フレンチブルドックの歯磨きのやり方 (犬猫の歯医者監修)

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フレンチブルドッグの歯の特徴と歯周病のリスク

フレンチブルドッグは「短頭種」と呼ばれ、マズルが短く頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短いため、歯が密集して生えたり、歯並びが悪い傾向にあります。そのため、歯と歯の間に食べかすや歯垢(食後24時間以内に形成される歯に付着する粘着性の透明な膜)が残りやすく、蓄積すると歯石になり歯周病のリスクが高くなると言われています。よって、フレンチブルドッグの犬の歯磨きには少し工夫が必要というわけなのです。

歯垢が溜まりやすいところと、適切な歯磨きの頻度は?

犬は、大きな肉などの食べ物を噛みちぎって飲み込むため歯が発達しており、歯によって役割が異なります。また、水分を多く含んでいるウェットタイプのごはんを食べると、

  • 増粘剤により食べかすが歯に付着しやすい
  • 水分を多く含んでいるため食後にお水を飲む回数が減り、食べかすなどが流れにくい
  • 噛む回数が減ることで唾液の分泌が少なくなる

などの理由で、犬の口の中に食べかすが残りやすくなるなど、より注意が必要です。必ずしも、食事を変える必要はありませんが、マッサージで唾液の分泌を促進させたり、歯磨きをより丁寧に行うなどの工夫が必要です。

では、実際に犬のどこの歯に歯垢が溜まりやすいのでしょうか。次の3つの歯が、特に歯垢が溜まりやすい箇所と言われていますので、ぜひ覚えていただき丁寧な歯磨きを心がけましょう。

①第4前臼歯(裂肉歯)

犬の上顎に生えているもっとも大きい歯「第4前臼歯」は、42本の歯の中でもっとも汚れやすい歯と言われています。口の中に入れた食べ物を細かくして、飲み込めるように切断する機能があります。

②第1後臼歯

第1後臼歯は、下顎のいちばん大きい奥歯で上面がすりこぎ状になっていて、細かくなった食べ物を、さらに細かくすりつぶす役割があります。

③犬歯の根元と裏側

犬歯は、もっともとがっている歯で、獲物を捕らえて逃がさないようにする役割のある歯です。奥歯と違って、口唇をめくると磨きやすい歯ですが、根元やに汚れが溜まりやすいので、優しくしっかりと磨いてあげましょう。

歯磨きは、毎日行うことが理想ですが、難しい場合は最低でも2~3日に1回行うことが望ましいと言われています。それは、犬の歯についた歯垢は、2〜3日で歯石になるため、歯石になる前に歯垢を取り除くことで、歯石化するのを予防することができるからです。

歯磨きが苦手な愛犬は、「1日目は右側、2日目は左側、3日目は前側」のように、犬の歯を「3日で1周」するように磨くと、犬と飼い主さまの精神的・身体的な負担を軽減することができます。また、毎日少しずつ歯磨きをすることで、犬も口の中を触られることに徐々に慣れてくれるはずです。まずは「3日で1周」を目標に取り組んでいきましょう。

なぜ、歯磨きが必要なの?怠るとどうなる?

ではなぜ、歯磨きが必要なのでしょうか?まず、歯垢は食後8時間程度で形成され始め、24時間程度で歯周病菌などの悪玉菌が増えてきます。さらに、ほおっておくと2〜3日で歯石になってしまいます。歯石は、歯磨きでは除去することができず、蓄積されると歯垢がたまりやすくなり、歯周病を引き起こし、悪化させやすくなる可能性があります。そうなると、口の中の細菌が血液にのって全身に行き渡り、心臓や肝臓、腎臓などの病気を招いてしまう恐れも指摘されています。

犬の「下痢」には一過性のものもありますが、何度か繰り返していたり、長期間続くこともあるでしょう。病気の場合もありますが、腸内フローラが乱れて下痢をしやすくなっているかもしれません。乱れた口腔内フローラが腸内フローラに悪影響を与えている可能性もあるので、歯周病予防のためにも毎日の歯磨き習慣をつけるとよいでしょう。

フレンチブルドッグの歯磨きトレーニングの前に!マズルトレーニングのすすめ

毎日の歯磨きが、犬の全身の健康にも影響しているということがわかりましたが、歯磨きが苦手な犬は非常に多いと思います。いきなり歯ブラシで歯を磨くのではなく、まずは「マズルトレーニング」から始め、口を触られるところから慣れていくことがおすすめです。

マズルトレーニングとは?

母犬は、子犬のマズルに顎を乗せてしつけを行ったり、マズルを噛むことで、上下関係や「やってはいけないこと」を教えます。犬のこの習性に沿った方法で、人間が取り入れたしつけ方法を、「マズルトレーニング」と言います。犬自身も、本能的にやってはいけないことだと認識しやすいため、しつけが効果的だと言われています。

マズルトレーニングを行うには「マズルをつかむ」必要があります。では、その「マズルをつかむ」6つのステップを見ていきましょう。

ステップ1:犬の身体を触ったり頭をなでたりして、リラックスさせる
ステップ2:マズルを静かに優しくなでる
ステップ3:鼻先を包み込むように軽くにぎる
ステップ4:マズルをつかんだまま上下に動かしてみる
ステップ5:口を持ち上げたり開けさせたりする
ステップ6:マズルに触れられることに慣れたら、実際に悪さをした時にマズルをつかむ

このような6つのステップで、ゆっくりとトレーニングしていきましょう。マズルトレーニングができるようになると、犬の歯磨きや耳掃除、投薬をする時にスムーズに顔に触れることができたり、興奮を鎮めることなどにも役立ちます。

ただし、マズルには犬の感覚器官が集中しているため、初めは触れられることを嫌がる犬が多く、難しいかもしれません。特に、フレンチブルドッグの場合、嫌がることに加え、マズルが短いため、つかむことが難しい場合もあります。無理に触ろうとせず、飼い主さまとのスキンシップを楽しみながら、犬のペースにあわせて少しずつ行っていきましょう。

フレンチブルドッグの歯磨き方法とコツ

ここからは、フレンチブルドッグならではの歯磨き方法とコツについてご紹介していきます。歯磨きのコツをつかんで、毎日の歯磨きにお役立ていただければと思います。

フレンチブルドッグの歯磨きのコツ

①歯ブラシは毛の柔らかいものを使う

硬い毛先は犬の歯肉を痛めたり、出血を起こしてしまう可能性があります。痛みや違和感があると歯磨きを苦手になる原因になる可能性も考えられますので、なるべく毛の柔らかい歯ブラシを使うことがおすすめです。

②顎を固定した体勢で行う

犬のお尻を向けて足と足の間に挟むような体制になり、下顎を優しく支えて固定しましょう。犬の歯が、飼い主さまの歯磨きをする時と同じ向きになるため、感覚的に磨きやすくなります。

③口は閉じた状態にする

フレンチブルドッグは、口は大きいですがマズルが短いため、手で口を固定することが難しいです。よって、歯磨きの際には下顎を支えて口を閉じた状態にしましょう。奥歯や歯の裏側は、歯ブラシに慣れて口を開けられるようになってからでも問題ありません。

④口唇と口唇の間から歯ブラシを入れる

下顎に親指を添えて、顔を手の平で抑えながら唇をめくり、口唇と口唇の間から歯ブラシを入れます。鼻の周囲を強くにぎると呼吸しづらくなるため注意しましょう。

⑤ほっぺを引っぱる

指の腹を使い、ほっぺを真横に引っ張って上に挙げると、歯が見えて磨きやすくなります。床と平行になるように歯ブラシを入れ、歯ぐきに対して斜め30〜45度くらいの角度で優しく磨いてあげましょう。

フレンチブルドッグの歯磨き方法

次は、歯磨き方法について見ていきましょう。フレンチブルドッグは、マズルが短いため、前歯を磨く時は歯ブラシが見えてしまい、警戒してしまう犬が多いです。まずは、ほっぺを真横に引っ張るようにして、横の歯から磨いてあげるとよいでしょう。

次に、横の歯を磨くのに慣れたら前歯を磨きます。上の歯は、鼻の近くを抑えてめくりあげ、下の歯は顎先に親指をあてて少し唇を下にずらしてあげると歯の状態がよく見えて磨きやすくなります。

歯磨きのコツを取り入れながら、犬の負担にならないように、「おりこうだね」などと褒めながら少しずつ歯磨きに慣れていきましょう。

歯磨きを嫌がる時はどうすればいい?

犬が歯磨きを嫌がる時は、歯を磨きやすいように皮膚をめくるところから始め、歯の形や状態をチェックすることにまずは慣れてもらうことが大切です。「歯磨き」となると「ゴシゴシ磨かないと!」と思ってしまいがちですが、磨く時は、歯ブラシを軽く歯にあてながら、食べかすや汚れを落としたり、歯をマッサージするように歯磨きしてあげるとよいでしょう。褒めてあげながら、少しずつ慣れていくことが大切です。

歯磨きが怖い場合は、歯磨きジェルを歯茎に塗ってから唾液腺をマッサージしたり、お水に適量のジェルを溶かすだけでできる「デトックスウォーター」を飲むこともおすすめです。

歯磨き後におやつはあげていい?

歯磨き後におやつをたくさん与えすぎるのはよくありませんが、歯磨きに慣れていないうちは、歯磨きを頑張った後に褒めながらおやつをあげて、「歯磨きは楽しいものだ」と犬に思ってもらうことが大切です。おやつを与えた後は、お水を飲むなどして、口をすすげるとよいでしょう。

フレンチブルドッグの歯磨き・デンタルケアでやってはいけないこと

頑張って、歯磨きができるようになっても間違った方法を続けてしまうと、愛犬が痛がったり歯に負担をかけてしまう可能性があるかもしれません。ここでは、デンタルケアでやってはいけないことを8つご紹介させていただきます。

①歯磨きガムだけでのケア

歯ブラシやシートで磨いてあげないと十分なケアができません。ガムを歯磨きのご褒美として与えたりしつつ、ブラシの練習もしましょう。

②歯磨きの後におやつをあげない

慣れないうちは、歯磨きを楽しいと思ってもらうためにおやつをあげましょう。

③硬いものをあげていれば大丈夫

硬いものは、犬の歯を傷めてしまう可能性があります。

④歯磨きができないからデンタルジェルも使わない

デンタルジェルは、口腔内の乾燥を予防したり口臭を抑えたりする効果が期待できます。

⑤歯磨きを強制する

無理をすると嫌になってできなくなることがあります。スキンシップから始め、デンタルジェルなどを歯ブラシにつけて舐めさせてあげ、少しずつ歯磨きに慣れていきましょう。

⑥歯がきれいなので歯科検診を受けない

見えないところで歯周病が進行している可能性もあります。3か月から1年に一度、定期的な歯科検診を受けるようにしましょう。

⑦歯ブラシでゴシゴシ磨く

硬い歯ブラシで強く磨くと、歯ぐきを痛めてしまいます。歯1本につき、2〜3秒くらい摩擦をかけながら優しい力で磨いてあげましょう。

歯磨きを好きになる2つのステップとおすすめのアイテム

歯垢は食後24時間以内に形成され始め、ほおっておくと2〜3日で歯石になってしまうため、歯磨きは毎日の習慣にすることが理想です。毎日のことだからこそ、できるだけ犬が負担を感じることなく歯磨きを行い、好きになってもらう必要があるのです。

歯磨きをしなければ歯垢が蓄積されて歯石になり、歯周病の原因にもなりますし、歯周病はは、犬の口の中の細菌が血液にのって全身に行き渡り、心臓や肝臓、腎臓などの病気を引き起こしてしまう可能性もあります。

犬に歯磨きを好きになってもらうためにも、次のステップを行い、歯磨きの時間を飼い主さまと犬の楽しいコミュニケーションの時間にし、犬の歯と全身の健康を守ってあげましょう。

歯磨きを好きになる2つのステップ

ステップ1 コミュニケーションを取り唾液腺マッサージ

まずは、コミュニケーションから始めます。顎の下やほっぺの周りの唾液腺をマッサージして、口に触れることに慣れていきましょう。口の中に複数ある唾液腺を刺激することで、口の中の自浄作用や乾燥の予防にも効果があります。また、唾液の分泌が促進されるので、口内環境がよくなって歯周病菌の増殖を抑える効果もあるようです。

ステップ2 ジェルを舐める

歯ブラシを使った歯磨きが苦手な犬には、歯磨きジェルを舐めるところから始めてみましょう。歯磨きジェルには、犬の好きなやぎミルクなどの美味しい味や香りのするものがありますので、楽しみながらケアできます。犬は歯磨きに対する肯定的なイメージを持つようになり、歯磨きを好きになってくれるはずです。

おすすめの歯磨きアイテム

犬に歯磨きを好きになってもらうためには、歯磨きのアイテムも工夫してみるとよいでしょう。

①柔らかい毛がついた歯ブラシ

出血や歯肉を痛めないよう、硬い毛先の歯ブラシは避けましょう。

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②コットンシート

歯ブラシそのものが苦手な犬は、コットンなどを飼い主さまの指にまいて、マッサージするように歯を磨いてあげましょう。同時に、歯磨きジェルをつけて行うこともおすすめです。

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