食欲があるのに犬が下痢をするとき
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猫の癌には複数の種類がありますが、中でも大きな割合を占めているのが乳腺腫瘍です。乳腺腫瘍は進行度合いによって4つのステージに分かれていますが、ステージが進むごとに症状が重篤化し、余命も短くなると言われているので、早期発見・早期治療が重要となります。
この記事では、猫の乳腺腫瘍の特徴や進行速度、主な治療方法、乳腺腫瘍を予防する方法について解説します。
猫の乳腺腫瘍とは、その名の通り、乳腺にできる腫瘍のことです。腫瘍には良性と悪性の2種類がありますが、猫の乳腺腫瘍の約8割は悪性と言われているため、早期に発見し、適切な治療を受けることが延命につながります。
乳腺腫瘍の大半は雌猫に発生しますが、ごくまれに雄猫にも見られるため、雄猫だから大丈夫と油断するのは禁物です。特に10~12歳の中・高齢の猫は乳腺腫瘍のリスクが最も高まると言われているため、日頃から定期検診や猫の観察を行い、異常が無いかどうかチェックすることが大切です。
もちろん、若い猫もリスクゼロというわけではありませんので、中・高齢になってから注意するのではなく、若い頃から検診・観察の習慣をつけることをおすすめします。
猫の乳腺腫瘍の原因は未だに全容解明されていませんが、ホルモンバランスと密接な関係があることが判明しています。そのため、女性ホルモンの分泌を行う卵巣と子宮を切除する不妊手術を早い段階で実施すれば、乳腺腫瘍の発生リスクを低減させられると言われています。
なお、不妊手術が乳腺腫瘍の発生率に影響を及ぼすのは生後24カ月までで、それ以降に手術を受けても目立った効果は期待できないとされています。乳腺腫瘍予防のために不妊手術を受けるのなら、生後早い段階で実施することをおすすめします。
乳腺腫瘍の予防方法や不妊手術による効果については後述します。
猫には左右に4つずつ、計8つの乳腺があり、それぞれの乳腺はリンパ節でつながっています。そのため、一つの乳腺に腫瘍が発生すると、他の乳腺に波及しやすく、一度に複数の乳腺腫瘍が起こるケースも珍しくありません。実際、複数の乳腺腫瘍が認められたケースは3~6割に上っていると考えられており、症状や治療に大きな影響を及ぼす原因となっています。
また、猫の乳腺は腋窩リンパ節と鼠径リンパ節にもつながっているため、他の組織への転移リスクが高い傾向にあります。現に、乳腺腫瘍の疑いで診察を受けた猫の初診時のリンパ節転移率は2~4割に上るという報告もあります。
猫の乳腺腫瘍は、進行度合いによって4段階に区分されます。
最も初期のステージで、腫瘍の最大径が2cm未満かつリンパ節への転移や遠隔転移がない状態です。この段階で乳腺腫瘍を発見し、適切に治療すれば、余命は29か月とされています。
腫瘍の大きさが2~3cm程度、リンパ節や他組織への転移が見られない状態です。ステージⅠに比べて腫瘍が大きく、多臓器転移率が上がることから、余命は半分程度の1年にまで短縮されると言われています。
以下いずれかの条件に該当する場合はステージⅢに分類されます。
一般的に、腫瘍の大きさが3cm以上になると多臓器転移率が上がるといわれていますが、3cm未満であっても転移を引き起こすケースがあります。
なお、ステージⅢの場合の平均生存期間は9カ月と言われています。
腫瘍の大きさが3cmを超えており、リンパ節や転移もみられる状態です。いわゆる末期ステージであり、ステージ4の平均生存期間はわずか1カ月とされています。
猫の乳腺腫瘍の治療法は大きく分けて2つあります。
乳腺の片側、あるいは両側を切除する治療方法です。前述の通り、猫の乳腺は左右でつながっているため、乳腺の片側あるいは両側を切除することで再発を防止することができます。
なお、両側を切除する場合は、左右どちらかの乳腺の全摘手術を行った一ヶ月後くらいにもう片方の乳腺の全摘手術を実施することになります。一度に両側の乳腺を全摘すると、術後に皮膚の張りが強く出てしまい、呼吸困難を起こすリスクが高くなるためです。
乳腺の片側・両側切除はステージⅡまでの乳腺腫瘍に効果的な治療法ですが、根治が難しいステージⅢ以上でも、症状を緩和させる目的で腫瘍の部分切除を行う場合があります。
乳腺腫瘍がステージⅢを超えている場合は、前述した外科手術を実施後、化学療法を行うことが推奨されています。化学療法ではいわゆる抗がん剤を猫に投与することで、腫瘍の増殖を抑える効果が期待できます。
実際、外科手術後に化学療法を実施したところ、外科手術単独の場合よりも平均生存期間が延びたという報告があります。ただ、抗がん剤治療には副作用を伴う上、すべての猫に効果が出るという保証はありません。
そのため、猫が乳腺腫瘍になった場合は、かかりつけの医師と相談して治療方針を慎重に決めていくことが大切です。
猫の乳腺腫瘍を予防するために実施したいことを2つご紹介します。
前述の通り、猫の乳腺腫瘍の発生リスクは不妊手術実施の有無と、手術を受けたタイミングによって大きく異なります。猫は生後6カ月を迎えたときに初めての発情を迎えますが、その前に不妊手術を行えば、乳腺腫瘍のリスクを9割以上低減できると言われています。
仮に1回目の発情が終わってしまっても、2回目の発情を迎える前(生後7~12カ月)に施術を行えば、発生リスクを8割以上抑えることが可能とされています。
一方、2回目の発情を終えた後では不妊手術による乳腺腫瘍の予防効果は著しく低下し、生後13カ月~24カ月での不妊手術によるリスク低下はわずか1割程度に留まります。
なお、生後24カ月を超えてからの不妊手術では、乳腺腫瘍の予防効果はほぼ期待できないと言われています。そのため、猫の不妊手術を実施するのなら生後6カ月までがベスト、最低でも生後一年を迎えるまでに手術するのがベターとなります。
猫の乳腺腫瘍は、触診によってある程度判別することが可能です。猫のお腹の部分を触ってみて、乳首以外にコリコリとしたしこりに触れた場合は乳腺腫瘍の可能性があるので、早めに病院を受診しましょう。
なお、胸にしこりがある猫は頻繁にお腹をなめたり、気にしたりする仕草を見せることがあるので、日頃から猫の様子を観察し、いつもと違う行動をしていないかチェックしておくとよいでしょう。
日常的な触診とは別に、病院で定期的な健康診断を実施しておけば、乳腺腫瘍の早期発見・早期治療につながります。猫の健康診断の内容は病院によって異なりますが、問診を初め、視診や触診、聴診を含む身体検査の実施、尿検査や便検査、血液検査などが行われます。
これらの健診は乳腺腫瘍だけでなく、他の病気の早期発見にも役立ちますので、猫に目立った異常が見られなくても定期的に受診することをおすすめします。
渡邊動物病院の木村です。
癌(がん)・腫瘍の治療は、愛犬・愛猫にとっても、飼い主様にとっても負担が大きいです。だからこそ、その子に寄り添い、外科手術・化学療法・放射線療法の中から、治療を行います。
また、当院では緩和ケアも積極的に取り入れています。鎮痛剤だけではなく、闘病中の愛犬・愛猫の負担を少しでも減らすために、ご家庭でもできるお手入れの仕方や食べ飲み時の介護などもお伝えいたします。