前期~発情中期に起きる隠部からの出血のこと)4~8週間後に発生します。

子宮蓄膿症のわんちゃんが見せる症状には、さまざまなものがあります。

  • いつもより水をたくさん飲む
  • 普段よりもおしっこをする
  • 嘔吐をする
  • 外陰部や膣から膿が漏れ出している
  • おなかが張っている
  • 衰弱している/元気がない

これらのいずれかに気づいた場合は、獣医師に連れて行ってあげましょう。

子宮蓄膿症の原因

わんちゃんの子宮蓄膿症の原因は、発情期のホルモンの変化と細菌の感染です。子宮蓄膿症は治療せずに放置をすると命に関わることもありますので、発情出血の後1~2ヶ月は病気のリスクを視野に入れつつ、わんちゃんの体調に木を配ることが必要です。

子宮蓄膿症は、子宮から膣に膿が出る開放型と、膿が出ずに子宮がどんどん大きくなる閉鎖型に分類されます。どちらも緊急の対応が必要ですが、特に閉鎖型の場合は子宮が破裂する可能性があるため、すぐに手術をする必要があります。

子宮蓄膿症に気づくまで _ 自己診断とわんちゃんの変化

わんちゃんが子宮蓄膿症の場合、ご家族の皆さまはどのようにして気づいてあげられるのでしょうか?

この場合は、子宮頸部(子宮の下部にあって膣と繋がっている部分)が開いているかどうかによって異なります。

開放型
膿が子宮から膣を通って外部に排出される。しっぽや毛、わんちゃんの寝具などに付着している場合がある。症状として、発熱や食欲不振、うつ状態などがみられる場合がある

閉鎖型
子宮内の膿を外に排出することができない。膿は子宮に溜まりつづけるため、お腹が膨らんでくる。最悪の場合、子宮が破裂する可能性があり緊急手術が必要。食欲不振だけではなく、元気がなかったり嘔吐や下痢の症状がみられる。

また、両方に共通する症状として多飲多尿があります。これは膿の中で発生した毒素が、腎臓に大きな影響を及ぼすからです。具体的にいうと、血液内に毒素がある影響で腎臓が通常の水分量では血液をろ過しきれずに、多くの水分を必要とするからです。そのため、わんちゃんはたくさんの水分を飲み、たくさんのおしっこをするようになります。

子宮蓄膿症の予防

わんちゃんの子宮蓄膿症の最善かつ唯一の予防策は、避妊手術を行うことです。この手術を行うと、子宮蓄膿症の原因となって起こる子宮の変化や発情周期による発症リスクをなくすことができます。子宮に異常のあるわんちゃんを手術するよりも、子宮が健康な状態で去勢手術するほうが安全でかつ費用も安く済みます。

子宮蓄膿症の治療 _ 手術

子宮蓄膿症の好ましい治療方法は、卵巣子宮摘出術(避妊手術)を行い、感染した子宮と卵巣を取り除くことです。卵巣をそのままにしておくと、子宮蓄膿症を発症しやすくなるホルモンを作り続けてしまうため、卵巣と子宮の両方を取り除く必要があります。

また、どうしても子宮や卵巣を失いたくない(繁殖機能を保ちたい)場合や手術ができない健康状態のわんちゃんに関しては注射に夜投薬が行われるケースもあります。

しかし、残念ながらこちらの注射薬は現在日本では販売されていないため、当院では基本的に外科治療を推奨しております。

子宮蓄膿症になったわんちゃんは、手術や投薬をせずに完治する可能性は極めて低いです。治療が迅速に行われなければ、多くの場合は命に関わる病気です。

特に子宮頸部が閉じている「閉鎖型」の場合は、子宮が破裂し腹腔内に細菌が感染することで腹膜炎を起こしたり、毒素が血液内に吸収されて臓器に大きな影響を与える敗血症などの合併症を引き起こす可能性があるため、迅速な治療をすることが重要になってきます。わんちゃんにとって何がベストなのかを獣医師に相談してみるといいでしょう。

家での過ごし方

手術後の子宮蓄膿症のわんちゃんと自宅で過ごすときに一番大事なのは、傷口をしっかり保護することです。その対策として、手術で縫った部分を傷つけないように落ち着かせたり、エリザベスカラーをつけてわんちゃんが傷口を舐めないようにしましょう。また、処方された全ての薬を適切に与えることも重要です。これらの対策をした上で、万が一わんちゃんが痛そうにしている場合は獣医師に相談しましょう。

子宮蓄膿症に罹ったわんちゃんのその後

子宮蓄膿症のわんちゃんは、治療が早ければ早いほど、回復の可能性が高くなります。残念ながら、わんちゃんが高齢だったり子宮蓄膿症に気づくのが遅くなってしまった場合は、回復の可能性は低くなります。

このことから、少しでも「わんちゃんの様子がおかしいな…」と思ったら、まずは獣医師に連れていくことをおすすめします。迅速な診断と治療、そして適切なフォローアップを受けてわんちゃんの健康状態を常に観察することが大事になってきます。

ご家族に寄り添うかかりつけ医としての一般診療

健康診断、予防接種、去勢避妊手術はもちろん、内科・ 消化器等の幅広い診療、終末期診療まで、たくさんのお悩みに寄り添いながら診察を行います。
愛犬・愛猫だけでなく、ご家族にも安心してお越しいただけるよう、基本的にはご家族の前で検査を行い、丁寧にお話を伺いながら診察を進めていきます。そのため、超音波検査も診察室の中に設置しております。
さらに、 血液検査機器を導入し、外部機関への依頼では数日かかる検査を、その場で見る事ができ、素早く診断、治療することへとつなげていきます。