都内動物病院や動物医療センターにて約7年、歯科治療・一般臨床を行う。2023年08月にKINS WITH 動物病院 二子玉川本院を開院。院長に就任。開院以来、犬・猫の歯医者さんとして歯科治療を中心に診療を行っています。
診療実績
累計5,000件以上の診療と年間300件以上の歯科手術を担当。歯科専従の獣医師としてこれまで多くの歯石除去をはじめとする歯周病治療や抜髄根幹充填などの歯科治療を行なって参りました。
二子玉川本院 院長/獣医師
都内動物病院や動物医療センターにて約7年、歯科治療・一般臨床を行う。2023年08月にKINS WITH 動物病院 二子玉川本院を開院。院長に就任。開院以来、犬・猫の歯医者さんとして歯科治療を中心に診療を行っています。
累計5,000件以上の診療と年間300件以上の歯科手術を担当。歯科専従の獣医師としてこれまで多くの歯石除去をはじめとする歯周病治療や抜髄根幹充填などの歯科治療を行なって参りました。
3歳以上の犬のおよそ8割が歯周病を抱えていると言われています。
歯周病は犬にとっては大きな病気の一つで、一度発症するとほとんどの場合に獣医師による治療が必要になります。
治療の中には全身麻酔を用いた手術を行うことも少なくありません。重症化すると抜歯が必要になるだけでなく、
鼻と口がつながったり、目の下に穴が空いてしまったり、近年では腎臓や心臓の病気につながる可能性が指摘されています。
愛犬にとって非常に身近な病気で、特に怖い病気の一つである歯周病ですが、これは歯磨きによって予防することが可能です。
歯周病の原因は歯周病菌が増殖してしまうことです。愛犬の歯を見てみると、茶色や白色のざらつくものが付着していることがあります。これを歯石と呼びます。健康な犬の歯は表面が非常に滑らかになっており、比較的歯周病菌が付着しづらい状態です。歯石が付着すると表面がざらざらになり、より多くの歯周病菌が歯の周りに常に存在する状態となってしまいます。これらの歯周病菌が歯茎など歯の周囲に悪さをしている状態が歯周病です。
では、歯石はなぜできるのでしょうか。
それは食べ物のカスにお口の中の細菌が集まってできた「歯垢」と言われるものが、唾液と反応して石灰化することで歯石に変化します。
歯垢は食事の後などに発生し、粘り気のある物質として歯に付着します。特に対策をせずに放っておくと歯垢は2~3日程度で歯石に変化し、愛犬の歯に蓄積していきます。そして歯周病菌の温床となっていくのです。
もうお気づきですね?
歯磨きとは、食事の後に発生するこの歯垢を取りきるための口腔ケアとなります。歯垢が硬い歯石になってしまうと、お家のケアで取り去ることは基本的にはできません。また、自宅で歯石が取れることがあってもそれは表面に見えている部分の歯石が取れただけ。歯石は歯茎の下にも潜んでおり、見えないところで細菌が繁殖し歯周病を引き起こす原因に。そのため歯石に変わる前の歯垢の段階でケアする必要があるのです。
加えて、歯垢が歯石に変わるまでは2~3日という非常に短い時間しかありませんので、歯磨きは最低でも2~3日に一度、可能であれば毎日行うことが必要となります。
歯磨きは正しいやり方で行うのが非常に大切です。
歯磨きを行うためにはデリケートなお口や鼻の周辺に触れることが必要となりますので、間違ったやり方で歯磨きを行うと
洗浄効果が低いだけでなく、愛犬に「歯磨きは嫌なことだ」と思われてしまうことも。
以前、当院にて歯磨きの可否についてのアンケートをとった際、
およそ半数の飼い主さまが「歯磨きを嫌がるのでできていない」と回答されました。
一方で、飼い主さまの中には愛犬との歯磨きを続けられている方も多くいらっしゃいます。
そうした方は愛犬も歯磨きの時間を楽しみにしているようで、理想的な関係が築けているようでした。
歯磨きは愛犬にとって必ず行うべきものであり、かつ生涯続ける必要のあるケアです。
飼い主さまと愛犬が歯磨きの時間を楽しく過ごせるよう、ぜひ正しいやり方を習得してください。
実際に診療の際にも、歯磨きがうまくできないというご相談を非常に多くいただきます。
大切なことは、歯磨きの楽しさを正しい手順で愛犬に伝えていくこと。
最初はうまくできなくても、向き合う時間が増えれば、少しずつ上達するはず。以下のやり方をよく確認し、正しい方法で進めてみてください。
はじめに、準備するものを確認しましょう。
まずは歯磨き用のジェルやペーストを用意することが必要です。
この時に大切なのは「愛犬が好む味」のものを選ぶこと。
苦手な子の多い歯磨きの時間を、楽しいものと思ってもらうことが大切です。
それから、歯ブラシを用意します。愛犬の歯茎は、ヒトの歯茎よりも刺激に弱いので、柔らかい歯ブラシがおすすめです。
また、歯ブラシに慣れるまでは歯磨きシートやガーゼなどを飼い主さまの指に巻いて、マッサージするように歯を磨くこともチャレンジしやすくおすすめです。
まず大切な事は、お口周りを触られる事に慣れる事です。
この時に押さえつけたり、いきなり歯ブラシを当てたりすると驚いてしまい、触られる事や歯ブラシが嫌なものと記憶してしまいます。ご褒美の歯磨きジェルをお手元に用意をしていただき、触らせてくれたら与え、抵抗する場合はご褒美を見せないようメリハリをつけます。まずは数秒。慣れてきたら徐々に触る時間を伸ばしていきます。
この時にご褒美を与える時間が遅れると何にご褒美を貰えたのか理解できず混乱してしまうこともあるため、すぐにあげることがポイントです。
「唇をめくる→ご褒美をあげる」を繰り返します。
唇をめくる時に嫌がったり、抵抗が強いようならSTEP1 に戻ってください。
指だけで「歯・歯肉(はぐき) をタッチする(触る)→ご褒美をあげる」を繰り返します。
最初は切歯と犬歯から慣れてもらい、徐々に奥の方まで触ってみましょう。
とても大事なことは、愛犬にとって歯磨きの時間が「嬉しい時間」「楽しい時間」と最初に認識してもらう事です。
次からは実践編のご説明となります。
一つ一つのステップに3日〜1週間かけてご準備を頂いても問題ございません。
焦らずに準備編が出来てから実践へお進みください。
前歯を磨くときは、上顎を持ち上げるような形で唇を引き上げるとブラッシングがしやすくなります。奥歯とはお口の持ち方が異なりますので、スムーズに移行できるようにするには少し練習が必要かもしれません。
こちらも同様に、歯ブラシを45度に傾けながら歯茎に沿って磨いていきます。
仕上げに、1~2cmほど出したジェルを普段の飲み水に溶かし込むことで、デンタルケアウォーターを作りましょう。手軽にジェルの成分をお口の中に行き渡らせることができるためおすすめの方法です。
*こちらで紹介している方法は「KINSWITHデンタルジェル」を基準として記載しています。他の製品を使用する際は用量を守ってご利用ください。
歯磨きをする時は、愛犬が落ち着いている時間帯と環境を選んであげましょう。
小さな子供や他の愛犬が遊んでいる騒がしいお部屋ではなく、愛犬がリラックスして安心できるお部屋を選びます。
歯磨きは愛犬の歯磨きレベルに合わせて進めていくことが大切です。初めて歯磨きをする愛犬には、ガーゼや歯磨きシート、フィンガーブラシなどで、
歯に触れること自体に慣れていくようなものの方が受け入れてもらいやすい場合があります。
また、それすらままならない時は準備編にも記載の通り、ガーゼや歯磨きシートを
使用する前に美味しい香りや味のする愛犬専用の歯磨き粉や歯磨きジェルを使用することで、
愛犬の歯磨きに対する印象が肯定的になりやすいと言われているので、歯磨きを嫌がる愛犬に効果が期待できます。
汚れをしっかり落とすことも大切ですが、まずは歯磨きの時間を楽しいと思ってもらえるよう、
ご褒美を用意しながら気長に続けることが大切です。
歯磨きのトレーニングを始めたばかりの頃は、お口の周りを触ることすら嫌がる子もいるかもしれません。
その場合は、実践編のSTEP4にあるデンタルウォーターから始めてみてください。 最も手軽に、ストレスなく始められる口腔ケアの一つで非常におすすめです。
歯石がついてしまった場合は動物病院での施術が必要です。
放っておくと歯周病に発展し、抜歯が必要になるケースもあります。
明らかに歯石が付着しているときや歯茎に赤みがある時、口臭が気になるときは
歯周病の可能性がありますので、一度病院でのメンテナンスをお勧めしています。
以下に当院での治療例を掲載いたします。ご自身の愛犬の状況と見比べ、
もしご不安な点があれば一度診察にいらっしゃってください。
歯石除去をおこなった症例です。
歯石除去をしたいと考えていたそうですが、どこの病院で処置するかずっと探していたそうです。歯磨きはうまくできていないと感じているようでしたので処置後は一緒に練習して日頃のケアから改善していきます。
レントゲンを確認すると、顎の骨が歯周病により破壊された部分はほぼなく、歯肉炎(軽度の歯周病)と判断しました。
この程度であれば、しっかりと歯石除去をおこない、歯磨きをすることで改善が見込めます。
なるべく歯を温存して歯周病を治療した症例です。
歯周病が重度に進行していた子ですが、ご飯を噛む機能をなんとか残すために歯周治療をおこないました。また、両方の上の奥歯が折れていたので治療をおこないました。
まず歯石を除去し、口腔内をきれいにします。その後、歯科専用レントゲンで温存が難しいと判断した歯の抜歯をおこないます。残せそうな歯や特に残したい大きい奥歯(裂肉歯)は、歯根の周囲の歯石などの汚れを徹底的に除去します。外から見えない汚れがありそうな場合は、歯肉を一部剥離して歯根を肉眼で確認しながら除去します。その後歯肉は縫合して元の位置に戻るようにします。
歯周病により、歯肉の後退により歯の根っこが見えてしまっている部分や、あごの骨が溶けているために、グラついて倒れてきてしまっている歯もみられました。
今回の症例では、左右の犬歯のみを残し、それ以外すべての歯は抜歯しました。抜歯した後は、感染・炎症のある組織を除去し、必要に応じて歯肉は縫合します。
最新の獣医歯科学においては、一般的に抜歯と判断される状態においても、歯を残すことができる治療や、再生療法によって歯周組織を再生させる選択肢もあります。
毎日歯磨きを行っていても歯石は徐々に付着いたします。
しかしながら、日々の歯磨きが出来ずにいると付着する歯石はより大量となってしまい、歯周病へと進行する可能性が高くなります。
初期の歯周病や軽度の歯周病の場合、歯を温存する治療方法も選択できますが、症状が進行することで抜歯をせざる得ない場合がございます。
ポイントは歯石に変化する前の歯垢の段階で落とすこと。まずは出来る範囲から歯垢を残さないために歯磨きに挑戦をしていきましょう。
まず最も大切なことは「歯磨きの時間を好きになってもらうこと」です。そのために、それぞれのSTEPを無理なく一つずつ進めていきましょう。
手順を踏む中で愛犬がもし嫌がる素振りを見せたら、無理に次のSTEPに進まず、慣れてくれるまで気長に続けることを心がけてください。
もし仮に歯を磨くところまで進めなくても、お口に触れることができたり、ジェルを舐めてもらうことができれば、それは一歩進んだ証拠。何もケアを行わないよりもずっと素晴らしいことです。前に進んだ愛犬をたくさん褒めてあげてください。もちろん、一緒に歩を進めることができた自分自身を認めてあげることも忘れずに!
また、歯磨きの好き嫌いは最初に使うアイテムにも左右されるもの。もし使用するアイテムに迷った際には、ぜひKINSWITHのおすすめするアイテムを使ってみてください。きっとあなたと愛犬の楽しい歯磨き習慣のお手伝いができるはずです。
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