【犬の去勢手術】効果と費用、注意点等のまとめ

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「うちの子、そろそろ去勢した方がいいのかな?」

男の子のわんちゃんをお迎えした後、去勢について悩む飼い主さまも多いのではないでしょうか。

去勢にはさまざまなメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶかは飼い主さまの判断次第です。

今回は、去勢手術の概要やメリットとデメリットなどについてご紹介します。

去勢手術の概要

まずは、そもそも去勢手術とは何をするのか、費用はどれくらいかかるのかなど、基本的な知識について見ていきましょう。

手術の内容や時間

去勢とは、オスの睾丸(こうがん)を取り除いて生殖能力を失わせることです。一般的に外科手術で処置が行われます。

手術の内容としては、全身麻酔をかけて陰嚢(いんのう)の近くを小さく切開し、睾丸を取り出した後、縫合することになります。

わんちゃんの犬種にもよりますが、手術自体は短ければ10~30分ほどで終了し、傷口も1~3cmほどと、そこまで大きな手術ではありません。また先天的な異常がなければ、多くのケースでは日帰り手術となります。乳歯遺残(抜けるはずの乳歯が残っているもの)がある場合など、ほかの処置が同時に行われることもあります。

去勢手術にかかる費用

手術にかかる費用は、体重や先天的な異常の有無によるものの日本では2〜4万円程度かかることが多いです。動物病院やわんちゃんの体の状態などによっても変わるので、まずは獣医師さんに確認しましょう。

また、治療目的以外の去勢手術は、基本的にペット保険の補償対象外となります。

去勢のメリットとデメリット

それでは、去勢をすることでどんなメリットとデメリットがあるのか、わんちゃんにどのような変化がみられるのかについて解説します。

去勢による効果や変化

病気の予防

大きなメリットとしては、精巣がんや前立腺肥大症などの病気の予防があります。

特に、ある程度成長しても睾丸が陰嚢まで下がらず、おなかの中やそ径部に留まってしまう「停留睾丸(ていりゅうこうがん)」の場合は、将来的に精巣が腫瘍化するリスクが高く、去勢を勧められることが多いです。

命に関わる病気のリスクを小さくすることができるため、去勢済みのわんちゃんは未去勢のわんちゃんよりも長生きする傾向があると言われています。

マーキングやマウンティングの改善

飼い主さまにとってのメリットは、マーキングやマウンティングなどの行動が改善される可能性があるということではないでしょうか。

多くのオスは、生後6か月頃から始まる性的成熟に伴い、マーキングやマウンティングなど特有の行動をするようになります。これらはわんちゃんにとっては本能的で自然な行為ですが、人間と生活する上では問題になってしまうこともあるでしょう。

去勢をすることで男性ホルモンの分泌が抑えられるため、マーキングやマウンティングが減ったり無くなったりすることがあります。

また、性的衝動によるわんちゃんのストレス軽減にもつながるほか、ホルモンの影響による縄張り意識や攻撃性などのコントロールも期待できます。

性格が変わる?

去勢をすることで、愛犬の性格や気質に悪い影響があるのではないかと心配する飼い主さまも多いのではないでしょうか。明るく元気いっぱいなわんちゃんの性格が変わってしまったら少し寂しいですよね。

しかし、わんちゃんが問題なく自立と社会化ができているのなら、去勢によって愛犬の性格や気質が悪い方に変わってしまうことはほとんどありません。

ただ、わんちゃんが異常に怖がりなどの問題がある場合には、事前に獣医師さんとよく話し合うのが良いでしょう。

去勢をすることの注意点

手術自体のリスク

デメリットとしてまず知っておくべきなのは、手術のリスクはゼロではないということです。去勢手術は危険性が低いと言われていますが、全身麻酔をかける以上、麻酔事故や合併症などのリスクが存在します。

しかし、現代の医療技術や設備において全身麻酔によってわんちゃんが命を落とす可能性は、自動車事故で怪我をする可能性よりも低いとも言われています。

太りやすくなる

去勢によるホルモンの変化で、必要なカロリーが約30%少なくなるとされています。

去勢前と変わらない食事や生活を続けていると、あっという間に体重が増えて肥満になり、病気につながってしまうことも。

わんちゃんの健康を維持するために、体重管理がとても重要になります。食事の量を減らしたり、運動の時間を増やしたりして、太りすぎないよう気を付けましょう。去勢済みわんちゃん専用の、カロリーが抑えられたドッグフードを活用するのも良いでしょう。

行動が改善しない場合もある

マーキングやマウンティングなどの行動は、必ずしも去勢で改善されるとは限りません。行動が習慣化していたり、遊びの一環でしていたりなど、すべてがホルモンの影響とは言えないからです。

攻撃性についても、必要な社会化がされていなかったり、単に性格の問題だったりするケースでは、去勢したからといって改善されないことが多いです。

子供を作れない

当然ですが、一度去勢をしてしまえば、子供を作ることができなくなります。将来的に愛犬に子どもを作らせたいという気持ちが少しでもあるのなら、去勢については慎重に検討しなければなりません。

行動面に関しては、わんちゃんによって変化の度合いや時期は異なります。先述した通り、ほとんど変化しないこともあるでしょう。

もし飼い主さまが愛犬の行動についてお悩みの場合、まずは獣医師さんやドッグトレーナーの方に相談することをおすすめします。

東京都立川市にあるKINS WITH動物病院 立川院でも愛犬の行動や体に関するご相談を受け付けています。
去勢手術をするかどうか迷っている場合、まずはご相談だけでも大丈夫ですので、お気軽にご連絡ください。
KINS WITH動物病院 立川院のページはこちらから

去勢をしないメリットとデメリット

去勢をしないことのメリットは、やはりわんちゃんの体を傷つける必要がなく、手術のリスクもないということです。どんなに危険性が低いと言われても、大切な愛犬に手術を受けさせるのは不安ですよね。

逆にデメリットとしては、将来的に精巣がんや前立腺疾患などの病気のリスクを抱えることになります。また、マーキングやマウンティングなどの行動がみられる可能性も高いです。

去勢の時期

メリットとデメリットを踏まえた上で、もし去勢をするとなれば、いつ受けさせるのが良いのでしょうか。

去勢手術を受けるのにベストな時期やその理由をご説明します。

理想とされる時期と理由

去勢をする場合は、動物病院で生後6か月〜1歳のタイミングの手術を勧められることが多いです。

イヌは生後6か月ごろから性的成熟が始まり、マーキングなどの特有の行動が始まると言われているからです。

また、大型犬は、小型犬よりも成熟に時間がかかります。体が十分に成長していない段階で去勢をすると、将来的に関節に問題が起きてしまう可能性があるため、小型犬よりも少し遅いタイミングで去勢手術を受けることが勧められています。

愛犬の体の成熟度や健康状態によって、ベストなタイミングはそれぞれです。かかりつけの獣医師さんとしっかり相談して決めましょう。

遅くても大丈夫?

それでは、上記のタイミングを過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか。

精巣腫瘍などの治療の目的で去勢手術をするなら、遅すぎることはありません。ただ、高齢のわんちゃんは体力が低下しているため、手術自体のリスクが高くなることがあります。

一方、飼い主さまが行動面の改善を望んでいる場合、わんちゃんがある程度大人になった後では、去勢による行動改善はあまり期待できないかもしれません。

去勢手術の流れと注意点

いよいよ去勢手術を受けるとなれば、飼い主さまも不安な気持ちになることと思います。

手術前後の流れや気を付けなければいけないことを知り、安心して手術の日を迎えられるように備えましょう。

手術前~当日の流れ

手術の1週間前〜当日に血液検査などを受け、手術を受けるのに問題がない健康状態かどうかをを確認します。術前検査をすることで、手術のリスクをできる限り抑えられます。

そして当日ですが、麻酔下での嘔吐による窒息を防ぐため、基本的に絶食となります。朝ごはんはあげることができず、お水も朝以降はあげないように言われることが多いです。わんちゃんの腸や膀胱を空っぽにするために、お散歩をするのもよいでしょう。

手術前に大切なのは、できるだけいつも通りの態度で愛犬に接することです。わんちゃんは人間の気持ちを敏感に読み取ります。飼い主さまが不安そうにしていると、その不安がわんちゃんにも伝わってしまうのです。

わんちゃんが心配でたまらなくなり、たくさん言葉をかけてあげたくなる気持ちはとてもよく分かります。しかし、ぐっとこらえてできるだけいつも通りに過ごし、愛犬を心配させないように心がけましょう。

手術後の過ごし方

手術が無事に終わって退院すれば、飼い主さんも一安心ですよね。

しかし、まだわんちゃんは万全の状態ではありません。手術後は以下のようなことに注意して過ごす必要があります。

10日間ほどは安静に

家に帰った後も、わんちゃんは麻酔の影響で少し眠そうにしているかもしれません。通常、麻酔が完全に切れて元気を取り戻すまでに24〜48時間かかるとされています。

目が覚め回復するにつれて、わんちゃんはいつものように走り回ったり遊んだりしたがるかもしれませんが、10日間ほど安静にさせなければいけません。どうしても動き回ってしまう場合は、ケージに入れたりして対処する必要があります。運動は体が回復してから、少しずつ増やしていきましょう。

傷口の保護

手術後は、わんちゃんにエリザベスカラーなどの着用が勧められます。わんちゃんが傷口を気にしてなめたりかじったりすると、感染症にかかってしまったり、傷口が開いてしまったりする可能性があります。

病院でプラスチック製のエリザベスカラーを着けてもらうことが多いですが、布製のエリザベスカラーや術後服なども市販されていますので、チェックしてみるのも良いでしょう。

抜糸と経過観察

手術に使われる糸は、体内で溶けて吸収されるものと、溶けないものがあります。溶けない糸の場合は、約1週間後に病院に行き、傷口の様子を確認した上で抜糸してもらうことになります。

手術後しばらくはわんちゃんの様子を注意深く観察し、少しでも異常があれば獣医師さんに相談しましょう。

まとめ

去勢手術にはさまざまなメリットとデメリットがあることがわかりました。

わんちゃんの体も、飼い主さまの考え方も、それぞれです。わんちゃんと飼い主さまにとっての幸せのために何が必要なのかをじっくりと考え、後悔しない選択をしてください。

去勢に関するお悩みや疑問点がありましたら、ぜひ当院にお気軽にご相談くださいね。

ご家族に寄り添うかかりつけ医としての一般診療

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