【保存版】フレンチブルドッグの病気と、健康のためにできること

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フレンチブルドッグは、世界中でもっとも愛されている犬種のひとつです。鼻が短く赤ちゃんのような愛らしい顔、ずんぐりむっくりな体、家族への愛情深い性格など、フレンチブルドッグの魅力に引き込まれた飼い主さまも多いのではないでしょうか。

一方で、上記のようなフレンチブルドッグの特徴を誇張するために交配されたばかりに、一部の病気になりやすいという傾向もあるということを、飼い主さまは知っておく必要があるかもしれません。

今回は、フレンチブルドッグが罹りやすい病気のご紹介と、フレンチブルドッグの健康のために飼い主さまができることを具体的にお話ししていきます。

フレンチブルドッグの特徴と起こりやすいトラブルとは?

フレンチブルドッグの特徴として一番に挙げられるのは、いわゆる「鼻ぺちゃ」、鼻が短く顔が平べったいことではないでしょうか。特徴的なシワや大きな目などは、フレンチブルドッグが人気の犬種である理由の一つになっていることでしょう。

しかし、フレンチブルドッグは人気の犬種であるが故に、その特徴を生み出すことを目的とした交配が行われてきたという背景もあります。その影響もあり、フレンチブルドッグは遺伝的トラブルが多いと言われており、他犬種と比べてプラス20個以上のトラブルが起こりやすいという研究結果もあるようです。

では、実際にフレンチブルドッグにはどのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。

フレンチブルドッグの皮膚トラブル

フレンチブルドッグに起こりやすいトラブルとして、皮膚のトラブルが挙げられます。「アニコム家庭どうぶつ白書2022 第2章どうぶつの疾患統計 品種別の統計」によると、フレンチブルドッグが他犬種と比べて罹りやすい疾患の上位10位以内の5項目に皮膚の疾患がランクインしています。この結果から、フレンチブルドッグには皮膚のトラブルが多いとおわかりいただけると思います。では、実際にどのような皮膚のトラブルや病気があるのかさっそく見ていきましょう。

①膿皮症

膿皮症は、細菌性皮膚炎と呼ばれ、わんちゃんの皮膚の常在菌のバランスが崩れた時に起こりやすいと言われています。顔や口周りのシワ、鼠蹊部、脇の下などに発生しやすく、症状には、赤くなったり、かゆみ、抜け毛、かさぶたの形成などがあります。梅雨の時期から夏にかけての高温多湿な時期に起こりやすいので、この時期は特に、顔や口周りのしわ、鼠蹊部、脇の下の皮膚のケアを意識して行いましょう。

②アレルギー性皮膚炎

フレンチブルドッグは、遺伝的にアレルギーを起こしやすい犬種でもあります。特に、皮膚にその症状が現れることが多く、足、腹部、皮膚のシワの部分、耳などに現れます。ほこりや家ダニなどの環境要因、特定の食べ物などで起こる食物要因、わんちゃんにとって有害な物質や液体などが皮膚に接触して引き起こされたり、寄生虫やノミなどによる感染症など、原因は様々です。

わんちゃんの皮膚に、赤みやかゆみ、発疹、抜け毛などの症状がある場合は、まずはかかりつけの獣医師に相談しましょう。わんちゃんに、アレルギー性皮膚炎の可能性がある場合は、アレルギーの原因を特定するため、生活環境や食事の管理など、獣医師の指示に従い長期的なプランを立てる必要があります。

③肥満細胞腫

肥満細胞腫は、わんちゃんの皮膚の表面にできる悪性の腫瘍のことを言います。悪性度の高いものから低いものまで様々ですが、特にフレンチブルドッグやブルドッグなどの犬種では、悪性度の低いグレード1のものがほとんどで、通常は広がりを見せることはないようです。一般的に高齢のわんちゃんに発生しますが、子犬のわんちゃんにも発生することがあります。

肥満細胞腫は、いわゆる「できもの」ではありますが、イボのような、皮膚炎のような、柔らかいもの硬いものなど様々な見た目をしており、見た目だけでの判断ができません。わんちゃんの皮膚にできもののようなものを見つけた場合は、飼い主さま自身で判断することは避け、獣医師に相談し適切に診断してもらいましょう。

フレンチブルドッグの口腔トラブル

わんちゃんの口の健康は、私たち人間と同様に腸内環境と密接な繋がりがあります。また、腸内環境は免疫力との関わりも強く体全体の健康にも影響していることは、多くの飼い主さまもご存知のことでしょう。ここでは、遺伝的な骨格が原因で起こりやすいフレンチブルドッグ特有の口腔内のトラブルについて、お話ししていきます。

①歯が密集している

鼻の長いわんちゃんも、鼻の短いフレンチブルドッグも、歯のサイズは標準的で本数は42本と同じであることをご存知でしょうか。鼻の短いフレンチブルドッグの歯が、他のわんちゃんと比べてどうしても密集してしまうことは、簡単に想像できることだと思います。加えて、歯が密集することで歯並びにも影響し、これらの理由によりフレンチブルドッグの歯には歯垢や歯石が蓄積しやすくなるのです。

②不正咬合

不正咬合(ふせいこうごう)とは、下顎が上顎よりも前に出ており、アンダーショットとも呼ばれ、ブルドッグやフレンチブルドッグなどに見られる骨格のズレのことを言います。ごはんを食べたり水を飲んだりする時に、痛がったり出血するようなことがなければ、通常問題はありません。また、フレンチブルドッグは顔の構造上、口が大きく唇にも厚みがあるため、例え歯が出ていたとしても特に心配はないようです。

ただし、アンダーショットであるがために、歯と歯が擦れたり、歯茎に傷がついたり、噛み合わせが原因で怪我をしてしまうこともあります。重度の場合は、痛みにより食事をすることも困難な場合がありますので、わんちゃんの様子に違和感を感じたら、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。

③歯垢・歯石が蓄積しやすい

フレンチブルドッグの歯が密集していたり、アンダーバイトによる歯茎のずれがあることで、歯に歯垢や歯石が蓄積しやすいと言われています。歯垢が蓄積することで歯石になり、体全体の健康に影響するかもしれない歯周病を発症し、抜歯が必要になる可能性もあります。フレンチブルドッグの歯磨きは、より丁寧に行う必要があると言えるでしょう。

加えて、フレンチブルドッグの硬くて短い毛が歯茎と歯の間に挟まることにより歯垢と歯石が蓄積し、局所的に歯周病を引き起こすケースも見られます。

他の犬種と比べて、フレンチブルドッグが罹りやすい病気について

フレンチブルドッグは、鼻が短いという特徴的な見た目のために非倫理的な交配が長きに渡り、繰り返し行われてきました。その影響もあり、上で述べましたトラブルの他に、遺伝的に健康上の問題を抱えているわんちゃんも少なくありません。ここでは、フレンチブルドッグが罹りやすい病気について3つご紹介します。

①短頭種閉塞性気道症候群

短頭種閉塞気道症候群とは、「呼吸や気道に影響を与える異常」の特定の組み合わせのことです。具合的には、鼻の穴が小さい、軟口蓋(なんこうがい)と呼ばれる口の中の上側から喉の方に伸びて続く柔らかい部分が、フレンチブルドッグの短い口の長さに対して長すぎる、気管が狭いなどがあります。これらの組み合わせにより、フレンチブルドッグには呼吸がしづらい、激しくなりやすい、いびきをかくなどの症状が見られます。

②熱中症

通常、わんちゃんは「ハァハァ」と口を開けて呼吸する「パンティング」によって体の水分を蒸発させ、体温を下げます。一方で、フレンチブルドッグは①でも述べましたように、鼻の穴が小さい、軟口蓋が長い、気管が狭いなどが原因で、呼吸が難しくなり、体温を下げることがスムーズに進みません。そのため、体にこもった熱が発散されにくく、熱中症になりやすいと言われています。激しいパンティング、歯茎が真っ青または真っ赤、嘔吐、下痢、痙攣などの症状が見られる場合は、早急に涼しい場所へ移動させ体を冷やし、獣医師の診察を受けましょう。

③目の病気

フレンチブルドッグは、ドライアイ、細菌やウイルスの感染、アレルギー反応などによって結膜炎(角膜の炎症)を引き起こすことがあります。また、チェリーアイという目の病気にもなりやすいです。チェリーアイとは、目頭側にある瞬膜(または第三眼瞼)と呼ばれる通常は表からは見えない膜が脱出し、さくらんぼのような赤いしこりとして現れる病気です。また、フレンチブルドッグは、鼻が短く目が突出しているため、目に傷が付きやすかったり怪我をしやすいため、角膜潰瘍を引き起こしやすいと言えます。ドライアイやアレルギー反応によって、わんちゃんが自ら目を気にして引っ掻いてしまうことで、目を傷つけてしまうこともありますので、目を気にしたり、赤み、腫れ、目やになどが見られる場合は、獣医師の診察を受けることをおすすめします。

この他にも、フレンチブルドッグには罹りやすい病気が少なくありません。骨格や脳の問題、白内障や耳の感染症などその病気は様々です。飼い主さまは、フレンチブルドッグが罹りやすい病気について、他の犬種よりも多くのことを知る必要があるのかもしれません。

フレンチブルドッグの健康のために、飼い主さまができること

フレンチブルドッグが罹りやすい病気には、遺伝的に起こってしまうものが多くあることがわかりました。ですが、遺伝的なことだからと諦めてしまうよりも、フレンチブルドッグが罹りやすい病気への備えや予防を行い健康的に暮らす方が、わんちゃんも飼い主さまも幸せな暮らしができるはずです。そこで、最後の項目ではフレンチブルドッグの健康のために、飼い主さまにできることをご紹介させていただきますので、ぜひ参考になさってみてください。

①のブラッシング

ブラッシングをすることで皮膚のケアができます。わんちゃんの体や皮膚に触れ、早い段階で体の異常に気づくことも可能です。背中などの見えやすい部分はもちろん、脇や肉球、しわの間、お腹など体の隅々まで意識を向けてケアしてあげましょう。また、皮膚の細菌バランスを整えるローションなどを使用することで、フレンチブルドッグの罹りやすい膿皮症の予防にもなるかもしれません。

一方でブラッシングのしすぎは脱毛の原因となる場合がありますので、3日に1回程度の頻度が推奨されます。

②毎日の歯磨き

毎日歯磨きをすることで、歯垢を除去して歯石になるのを予防し、口の中の異常にも早く気付くことができるかもしれません。また、口の中の細菌バランスを整える歯磨きジェルを活用することもおすすめです。口の中の細菌バランスは、わんちゃんの腸内環境と密接に関係しており、腸内環境は体全体の健康やわんちゃんの免疫力にも影響します。

フレンチブルドッグは、鼻が短いために前歯を磨く様子が見えてしまい、前歯を磨くことが苦手なわんちゃんが多いようです。まずは、横の歯から磨いてあげて、できたら褒めてあげましょう。上の歯は鼻の近くを抑えてめくりあげて磨いたり、下の歯はあご先に親指をあて歯茎が見えるように唇を下にずらしてあげると磨きやすいので、ぜひチャレンジしてみてください。歯磨きは、落ち着いた環境で行い「少しずつ」と「褒める」がポイントです。

フレンチブルドッグは、歯が密集していることで、隅々まで歯磨きをすることが難しいかもしれません。その場合は、獣医師による定期的な歯科検診を受け、スケーリングと呼ばれる専用の器具で歯垢や歯石を除去することも可能です。スケーリングには全身麻酔が必要になりますので、獣医師と十分に相談し検討してみてください。

③家庭や外出先での温度管理

フレンチブルドッグは遺伝的な体の構造により、呼吸や体温調節が苦手なわんちゃんが多いです。そのため、温度管理は慎重に行う必要があるでしょう。暑い時間は避けて散歩する、わんちゃんにとって快適な部屋の温度に設定する、無理な運動はさせない、クールグッズを使用するなど、工夫できることはたくさんあります。飼い主さまは、日々注意深くわんちゃんのことを見つめ、いつの季節も快適な暮らしができるようサポートすることが大切です。

フレンチブルドッグの健康に限らず、わんちゃんの健康維持には獣医師による定期検診が非常に役立ちます。飼い主さまだけでは見落としてしまいがちな病気の発見も、獣医師による定期検診を受けていれば、早期発見につながるかもしれません。家庭でのケアはもちろんですが、飼い主さま一人で抱え込むことなく、困った時は獣医師のサポートを受けることもぜひ視野に入れて活用してみてください。

ご家族に寄り添うかかりつけ医としての一般診療

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