犬に寄生するダニの種類と症状、予防方法について

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飼い主さまは、ダニが、大切な犬に重大な病気や感染症を引き起こす可能性があることをご存知でしょうか?今回は、犬に寄生するダニの種類と症状、予防方法や対策などについてご紹介させていただきます。ぜひ、犬をダニから守るためにもお役立ていただければと思います。

ダニとはどんな寄生虫?

ダニは、私たちが生活する上であまり目にすることはありません。しかし、ホコリや食べ物のカス、フケなどを餌にしてベッドや布団、カーペットなどに生息し、アレルギーなどのかゆみや炎症を引き起こす可能性のあるダニや、人間や動物に寄生して吸血し、病気を媒介する「マダニ」もいます。私たちの生活環境の中には、このようなダニによる様々な危険が潜んでいる可能性もあるのです。

犬に寄生するダニの種類と症状

では、ダニによる様々な危険から犬を守るためにも、どのような種類のダニが犬に寄生するのかを、まずは見ていきましょう。

<マダニ>

マダニは、人間や犬などの動物に寄生して吸血し、病気を媒介するクモの一種です。背丈の低い草や低木の先に潜んでいることが多く、犬がお散歩などで草むらを歩き、それらに触れることでマダニは寄生します。また、マダニに寄生された犬と、ドッグランなどで一緒に遊ぶことで感染を広げてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

マダニが寄生し吸血すると、犬の皮膚にかゆみや痛みを引き起こすだけでなく、マダニが持つウイルスや細菌が感染し、深刻な病気や感染症を引き起こす可能性もあります。これらの病気や感染症には、人間にも感染するものも含まれますので、犬とともに気をつけなければなりません。詳しくは、「マダニの寄生によって引き起こされる病気」の項目でお話しさせていただきますので、後ほどそちらも一緒に確認していきましょう。

<ヒゼンダニ(疥癬ダニ)>

ヒゼンダニは「疥癬ダニ」とも呼ばれ、皮膚の角質層に寄生し、多くは、犬の胸や腹部、脚、肘、耳などに現れ、激しいかゆみ、脱毛、皮膚感染症、皮膚の乾燥、フケなど、疥癬の症状を引き起こします。ヒゼンダニは、非常に小さなダニであり皮膚の下に寄生するため、肉眼で見ることができず、診断が難しい場合もあるようです。そのため、診断には犬の皮膚に擦り傷をつけて、顕微鏡で検査する必要があります。

また、ヒゼンダニは、人間にも感染する可能性がありますので、普段から犬の様子や皮膚の状態を確認し、症状がある場合は獣医師の診察を受けるようにしましょう。

<イエダニ>

イエダニは肉眼では見えませんが、ベッドやマットレス、カーペット、ソファ、犬の寝具など、家庭内の様々な場所に存在し、暖かく湿度の高い環境で繁殖します。イエダニの存在自体は大きな被害を生みませんが、イエダニの糞便、尿などの分泌物や死骸などが家庭内のホコリの一部となり、それらが犬に触れることで、耳や顔、脇の下、腹などにアレルギーの症状を引き起こす原因となっているようです。アレルギー症状は、犬だけでなく人間にも現れる場合があります。予防のためにも、できるだけ家庭内のホコリやゴミをこまめに掃除し、清潔に保つことが大切です。

<ツメダニ>

ツメダニは、皮膚に生息するダニで、主に犬の背中に寄生し、フケ、かゆみ、炎症などの症状を引き起こします。犬の他、猫やうさぎ、時には人間にも寄生する場合があり、間違って噛むことで、かゆみのある湿疹を引き起こすこともあるようです。

<ニキビダニ>

ニキビダニは、犬の毛穴にある毛包や皮脂腺などに常在しているダニの一種です。通常、犬の免疫力によってニキビダニの数は一定に保たれていますが、免疫力の低下や免疫に関わる病気が影響している場合、栄養失調などの場合にニキビダニが増殖し、脱毛、皮膚が厚くなる、炎症、発赤などの症状が現れます(毛包中症)。

マダニの寄生によって引き起こされる病気と症状

ここまで、犬に寄生するダニについてご紹介してきましたが、ここからは、特に注意が必要なマダニの寄生によって引き起こされる病気についてご紹介させていただきます。マダニの寄生は、直ちに痛みなどを引き起こすものではありませんが、放置すると重大な病気を引き起こしてしまう可能性もありますので、十分な対策と注意が必要です。

<ダニ麻痺症>

マダニが吸血する時、種類によっては毒性の物質を分泌するマダニもいるようで、この毒性の分泌物が、犬の神経に影響を与え急速に進行する病気を「ダニ麻痺症」と言います。症状は、犬がマダニに咬まれてから5〜9日後に始まり、初めは筋肉を適切に動かすために必要な神経伝達物質を阻害し、通常、後ろ足に歩行の異常が見られるようです。その後、24〜48時間で急速に進行し、前足、呼吸に関わる筋肉や顔の神経麻痺、咽頭の機能不全やそれに伴う誤嚥性肺炎、呼吸能力や筋肉の張りなどの低下が症状として現れます。

<ライム病>

ライム病は、「ボレリア・ブルグドルフェリ」という細菌の一種に感染したマダニに咬まれることで感染する病気です。細菌は、マダニが咬んだ傷から犬の血流にのって、体の様々な場所に運ばれ、関節の痛みや腫れ、足を引きずって歩く、リンパ節の腫れ、発熱などの症状が現れる可能性があります。これらの症状は、腎不全を引き起こしたり、心臓や神経に重大な影響を及ぼす可能性もあるようです。また、犬と同じような感染経路で人間にも感染する場合があります。

<犬バベシア症>

犬バベシア症とは、「バベシア」という原虫が犬を吸血した後赤血球に寄生し、赤血球を破壊することで貧血を引き起こす感染症です。犬のバベシア症のほとんどは、南米の北部で発生しているようですが、そのほかの国や日本でも報告されています。症状には、軽度なものから早急に対処が必要なものがあるようで、白眼や皮膚が黄色くなる黄疸、無気力、食欲がない、歯茎が青白い、尿の色が濃い、リンパ節の腫れや脾臓の肥大、痩せる、ふらつきのある歩行、発作などの症状が現れます。

犬にマダニが寄生しているのを見つけたら取ってもいい?

犬に寄生するダニによって、様々な症状や病気を引き起こす可能性があることがわかりました。飼い主さまは、犬にマダニが寄生しているのを見つけた時、できるだけ早く取り除きたいと思われることでしょう。しかし、飼い主さま自身で無理にマダニを取り除くことはおすすめしません。

マダニの取り方を紹介しているサイトや、マダニを取るための専用ツールを販売しているペットショップやネットショップもあるようですが、無理にマダニを取ろうとするのはやめておきましょう。無理に取ろうとすると、マダニの口や頭の部分だけが残ることで皮膚病が悪化したり、ウイルスや細菌が人間に感染する危険性もあります。

マダニが犬に寄生しているのを見つけたら、早急に獣医師の診察を受け、適切に処置してもらうことが大切です。

犬にダニが付くのを予防するには?

犬に様々な症状や病気を引き起こす可能性のあるダニですが、家庭内で目に見えないくらいの小さなダニが存在していたり、散歩などで気が付かないうちに寄生してしまっている場合もあります。では、このような環境の中で、飼い主さまが犬をダニから守り予防するためには、どのような対策が取れるでしょうか。最後は、ダニの予防方法やその対策についてご紹介させていただきます。

①駆除薬や予防薬

ダニは、暖かい季節だけでなく、一年を通して定期的に予防することが大切です。ダニの駆除薬・予防薬は、ペットショップなどで購入できるものや、動物病院で獣医師を通じてのみ購入できるものがあります。

例えば、首の後ろの皮膚につけたり塗ったりするものや、犬の嗜好性にあわせたチュアブルタイプの駆除薬・予防薬もあり、定期的に投与することでダニを予防することが可能です。そして、ダニの駆除薬や予防薬は、犬のライフスタイルにあわせて選んであげるようにしましょう。特に、水遊びの好きな犬には、塗布タイプの駆除薬・予防薬は水で流れ落ちてしまう可能性がありますので、投薬タイプの駆除薬・予防薬がおすすめです。

②ブラッシングやシャンプー

散歩の後や他の犬との交流があった後は、ブラッシングを丁寧に行いましょう。ブラッシングは、犬の皮膚や被毛の健康維持、体に付いたほこりや汚れを取り除くだけでなく、同時にダニが寄生していないかどうかをチェックすることも大切です。加えて、定期的にシャンプーを行い、犬の皮膚や被毛を清潔に保つようにしておきましょう。

③生活環境とお散歩時にできる対策

ダニは、屋外はもちろん、目には見えませんが家庭内のベッドやソファ、カーペットなど様々な場所に存在しています。暖かく湿度の高い場所を好んだり、ほこりや食べかす、汚れなどを食べて暮らしているダニもいますので、ダニが生息しやすい環境を作らないためにも、こまめな掃除を心がけ犬の生活環境を清潔に保つことが大切です。

また、お庭の草をこまめに引いたり、植物をなるべく清潔にお手入れすることを心がけ、周辺のダニの存在に対しても対策を取っておくこともよいでしょう。

そして、お散歩時には、服を着せることも検討してみてください。特に草むらの好きな犬は、草や低木に直接触れる体の面積を減らすことができます。また、ドッグランなどを含め、他の犬と遊ぶ時も、服を着ていればダニの感染の他、様々な病気から犬を守ることができるかもしれません。

飼い主さまも犬も、ダニによって皮膚病や感染症などの辛い思いをしないためにも、ダニの予防と対策は必ず行うようにしましょう。

担当医師のご紹介
立川院 日本獣医皮膚科学会認定医 木村友紀

2023年10月にKINS WITH動物病院グループの一員になりました、渡邊動物病院の皮膚科認定医の木村です。
皮膚のお悩みは、原因が複合的なことが多く、特定が難しいと言われています。足先に皮膚炎の症状が出ていても、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの可能性もあれば、足の関節が痛くて足を舐めて皮膚炎になっている可能性もあります。
私は皮膚科認定医でありながら、腫瘍認定医でもあります。日本獣医循環器学会や日本獣医歯科研究会に所属し、幅広い知見があります。皮膚に限らず、幅広い分野に精通しているからこそ、皮膚病の要因をあらゆる観点から分析し、根拠をもって適切な治療方針をご提案します。