【犬の皮膚病】症状や種類、自宅でのケアについて

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動物病院で受診する病気において、何が1番多いかご存知ですか?

正解は、今回のタイトルである「皮膚病」です

犬の皮膚は毛で覆われていますが、皮膚の一番外側である表皮はヒトよりも薄く、とてもデリケートな肌をしています。

愛犬がしきりに体をかいたりかじったりしている場合は、皮膚に何らかのトラブルが起きているサインかもしれません。皮膚のかゆみや痛みは犬にとって大きなストレスになるため、なるべく早く治してあげたいですよね。

犬の皮膚病にはさまざまな原因や症状があります。今回は、犬に認められる主な皮膚病の種類や症状、自宅でのスキンケアについて解説します。

犬の皮膚病の主な症状・皮膚に現れる変化

犬の皮膚トラブルが起きた際に、皮膚に現れる見た目の変化のことをまとめて「発疹(ほっしん)」と呼びます。

発疹の色や形は様々ですが、犬の発疹で多く認められるものに、次のようなものがあります。

  • かゆみ
  • 赤み
  • ぶつぶつ
  • 腫れ
  • かさぶた
  • フケ
  • 脱毛

時間が経つと自然に治るものもありますが、赤みやかゆみが拡がるものは、症状が強く現れている証拠であり、早期解決のために原因を探索する必要があります。

よくみられる皮膚病の種類と特徴

犬がかかる皮膚病には、どのような種類があるのでしょうか。一般的にみられる犬の皮膚病について、代表的な種類の原因や特徴を紹介します。

アトピー性皮膚炎

ヒト同様に、犬にもアトピー性皮膚炎があります。

生まれつき皮膚バリア機能が弱かったり、環境アレルゲン(主に室内ダニや花粉など)に対して過剰に免疫が反応してしまうような遺伝的な背景が原因となることで、皮膚にかゆみや赤みを伴う皮膚疾患になります。

おもな症状はかゆみを伴う発疹で、特に顔周りや足先、脇や股などの皮膚が擦れる部分に症状が出ることが多いです。

生後6か月から3歳くらいまでの間に発症することが多いとされ、季節的な変動のあるかゆみが特徴的です。

食物アレルギー

食べ物が原因となるアレルギー疾患で、主にタンパク質や炭水化物源がアレルゲンになります。

1歳までに発症することが多く、かゆみを伴う発疹の他、かゆみの程度が一年を通して変化が少ない通年性のかゆみが特徴的で、軟便やおならなどの消化器症状が見られることもあります。

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症とは、糸状菌という真菌(カビ)によって引き起こされる感染症です。人にも感染する可能性がある皮膚疾患なので、早期の治療と感染対策が必要です。

免疫力が低下したときに発症しやすいとされています。おもな症状は円形の発疹やかさぶた、脱毛などで、顔周りや耳、足先など、糸状菌と接触しやすい部分で症状が認められることが多いです。

マラセチア皮膚炎

マラセチアという酵母菌によって引き起こされる皮膚炎です。マラセチアは健康な犬の皮膚にも存在していますが、免疫力の低下などで異常に繁殖した場合、トラブルになることがあります。

これが過剰に増殖してしまうと、皮膚のベタつきと脂っぽい臭いが特徴の皮膚炎を起こします。
皮膚ケア不足やアレルギー、内分泌の異常、皮脂の分泌異常など、さまざまな要因が引き金になります。

春から夏など暖かくなる時期に発症することが多く、耳や足先、しわ、脇や股などの皮脂が溜まりやすい部分に症状が現れることが多いです。

疥癬

ヒゼンダニというダニの一種が、犬の皮膚に潜り込んで生息することで発症する皮膚寄生虫感染症です。

寝れないほどの強いかゆみを伴うことが多く、掻き壊しによりびらんや潰瘍になり、脱毛やかだぶたを作ることもあります。また、犬だけでなくヒトにも、一時的に感染することがあるので注意が必要です。

犬の皮膚に寄生するダニの糞や卵、分泌物などがアレルギー反応を引き起こし、激しいかゆみや皮膚の赤みなどの症状がみられます。

膿皮症

犬の皮膚に常在する細菌(主にブドウ球菌)の過剰な増殖が原因の皮膚炎です。
皮膚の赤みやかゆみ、フケなどの他、膿疱(ニキビのようなもの)とよばれる膿が溜まった水疱ができることもあります。

細菌の繁殖に適した温度・湿度条件が整う、春先から梅雨・夏の時期に特に多く発症します。

脂漏性皮膚炎

脂漏症とも呼ばれ、様々な原因により、皮膚のターンオーバーが、通常より短くなっている状態で、これが元で皮膚炎が起こることを脂漏性皮膚炎と呼びます。

皮膚の代謝や皮脂の分泌が過剰に行われ、体のベタベタと強いにおいが特徴的です。

自己免疫性皮膚疾患

自分の体を守る免疫システムに異常が起きてしまい、自分の皮膚組織を攻撃してしまう状態を免疫介在性皮膚疾患、自己免疫性皮膚疾患と呼びます。

皮膚に特異的な自己免疫疾患もあれば、内臓にも影響を及ぼすものもあります。

若い子にも発症するものもあります。

犬の皮膚病の診断

皮膚炎を治療するには、まずは原因を特定する必要があります。しかし、病気の種類が異なっていても症状が似ている場合も多く、診断は簡単ではありません。

皮膚のトラブルを治療するには、皮膚に現れている病変(皮疹)がどういうものか明らかにしながら、問診により皮膚状態の経過や寄生虫予防の有無など鑑別に必要な情報を整理していきます。また、皮膚表面における構造物や被毛、フケなどを採材し、顕微鏡上で確認する皮膚検査も行います。また、症状が現れた時の環境の変化や食事、時間帯などの状況も、原因を絞り込む重要な手がかりです。

中高齢でホルモン疾患や腫瘍が疑われる場合は、血液検査や画像検査を行うこともあります。アレルギーが疑われる場合は、アレルギー検査を行うこともあります。

このように、皮疹や問診、検査結果を総合的に判断することで、鑑別を進め、原因を探索していきます。

原因がある程度特定できたあとは、犬の性格や飼い主さん家族に合わせて治療プランを練ります。皮膚疾患の経過や種類によっては、生涯皮膚の管理が必要になるものもあります。

病気のことだけでなく、皮膚のケアの方法などでも悩む場合は、お気軽にご相談くださいね。

犬の皮膚病の治療について

上述の通り、犬の皮膚病は様々な原因により引き起こされるものです。そのため、有効な治療を行うためにはまずはトラブルを引き起こす原因を確実に特定することが大切です。

原因が特定できたら、それに合わせた治療を行ないます。皮膚病の治療には、塗り薬や飲み薬、注射、薬用シャンプーなどの手段が一般的です。

完治までの期間は、皮膚病の種類や症状の重さによっても異なります。皮膚病を放置して症状が悪化していたり慢性化したりしている場合には、なかなか治らない状態になり、治療に長期間かかることもあります。犬の皮膚に異常がみられた場合は、早めに受診して治療を受けましょう。

自宅でできる犬の皮膚病のケア

愛犬が皮膚病になってしまったら、飼い主様はどうすればよいのでしょうか。自宅でできる皮膚病のケアについて解説します。

薬用シャンプーの使い方

皮膚病の治療や症状の軽減には、薬用シャンプーが効果的な場合があります。薬用シャンプーは、皮膚をケアする成分が含まれており、傷の洗浄やかゆみの軽減、抗菌などの効果が期待できます。

薬用シャンプーの使い方や選び方については、獣医に相談して指示に従いましょう。もし症状が悪化したり、赤みやかゆみが出たりした場合には、使用を注意してください。

人間の薬は使える?

犬の皮膚病では、人間と同じような症状がみられる場合があります。そのため、「人間の薬を使ってもいいの?」と考える飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

確かに、ステロイド剤や抗生物質など、人間に処方される薬が犬に効果的なケースもあります。

しかし、皮膚病の原因を判断するには、専門の知識や検査が必要です。自己判断で人間用の薬を使うと、皮膚の症状を悪化させてしまう可能性もあります。必ず動物病院を受診し、皮膚病の原因や適切な治療法を診断してもらいましょう。

犬の皮膚病についてのまとめ

犬が皮膚病になると、皮膚の赤みやかゆみ、脱毛などのさまざまな症状が現れます。原因はアレルギーや細菌、真菌、寄生虫などさまざまで、適切な治療のためには、検査によって原因を特定することが必要です。

症状が悪化したり慢性化したりすると治りづらくなってしまい、完治までに長期間かかることもあります。愛犬の皮膚に異常がみられて1~2週間経っても自然に治らなかったり、重い症状がみられたりする場合は、なるべく早く動物病院に連れていきましょう。

犬の皮膚に関する疑問や悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。

担当医師のご紹介
立川院 日本獣医皮膚科学会認定医 木村友紀

2023年10月にKINS WITH動物病院グループの一員になりました、渡邊動物病院の皮膚科認定医の木村です。
皮膚のお悩みは、原因が複合的なことが多く、特定が難しいと言われています。足先に皮膚炎の症状が出ていても、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの可能性もあれば、足の関節が痛くて足を舐めて皮膚炎になっている可能性もあります。
私は皮膚科認定医でありながら、腫瘍認定医でもあります。日本獣医循環器学会や日本獣医歯科研究会に所属し、幅広い知見があります。皮膚に限らず、幅広い分野に精通しているからこそ、皮膚病の要因をあらゆる観点から分析し、根拠をもって適切な治療方針をご提案します。