【犬の白内障】概要と原因、予防について

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白内障とはどんな病気でしょうか。

「わんちゃんの目が濁ってきた」と感じたら、早めの来院をおすすめします。白内障の症状かもしれません。

わんちゃんの白内障について、症状や原因、気づくきっかけや手術、その後のわんちゃんとの過ごし方について掲載いたします。

犬の白内障の概要と原因

どのわんちゃんにも、白内障になる可能性はあります。飼い主さまにとって知っておきたいわんちゃんの白内障の概要と原因について解説いたしますので参考にしてみてください。

白内障の概要と症状

白内障は、目の中でレンズの役割を果たしている水晶体が濁った状態のことをいいます。水晶体は本来透明な状態ですが、濁って不透明になることで光が網膜まで正常に届かなくなり、視力の低下につながります。

白内障の症状は、次の4段階に分けられますが、全ての白内障がこの段階を踏むわけではありません。

①初発

水晶体の濁りが非常に少ない状態で、その範囲は水晶体の1割程度と言われています。

わんちゃんの視力低下はほとんどないか最小限であるため、わんちゃんはもちろん、飼い主さまも気づきにくい状態です。

②未熟

水晶体の濁りが少しずつ見え始め、その範囲は、水晶体の15%〜99%と広範囲で完全に白濁仕切っていない状態です。多くの場合目で確認できる状態です。

わんちゃんの視力低下も軽度〜失明に至るまでと様々ですので、普段のケアの中でいつもと違うなと思ったら早めの来院をおすすめします。獣医師の診察をおすすめします。

③成熟

水晶体全体に濁りが広がっている状態。

飼い主さまが見ても確認でき、わんちゃんの視力は失明または失明に近い状態です。

④過熟

水晶体が萎縮し始め、水晶体の表面にシワがあるように見える状態。

わんちゃんの視力はほぼ失っており、目の中の炎症が発生する可能性があります。

白内障の原因

わんちゃんの白内障の原因はさまざまですが、もっとも一般的とされているのは、遺伝や糖尿病、年齢によるものです。他にも、目の外傷、栄養バランスの乱れ、紫外線なども挙げられます。ここでは、遺伝、糖尿病、目の外傷、年齢について掲載いたします。

<遺伝>

遺伝性の白内障は、かかりやすい犬種があります。

◇コッカー・スパニエル

◇ラブラドール・レトリバー

◇ボストンテリア

◇フレンチ・ブルドッグ

◇ミニチュア・シュナウザー

◇プードル

これらの犬種は白内障にかかりやすいと言われている犬種ではありますが、どの犬種にも白内障にかかる可能性はあります。飼い主さまは、日々、丁寧にわんちゃんの様子を見てケアしてあげることが大切です。

<糖尿病>

白内障の症状である「目の濁り」は、水晶体内の水分バランスやタンパク質のバランスの変化によって引き起こされます。血糖値が高いと水晶体内の水分バランスが変化し、水晶体が濁り白内障を発症します。

糖尿病が原因である白内障の場合、症状が急速に現れることが多く、わんちゃんが元気でも1〜2日で視力を失ってしまう可能性があります。わんちゃんの糖尿病のケアとあわせて、獣医師による目の定期検診を受けるのが良いでしょう。

<目の外傷>

炎症を起こす可能性のある目の怪我や傷が、白内障につながる可能性もあります。

<年齢>

上に述べましたように、わんちゃんの白内障には様々な原因があるため、犬種や個体によってその原因も様々です。そして年齢もその個体差のうちの一つとされています。高齢になることで発症するわんちゃんもいれば、若いわんちゃんでも発症する場合があります。若いから大丈夫と決めつけず、若い時期からチェックを続けましょう。

初期の白内障に気づくきっかけと自己診断

どんなわんちゃんにも白内障にかかる可能性があることがわかりました。では、いち早く白内障の症状に気づくためにはどうすれば良いでしょうか。

初期の白内障に気づくきっかけ

一般的には、目の変化によって確認することができます。わんちゃんの目が濁ったような状態です。しかし、初期の段階では、わんちゃんにとって視力低下はほとんどないか、最小限であることがほとんどであり、その兆候を見逃してしまうこともあります。

日頃から、わんちゃんのケアやわんちゃんとアイコンタクトを取るなど、その変化に気づくきっかけを意識的に作っておくことが大切です。特に高齢のわんちゃんは、注意深く目の変化に意識を向ける必要があるでしょう。

自己診断について

「目が濁る」という症状が見られる場合、加齢によって起こる「核硬化症」という可能性も考えられます。しかし、白内障を引き起こす原因は様々で、糖尿病によるものも含まれていますので注意が必要です。糖尿病が原因で起こる白内障の場合は、進行が早く1〜2日で視力を失ってしまう場合があります。自分で判断するのではなく、気がついた時点で早急に来院し診察を受けましょう。

白内障の治療について

目薬

現在、わんちゃんの白内障を治す点眼薬や飲み薬は残念ながらありません。進行を予防する点眼薬をします

手術

わんちゃんの視力を回復させることができる唯一の方法が手術です。

①手術の目的

手術の目的は、わんちゃんの視力の回復とそれに伴う病気を避けることです。また、白内障によって引き起こされるわんちゃんの苦痛を軽減することにも繋がります。視力が回復することで、わんちゃんも飼い主さまと安心した暮らしを取り戻すことができるでしょう。

②手術

全身麻酔を行い、白内障で濁ったわんちゃんの水晶体を取り除き、プラスチックやアクリルでできた新しいレンズと交換します。両眼に白内障のあるわんちゃんは、全身麻酔のリスクも考慮し1回で両眼の手術を行うことが選択されることがあります。

術後は、目の違和感や炎症を抑えるため、1日に数回点眼薬でのケアが必要です。

術後はおおよそ2週間ほどの術創の保護が必要なため、目に傷を付けないようエリザベスカラーなどで目を保護し、獣医師による定期検診を受けましょう。

③手術の選択について

一般的に、白内障の手術が行われる時期は、4つの段階のうち未熟・成熟・場合によっては過成熟の時期と言われています。初期の段階では、わんちゃんの白内障の症状や視力低下も少ないので、定期検診と獣医師のフォローによって随時管理することが大切です。

また、白内障の手術が最善でない場合もあります。

全身麻酔のリスクが高いわんちゃん

腎臓や心臓などに病気のあるわんちゃんにとって、全身麻酔は特に危険が伴います。この場合は、白内障を治すための直接的な効果のある方法ではありませんが、点眼薬で白内障が原因になっている炎症などを抑えることが可能です。

わんちゃんの目の状態が健康でない場合

わんちゃんに目の炎症や緑内障、網膜の損傷がある場合です。目の状態が健康でなければ、視力の回復に至らず、手術をしても良い結果にならない場合があります。

その他

わんちゃんが高齢やがんなどで体力的に不安がある場合、わんちゃんの性格や気質に不安がある場合、飼い主さまが長期的にケアできない場合などが挙げられます。わんちゃん自身の健康状態はもちろん、わんちゃんの性格や環境にまで配慮し、様々な方向から慎重に考えることが大切です。

④白内障の手術の成功率やメリットについて

わんちゃんはもちろん飼い主さまにとって、手術には不安がつきものです。白内障の手術の成功率やメリットなどを把握しておくことが、飼い主さまの不安の軽減に繋がるかもしれません。

手術の成功率

合併症もなく、健康的なわんちゃんの白内障手術の成功率は80%〜90%です。手術にリスクがないわけではありませんが、手術は早ければ早いほど良い結果につながると言われています。

手術のメリットについて

まずは、わんちゃんの視力の回復です。わんちゃんの視力が回復することで、再びわんちゃんにも飼い主さまにも快適な暮らしが訪れるでしょう。

そして、白内障によって引き起こされる可能性のある症状を回避できることも大きなメリットであり、白内障の手術の目的でもあります。

手術の成功率が80%〜90%と高いことは、飼い主さまにとって手術への不安を少しでも軽減できる大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

白内障の予防

飼い主さまにとって、白内障を未然に防ぎたいという願いがあるかもしれません。できれば全身麻酔の伴う手術は避けたいものですが、果たして白内障の予防はできるのでしょうか。

白内障は、定期検診や手術などで管理することは可能ですが、完全に予防することはできないと言われています。しかし、糖尿病や目の外傷、年齢などに伴う白内障の場合は、わんちゃんや飼い主さまのライフスタイルを整えることが、回避は難しくとも発症を遅らせ、わんちゃんと長く健康的に暮らすことにつながるのではないでしょうか。

例えば、毎日の運動・食事での体重や健康の管理、抗酸化物質の摂取、獣医師による定期検診、目の外傷を負った場合はすぐに獣医師の診察を受けるなど、日常生活の中でわんちゃんの健康を維持する方法はたくさんあるはずです。

白内障の直接的な予防方法はありませんが、わんちゃんの健康を管理する上で気をつけることは多岐に渡り、できることは積極的に取り入れていきましょう。

白内障になった時の家での過ごし方

もし、わんちゃんが白内障と診断されたら、私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか。ここでは視力の低下したわんちゃんの行動の特徴や、飼い主さまができるサポートについてご紹介します。

視力が低下したわんちゃんの行動の特徴

視力が低下したわんちゃんの行動の特徴は一つではありません。わんちゃんは視力が低下しているので、ものが見えにくいのは確かです。次にあげる行動の特徴は、全ての白内障のわんちゃんだけに見られる行動ではありませんが参考にしてみてください。

  • 家の家具や壁にぶつかる
  • 遊んでいる時に投げたおもちゃや、おやつを見つけにくい
  • ごはんやお水の場所がわかりにくい
  • 階段を降りるのを躊躇する
  • 鼻を地面につけて歩く
  • 涙目やまばたきの変化
  • 目の周りを触るとひるむ

などがあります。わんちゃんによっては、めまいをおこし嘔吐や鳴き声をあげることもあります。糖尿病が原因で引き起こされる白内障の場合は、お水を飲む量や排尿の頻度が上がりますので、普段からわんちゃんの行動に十分注意しケアしてあげましょう。

飼い主さまによる介護について

視力が低下したわんちゃんをどのようにケアすれば、わんちゃんの不安を軽減できるでしょうか。

例えば、以下のようなケアが可能です。

家の家具や壁にぶつかる場合

クッション性のあるシートを危険な場所に貼りつける

ものを見つけにくい場合

耳が聞こえる状態であれば音のなるもので呼ぶ

目の周りを触るとひるむ場合

直接目の周りを触るのではなく、目から離れたところから少しずつ触る位置を近づけていく

わんちゃんの白内障には、遺伝や犬種、年齢、糖尿病、目の外傷など様々な原因があり、その症状はわんちゃんによって様々で、軽度の視力低下〜失明までと広範囲になります。初期の段階で白内障の症状に気づくことは難しいですが、できるだけ早く気づくためにも、日常的な目のケアを行ったり、獣医師による定期検診を受けることが大切だと言えるでしょう。

ご家族に寄り添うかかりつけ医としての一般診療

健康診断、予防接種、去勢避妊手術はもちろん、内科・ 消化器等の幅広い診療、終末期診療まで、たくさんのお悩みに寄り添いながら診察を行います。
愛犬・愛猫だけでなく、ご家族にも安心してお越しいただけるよう、基本的にはご家族の前で検査を行い、丁寧にお話を伺いながら診察を進めていきます。そのため、超音波検査も診察室の中に設置しております。
さらに、 血液検査機器を導入し、外部機関への依頼では数日かかる検査を、その場で見る事ができ、素早く診断、治療することへとつなげていきます。