
食欲があるのに犬が下痢をするとき
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消化器内科では食べ物の消化に関わる全ての臓器、具体的には胃腸に食道、肝臓、胆嚢、そして膵臓の病気に対応します。二次診療施設で消化器科に専従した獣医師が在籍し、検査や治療の選択肢をご家族と相談しながら、それぞれの患者さまに最適な道を探したいと思います。
東京都世田谷区 玉川3丁目15-13 EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230
今回は積極的な治療を必要とした急性胃腸炎を疑った症例をご紹介いたします。
消化器内科に強い病院を探して来院されたようです。
・大きさ 小型
・犬種 マルチーズ×トイプードル
・年齢 9歳
・性別 去勢雄
・体重 2.6 kg
・症状 急性の粘血便、嘔吐、食欲低下、活動性低下
・病名 急性胃腸炎疑い
・検査 身体検査、糞便検査、血液検査、エコー検査
・処置 点滴、注射(制吐剤、胃腸運動促進剤、下痢止め)
・費用 73,560円(初診含め5日間の合計)
予防接種にしか病院にかかったことのない、病気知らずの子。
来院する2日前に急に食べなくなり、プルプルした血便(粘血便)がみられ慌てて病院を探したようです。心当たりがあるとしたら、発症の前日に初めて食べる犬用おやつ(鶏ささみ系)を沢山あげたこと。いつもならご家族にも威嚇する、やんちゃな子だそうですが、吠える元気もなく、じっとしている時間が増えたそうです。問診中に唾液と思われる透明な液体を嘔吐しました。
身体検査では軽度の脱水を認めました。糞便検査では明らかな病原体は認められませんでした。血液検査では急性炎症を意味するCRP上昇が見られました。エコーでは腸管の波状変化(蠕動運動の異常)と胃内の液体貯留(胃運動性低下)が見られました。本人は気持ち悪くて、食欲も湧かない状態が予想されます。
各検査から可能性のある病気を除外し、急性胃腸炎を疑いました。脱水・嘔吐・食欲廃絶があるため、積極的な治療が必要と判断しました。数日間の対症療法を行い状態が改善していくか経過をみていきます。
わんちゃんの性格上ご家族が噛まれてしまう危険性があったため、無理な内服は行わず、点滴と注射(制吐剤、胃腸運動促進剤、下痢止め)に数日間通院していただきました。食事は高消化性もしくは消化に優しい低脂肪のフードを少量ずつあげてもらいました。
治療開始して2日で自分から食事を催促する行動がみられ始めました。3日目にはエコーで腸管の波状変化と胃内の液体貯留は消失し、4日目から自宅で遊ぶ様子がみられ、元々食が細い子がガツガツ食べるまで回復しました。合計5日間治療を行い消化器症状は全て改善しました。その後の再発はありません。
今回は急性胃腸炎を疑う一例をご紹介しました。
急性胃腸炎には無治療で自然寛解する軽症例から入院での集中治療が必要な重症例までバリエーションに富んだ病態ですが、原因が特定できないことがほとんどです。今回は初めてのおやつがきっかけだったかもしれませんが、証明することは非常に難しいです。食べ物の変化による腸内環境に急激な変化、消化が追いつかない、アレルギー反応などさまざまな機序により胃腸炎様の症状が引き起こされます。家族には念の為このおやつを控えていただくようお伝えしました。
急性胃腸炎の診断に必要なことは「除外」と「治療反応」です。状態が悪い場合は可能性のある病気を検査で除外し、治療反応を確認して診断していきます。急性胃腸炎の多くは1週間前後で症状が治りますが、治りが悪い(2週間以上症状が続く)もしくは再発と良化を繰り返す場合は、慢性疾患が関与している可能性があるため、早めの精査をお勧めします。
東京都世田谷区 玉川3丁目15-13
EXPARK二子玉川 1階
電話番号:03-6447-9230
二次診療施設で消化器内科医として診療に従事してきました。これからは身近に相談できる消化器内科医として、皆さんのお悩みを一緒に解決していきたいと思います。