犬にかさぶたができる原因は?かさぶたの特徴やケアの方法も解説

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愛犬の皮膚をよく見た時に「かさぶたのようなものがある」という経験はありませんか?

皮膚の傷が治る過程でできるかさぶた。薄いものもあれば、分厚いものも。「かさぶたができてるし、皮膚はもう大丈夫だろう」と思ったそこのあなた。かさぶたの原因によっては、かさぶたを繰り返すものや、増えてくるものもあります。

今回は、そんな犬にみられるかさぶたについて解説します。

犬のさぶたができる仕組み

そもそも、なぜかさぶたができるのでしょうか。

犬の皮膚が損傷して血が出ると、血液中の血小板などの物質が傷をふさいで出血を抑えます。この物質が空気に触れて乾き、固まってできるものがかさぶたです。かさぶたは、傷ついた皮膚を絆創膏のように保護し、皮膚が再生して傷がふさがるのを助ける役割があります。

通常かさぶたは、傷が治ることで自然にはがれ落ちます。

犬のかさぶたの原因

「瘡蓋(かさぶた)」は、何らかの原因で皮膚を損傷することでにじみ出てきた体液(滲出液)や血液、壊死組織などが固まり、皮膚表面に固くくっついた組織のことを指します。

医学用語では、「痂皮(かひ)」と呼ばれ、傷口にしっかりと付着し、天然の絆創膏の役割を果たします。そのお陰で、傷ついた皮膚が保護され、かさぶたの下では皮膚の修復と再生が起こります。傷が深くなければ、大体一週間程度で自然と剥がれてきます。

それでは、次にかさぶたができるような皮膚トラブルを記載します。

かさぶたができる皮膚疾患の要因には、どんなものがある?

犬の皮膚にかさぶたができる要因は多くあります。

大きく分けると外傷と皮膚疾患の二つに分けられます。

皮膚疾患は、さらに細菌や真菌による感染症やヒゼンダニなどの寄生虫感染症の他、アトピーや食物アレルギーなどのアレルギー疾患、免疫系の異常による自己免疫性疾患、腫瘍が原因になる腫瘍性皮膚疾患などに分けられます。

  • 外傷
  • 怪我
  • 皮膚疾患
  • 感染症:細菌、真菌
  • 寄生虫:ニキビダニ、ヒゼンダニ
  • アレルギー:ノミアレルギー、食物アレルギー、アトピー
  • 自己免疫性:天疱瘡
  • 腫瘍

  

少し整理してみると、皮膚に関連する病気でかさぶたができることが多いことがわかります。

このあとは、それぞれの疾患に対して、もう少し詳しく解説していきます。

かさぶたができる各皮膚疾患の原因について

外傷・怪我

犬の外傷で多いのは、犬や猫ちゃんとのけんかで起こる咬み傷や引っ掻き傷です。

皮膚に傷ができると、血管が傷つくことで、一時的に出血が見られますが、止血反応が起こり、かさぶたができます。

血液が固まりかさぶたができると、犬の状態によりますが、一週間程度で新たな皮膚ができ、かさぶたは自然に剥がれてきます。

怪我の程度によっては、皮膚組織の深い部分まで損傷している場合もあります。

傷口に感染があるままだと、傷口からの汁気が続き、かさぶたができたとしても治癒がうまくいかないこともあります。

その場合は、早めに動物病院での検査や処置を受けるようにしてください。

感染症膿皮症

膿皮症は、皮膚の常在菌であるブドウ球菌が毛穴や毛包を中心に増殖することで皮膚に炎症が起きる皮膚疾患です。

膿皮症になると、皮膚に赤みやブツブツができ、菌が増えるとニキビのようなもの(水疱や膿疱)に変化し、これが破けるとその辺縁にフケや薄いかさぶたが見られます。

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌は、真菌(いわゆるカビ)の感染による皮膚疾患です。

原因は、主に保菌動物や土壌との接触感染です。

皮膚糸状菌は毛に感染するため、軽く毛を引っ張ると、簡単に束になって抜ける円形脱毛が特徴的です。

また、病態が進行するとフケやかさぶたも目立つようになります。

犬や猫ちゃん、ヒトにも感染する人獣共通感染症なので、注意する必要があります。

毛包虫症(ニキビダニ症)

ニキビダニは、ほとんどの人間の肌にも常在していると言われているダニの一種で、主に毛穴に常在する寄生虫です。

皮膚の余分な皮脂を分解して毛穴を清潔に保ち、皮膚の健康維持に貢献してくれています。

しかし、増えすぎてしまうと、毛穴を障害するし、毛穴に一致したブツブツや赤み、フケ、脱毛が認められます。

二次的に細菌などが感染すると、膿んだり、じゅくじゅくしたりすることでかさぶたが形成されることもあります。

何らかの原因に伴い、免疫力が低下することで、ニキビダニの数が増えることで起こる皮膚疾患です。

疥癬(ヒゼンダニ症)

疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニというダニの一種が、犬の皮膚に潜り込んで生息することで発症する皮膚寄生虫感染症です。

寝れないほどの強いかゆみを伴うことが多く、掻き壊しによりびらんや潰瘍になり、脱毛やかだぶたを作ることもあります。

また、犬だけでなくヒトにも感染することがあるので注意が必要です。

耳の辺縁や肘、かかとなどに症状が現れることが多いです。

アレルギー

犬で問題となりやすいアレルギー性皮膚炎には、以下大きく3つあります。

  • ノミアレルギー性皮膚炎
  • 食物アレルギー
  • 犬アトピー性皮膚炎

アレルギー性疾患は、頻繁にかゆみ行動が見られる皮膚疾患です。

赤みとかゆみが特徴的ですが、ぶつぶつやフケ、皮膚の肥厚など皮疹は様々です。かゆみ行動による舐め壊しや掻き壊しにより、皮膚が傷つくことで、二次的にかさぶたができることもあります。

落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)

天疱瘡とは、自己免疫性皮膚疾患の一つで、比較的まれな疾患です。

「自分自身を守る免疫系が、自分の皮膚細胞を攻撃して壊してしまうことで、皮膚や粘膜部分に皮膚トラブルが起こる皮膚疾患」です。

皮膚の細胞をくっつけているタンパク質が免疫系の標的となり、それが破壊されることで、細胞同士が離れていきます。

様々なタイプがありますが、犬では落葉状天疱瘡がもっとも多いです。

特徴的な皮膚症状は、「膿疱」と呼ばれるニキビ様のものとそれが破けてできる「かさぶた」です。鼻先や眼周り、耳、肉球などが好発部位ですが、お腹や全身に広がることもあります。

腫瘍性皮膚疾患

「腫瘍」と聞くと、こわい印象を持たれる方が多いかと思いますが、ここでは一度用語を整理してから解説していきます。私たちが犬の体にある「しこり、こぶ、はれもの、できもの」と呼ぶものは、総称して「腫瘤(しゅりゅう)」と言い、原因が特定できない場合に使用します。

特に、皮膚・皮下組織にできるかたまりのことを皮膚・皮下腫瘤と呼びます。対して、「腫瘍」とは、無秩序に増え続ける細胞のかたまりのことを言います。

この中に、悪性と良性のものがあります。不規則に細胞が増殖し、周りの正常な組織にしみこむように広がったり、血液やリンパ管を通ってほかの臓器に広がったりして、犬に悪影響を及ぼすものを悪性腫瘍(がん)、周囲に影響を与えず、その場でゆっくりと大きくなるものを良性腫瘍と分類します。

皮膚にできる腫瘍は、良性と悪性含めて様々なものがあります。ここでは、「こんなものが見られたら悪性かも」という特徴を紹介します。

  • しこりが一ヶ月以内に急に大きくなる
  • しこりの根本が深くなった気がする
  • しこりの色が変化する(白→赤)
  • しこり周囲の皮膚状態や皮膚の色が変化する(赤くなるなど)
  • しこりに汁気が認められるようになった

しこりが見つかった際は、しこりだけでなく、しこり周辺の皮膚状態の変化も確認するようにしてください。

犬のかさぶたの診断と治療

皮膚に異常が起きている場合は、治療が必要です。皮膚にかさぶた以外の症状がみられたり、かさぶたがなかなか治らなかったりする場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

診断の際は、かさぶたの状態や症状を観察したり、皮膚のサンプルを検査したりして、原因を特定する必要があります。

治療の方法は原因によってさまざまです。塗り薬や飲み薬の投与、薬用シャンプーなど、原因を取り除く効果的な治療方法を獣医師が判断することになります。

ここではかさぶたの原因別の診断方法と治療例について記載します。

感染症

皮膚検査や必要であれば培養検査をして、原因菌を推測、特定して診断します。

症状が軽度であれば、薬用シャンプーや塗り薬などの外用療法で治療できることが多いです。

全身に感染が広がっている場合や感染が皮膚の深い部分である場合は、抗菌薬や抗真菌薬の内服による全身療法を行います。

アレルギー

アレルギーの診断は、除外診断で行います。

皮膚検査以外にも、必要であれば血液検査や画像検査を行い、似ている皮膚疾患を一つ一つ減らしていくことで、診断を進めていきます。

食物アレルギーの治療は、「痒みの原因であると疑われるタンパク質が含まれる食べ物を口にしないこと(除去食試験)」と「アレルギー食材を確定すること(負荷試験)」です。

問診やアレルギー検査によって、かゆみの原因となる食材が推測できれば、それを除いたご飯のみを約二ヶ月間継続する除去食試験を行います。

その後、皮膚状態に改善がみられれば、推測したアレルゲン食材を与える負荷試験を行い、アレルゲン食材を確定していきます。血液検査でのアレルギー検査はあくまで参考値となるため、それだけで診断はできないので注意してください。

アトピー

アトピーの治療は、かゆみを生活に支障が出ない程度で管理することを目標にして、皮膚炎の管理、アレルゲンの回避、悪化因子の除去、スキンケアなど様々な治療を組み合わせて行います。

犬の性格や飼い主さんの暮らし方などを相談しながら、家族ごとの治療メニューを決めていきます。

自己免疫性皮膚疾患/落葉状天疱瘡

診断は、発症部位からの推測と膿疱内容物の顕微鏡検査による見た目が似ている皮膚疾患の除外と併せて行います。

その上で可能性が高い場合は、確定診断のために皮膚生検を実施します。

治療は、免疫反応を抑えるための免疫抑制剤の内服になります。

また、局所的な病変には外用薬を併用して管理することもあります。

腫瘍性皮膚疾患

確定診断には、切除生検が必要にはなりますが、負担の少ない皮膚の細胞診などで腫瘍性病変を疑う所見があるかどうか確認する検査もあります。

気になる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

犬のかさぶたのケアと予防

かさぶたができないように予防するためには、どんな皮膚のケアがあるのかご紹介します。また、かさぶたの原因となる皮膚病などを予防する方法も紹介します。

感染症対策

定期的なトリミングやシャンプーや日常的な保湿などで皮膚状態を良好に保つことが予防に繋がります。

寄生虫対策

散歩後にブラッシングなどの習慣を取り入れることで、犬とのスキンシップを兼ねた寄生虫感染を予防することもできます。

皮膚バリア向上や免疫向上系のサプリ

最近は犬用の良質なサプリメントが増えてきています。

皮膚バリアを作る材料や皮膚炎を緩和する効果のある必須脂肪酸や腸内環境を整えるサプリメントなどがおすすめです。

かさぶたをはがすとどうなる?

かさぶたの役割は、傷ついた皮膚の保護です。無理にかさぶたをはがすと、まだ治っていない傷が外部にさらされ、細菌が入って化膿したり治りにくくなったりしてしまいます。気になるかもしれませんが、自然にはがれるのを待ちましょう。

犬がかさぶたをなめたり引っかいたりしてはがしてしまう場合は、エリザベスカラーなどの対策が必要です。

犬のかさぶたについてのまとめ

犬のかさぶたには傷ついた皮膚を保護し、傷口の修復と再生を促す役割があります。

ご紹介した通り、かさぶたができる原因は様々です。軽度の外傷で自然に治っている場合は心配ありませんが、皮膚の病気や深刻な疾患が原因となっていることもあるので、注意が必要です。

皮膚にかさぶた以外の症状があったり、なかなか治らずに繰り返していたりする場合は、早めに動物病院で診てもらいましょう。

犬のかさぶたについて気になることがある場合は、お気軽にご相談ください。

担当医師のご紹介
立川院 日本獣医皮膚科学会認定医 木村友紀

2023年10月にKINS WITH動物病院グループの一員になりました、渡邊動物病院の皮膚科認定医の木村です。
皮膚のお悩みは、原因が複合的なことが多く、特定が難しいと言われています。足先に皮膚炎の症状が出ていても、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの可能性もあれば、足の関節が痛くて足を舐めて皮膚炎になっている可能性もあります。
私は皮膚科認定医でありながら、腫瘍認定医でもあります。日本獣医循環器学会や日本獣医歯科研究会に所属し、幅広い知見があります。皮膚に限らず、幅広い分野に精通しているからこそ、皮膚病の要因をあらゆる観点から分析し、根拠をもって適切な治療方針をご提案します。